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洞窟の先に続いた場所 ⑱




「ノースティア様は本当に凄い方なのよ。気まぐれなのだけれども魅力的で、神の中でも力が強くて……! それでいて誰かに靡くことなどなくて。だからまさか……ノースティア様が家族を作るなんて思いもしなかったわ。確かにノースティア様はしばらくこの世界を後にしていていたけれど、それで旦那様と子供達を連れ帰るなんて。それに話を聞く限り、ノースティア様はあなたたちを大切にしているのでしょう?」

「そうですね。あくまで俺や姉さんたちは父さんの付属品ではあると思いますけど。でも一般的な感覚で子供として大切にはしてくれているとは思いますよ」


 水の神は母さんのことを楽しそうに語っていた。

 母さんに対する崇拝の気持ちが見て取れて凄いなと思ってしまう。



 母さんのことを昔から知っている人たちの話を聞くのはとても楽しい。

 俺の知らない母さん。なんだか話を聞いているだけでも別人のように感じ取れてしまう。でもそんな昔の姿も母さんの一面なんだよなと思う。


 あくまで俺が見ている母さんって、俺に向ける母親としての姿だからなぁ。

 いっそのことなんか、父さんも含めて誰も傍に居ない時の母さんをちょっと見てみたい気もする。どんな感じなんだろ?



「本当に以前のノースティア様からすると想像が出来ないわ」

「スイラ、聞いた話ではノースティア様の夫はただの人間らしい」

「え?」



 それから俺は再度、父さんのことを説明した。毎回、反応が凄まじくて面白い。

 




「博人は凄く面白い人間なんだよ! 乃愛はね、博人のことが大好きだからいつも引っ付いている」



 クラがそう言って説明をすると、火の神と水の神はより一層変な顔をしていた。母さんってこの世界だと誰かに引っ付いたりあんまりしなかったのかもしれない。父さんと出会ってから、母さんは今の母さんになったんだろうしなぁ……。





「ノースティア様は神界には帰られていないのよね? 何をしていらっしゃるの?」

「父さんと一緒に二人っきりで過ごしたいからってぶらぶらしているだけです」

「そうなのね。……ノースティア様をそれだけ惹きつけてやまない男性なんて、気になるわ」

「あんまり興味を持ったのを母さんに悟られないようにした方がいいと思います。母さんは凄く……独占欲が強いので。不用意に近づくとおそらく嫌がります」



 思えば日本に居た頃だってずっとそうだった。母さんはそもそも性別問わずに父さんに誰かが近づくのを嫌がっていたのだ。子供のように無邪気に、父さんを独占しようとしていた。父さんは母さんが嫌がることをやろうとしないので、そもそも誰かに近づこうとしなかったけど、もし父さんが色んな人に近づくタイプだったら母さんは暴走しただろうしな。



「……そうなのね。基本的に私達神は独占欲が強い者が多いわ。ただノースティア様は何かに執着することなどこれまでなかったの。どれだけの存在がノースティア様からの特別な扱いをされようとしたことか。ノースティア様に愛を乞う者達は皆、散っていったわ。そのノースティア様の夫になった方には是非とも挨拶をしたいのだけど」

「その時は父さんを見つめすぎないことは重要です。父さんは母さんの扱いを心得ているので、大丈夫だと思いますけれど」

「そうするわ。それにしても話を聞く限り、とてもあなたの父親は一途なのね。ノースティア様は幸せ者だわ。それに比べてイーシーカときたら……」



 そう言いながら水の神は、火の神をジト目で見る。

 あれ、もしかしての二人でそういう仲なのか? だったらなんで妖精たちや近くの集落の人々が争いあってうんぬんでいまだに影響を受けているのだろうか。恋仲だったのならば、基本は仲良いものって認識なんだけれど。




「もしかして恋人同士なのですか?」

「そうね。一度別れたけれど、また付き合いだしたの。熱意に負けたから……」

「そうなんですね。それは良かったです。ただ一つ気になるのですが、なんで妖精たちとか人々の間であなたたちが争いあっているなんて言われているんですか?」

「……私たちが喧嘩別れした時のことだと思うわ」




 そんなことを言われて、痴話喧嘩のせいでそんなことになっているのかと驚いた。

 俺としてはなるべくそういう争いはない方がいいし、平和な方が好ましいので一旦仲違いをしていないという神託とかを下したらどうかというのは違憲として残しておいた。





 そういう話をした後、俺達は妖精の里へと戻った。

 ただ俺が母さんの息子だということは当然広まっていて、「許してください! この身を捧げます」などといってきて本当に大変だった。


 挙句の果てには火の神の命令で俺に襲い掛かったのに、俺を信仰するうんぬんとか、うん、面倒になってさっさと俺はフォンセーラとクラと一緒にその場を後にしたよ。

 その後、妖精の里と神の瞳を失った人間の里がどうなったかは知らないけれど、また長い洞窟を通って元の場所へと俺達は帰った。





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