洞窟の先に続いた場所 ⑰
不思議な空間へと俺達は誘われる。
神様である彼らが、作り出した空間なのだろうか。こういう不思議な空間を作れるあたり、やっぱり神様なのだろうなと思った。
そこには本体の火の神と水の神が居るようなので、そこに行く前にフォンセーラが反動で動けなくならないように俺の力でガードしておく。だって神の本体を前にしたらフォンセーラはただじゃすまない気がしたから。
このあたりは火の神たちにも確認をして、連れていくならそうした方がいいと言われた。
俺は全く違和感とか感じないけれど、やっぱり普通の人だとこういう所に顔を出すと色々大変らしい。フォンセーラにはそんなに大変なら留守番するかとも確認したけれど……、こういう機会がなければ神様と直接関わるなんて出来ないからとついてくるとフォンセーラは言っていた。
「なんか不思議な場所だね。変な感覚」
クラは母さんの神獣だから、特にこういう場所に顔を出しても何か不調などはないようだった。
なんだか楽しそうにきょろきょろとあたりを見渡している。
ただ流石に散歩にでも出かけるようなノリで、そのまま歩き出した時には火の神に止められていた。
火の神からしてみると、自分の空間で母さんの神獣であるクラに好き勝手されると困るらしかった。
やっぱりクラって、神獣の中でも特別なのかな。イメージ的に神獣って、神様よりは力がないように思えるのだけど……、火の神の態度などを見ているとクラってその辺の神様よりは強そうだと思った。
「スイラ」
火の神に連れられて歩くことしばらく水の神の元へとたどり着いた。
その場には、宙に浮かんだ青色の髪の女性が居る。この人が水の神かなと思う。というか、神様って弱っている時に横になったりしないのか? とどうでもいいことが気になった。俺は体調が悪かったりすると横になるものだけど……神様にとっては宙に浮いているが自然とか?
なんか母さんは神様だけど、普通に人間として過ごしている母さんの印象が強すぎて普通の神様がどういう感じの生活をしているか全然ぴんと来ない。
瞳を開けたその人は、俺と目が合うなり――勢いよく詰め寄ってきた。びゅんって感じで近づいてきてびっくりした。とはいえ、こちらに敵意は全くなさそうだったからいいけれど。
「あなたがノースティア様の息子なのね。初めまして。私はスイラよ」
「あ、はい。俺は咲人です。よろしくお願いします」
「サクトというのね。それにしても分かりにくいけれど、確かにノースティア様と似た神力を感じ取れるわ。ノースティア様が帰還されて、二人の娘が神界に来たのは知っていたけれど……! まさか、先に息子の方に会うことになるなんて」
「あれ、あなたは姉さんたちとまだ挨拶していないんですか?」
「ええ。私の身体が弱っていたから、挨拶が出来ていなくて」
水の神はそう口にしながら、目を伏せている。本人としてみれば、調子が悪いのが嫌なのだろうなと思う。
それにしても嬉しそうに目を輝かせている様子を見るに、やっぱり水の神は母さんのことを特別に思っていて、それでいて慕っているのだろうな。
恐怖心とか、敵意とかがあまり見えない。俺に対しても友好的だし。
「それで本当にごめんなさい! イーシーカに聞いたけれど、私のためにと言ってあなたの身体を使おうとしていたのでしょう? 確かにサクトの身体ならば私は癒されるだろうけれど、ノースティア様の息子をそんな使い方したら大変なことになっていたわ……! 本当にその前に分かって良かった……! それにオーレオーミィも送ってもらえたのでしょう?」
勢いよく頭を下げられる。
……母さんを慕っているなら、余計に俺の身体で回復しても嫌だっただろうなと思う。
心の底から安堵した様子に、思わず笑ってしまった。
フォンセーラとクラのことも紹介した。水の神は、フォンセーラにはあんまり興味がなさそうだった。クラには「ノースティア様の神獣?」と嬉しそうに視線を向けていたが、分かりやすすぎる。
ただそういう態度の差は当たり前と思っているのか、フォンセーラは気にしてなさそうだけど。
やっぱり母さんの正式な神獣って存在そのものが珍しいっぽい。そもそもこの世界の――父さんに出会う前の母さんは特別な存在が誰も居ないみたいな状況だったのかなと思う。だから母さんの正式な神獣になりたい人がいても、全く神獣を作らなかったのかなって。
そんなことを考えた。
ちなみにどんなふうに水の神がオーレオーミィを使うのかな? と思って見せてもらうことにしたのだけど。
いきなり巨大な宝石を身体に取り込んでいって本当にびっくりした。いや、そういう使い方をするものなのかもしれないけれどさ。女性の身体にいきなり取り込まれていくのって本当にびっくりした。
あと取り込んですぐに回復するものではなく、しばらく馴染ませて身体を回復させていく必要があるらしい。
挨拶もおえて、水の神にオーレ―ミィを渡せたし、目的は遂げたわけだけど「お話ししましょう」と言われたのでしばらく火の神と水の神と話すことになった。