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洞窟の先に続いた場所 ⑯




「俺が一緒に行った方がいいんですか?」

「ああ。スイラもノースティア様の息子である君……えっと名前はなんだったか」

「俺は咲人です」

「サクトにスイラも会いたがるはずだ。ノースティア様の息子に挨拶をしたいだろうから」



 弱っているらしい水の神は、母さんに対して何かしら特別な感情でも抱いているのだろうか。母さんなら別に俺に挨拶をしないぐらいでどうこういったりはしないはずだけど、やっぱりそういうのを気にしているのか?


 俺も他の神のことは気になるので行くのは問題はないけれど……。



「そうなんですね。それなら旅の仲間のフォンセーラ連れていくのと、俺の家の猫――えっと、今は母さんの神獣のクラを待ってもいいですか?」

「フォンセーラとはそこの娘か? それにノースティア様の神獣? クダラ様ではなく??」

「フォンセーラはそこにいる女の子で、母さんの信者です。あと母さんはそのクダラさんを神獣だなんて一言もいってないはずなので、母さんの神獣は一匹だけですね」

「……そうなのか。構わないが、ノースティア様が唯一認めた神獣とはどれだけ凄まじい力を持つ存在なのだろうか」

「いや、クラはそういうのじゃないですよ。えーっと、母さんがしばらくこの世界を開けていたのは知ってます?」



 なんだか火の神的にはクラが凄まじい力を持っていて、それを見込まれたからこそ母さんの神獣になれたとそういう風に誤解しているように見えた。

 強かったからこそ母さんが神獣にしたのではなく、元々ペットとして可愛がっていた存在を家族としてこの世界に連れてくるにあたって神獣化させたが正しい。





「姿を現していないのは知っていたが……」

「母さんは異世界……俺が生まれ育った世界に来てましたよ。そこで父さんと出会って、父さんが平穏に過ごしたいって言ったからそこで過ごしていたんです。クラはただのその頃に俺達一家が飼っていたペットの猫です。特にクラが特別だったから神獣にしたというより、家族だからです」

「……君の父親は、ノースティア様を妻にしておいて平穏に過ごしたいなどと言っていたのか?」

「そうですよ? 俺の父さんは肝が据わってますからね。母さんがとてつもない力を持っていると知った上で、普通に意見しますからね」



 こういう神様の反応をみていると、やっぱり父さんって色々変というか、ずれているというか……。

 父さんはこの世界に連れられてきて、母さんが望むからとそのまま新しい身体に入って人ではなくなったと言えるだろうけれど……父さんって、あくまで地球に居た頃はただの人間だったはずなんだよな。それこそ、母さんが何かすれば簡単に死んでもおかしくない存在……。

 それなのに母さんに対する態度が普通すぎて、当たり前の”妻”として扱っているあたり父さんだなって感じがする。






「……なるほど。ということはノースティア様の夫はよっぽど力のある神かそれに準する者なのだな?」

「いえ? ただの人間ですよ」

「は? ただの人間が、ノースティア様に意見をする?」

「はい。父さんは母さんの常識改変とかは通じなかったらしいですけれど、母さんと喧嘩したら一瞬で命を失うぐらいには弱い普通の人間のはずですよ」



 母さんの改変能力が利かないのは父さんの特異な部分だとは思うけれど、それがあったとしても死なないわけではない。母さん次第では父さんは一瞬で死んでしまったと思う。……やっぱり父さんって凄いよな。





「……な、なんだと? それは肝が据わっているという次元ではないだろう。ノースティア様の夫が人間とは……」

「あ、でも俺達一家は皆まとめてこの世界に来たので、それに伴い父さんは人間ではなくなっているとは思いますけどね」

「そ、それにしてもそれまでは人間だったのであろう? ただの人間が、ノースティア様に意見……??」



 火の神は、自分が神様だからこそ余計に色々と思う所があるのだろうと思う。神様として母さんのことを昔から知っていて、その恐ろしさを十分に理解していて、そんなことをするなんて考えられないのではないだろうか。



 というか普通に異世界の神様と、普通に夫婦になるただの人間って、うん、並べてみてもなかなかない夫婦だと思う。






「そ、そのノースティア様の夫は、怖ろしい方なのだろうか……」



 なんだか怯えたように見えるのは、母さんだけでも恐ろしいのにまた恐ろしい存在が増えるのだろうかと心配しているのかもしれない。父さんのことを母さんと同じような存在だと思っている?




「いや、父さんは考え方とか普通の人間なんで、逆に母さんが暴走したらすぐに止めると思いますよ。だから昔の母さんがどうかは知らないですけれど、少なくとも今の母さんはあなたが思っているほど危険だとは思わないですけれど」



 父さんと出会う前の母さんはそれはもう好き勝手にしていて、ストッパーなど居ない状況だっただろうから。




 そんなこんな話していると、クラが戻ってきた。

 クラは「何、この惨状」と驚いていた。事情を説明すると母さんと同じく、火の神に怒っていたがおさめてもらった。



 それから俺はフォンセーラとクラを連れて、火の神に連れられて水の神の元へと向かうのだった。




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