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洞窟の先に続いた場所 ⑭

1/16 二話目





「……ないわけではない」

「へぇー。じゃあそっちの方向にしません?」

「しかし、神力を回復させるのに最も重要な役割のものが、とある神に独占されている」

「独占? 分けてくださいっていったらどうです?」



 どうやら神力を回復させるために必要な何かがあるらしい。俺の感覚だと待っていれば勝手に自己回復するのでは? と思っているのだけどそうでもないのか? それともそれが追い付かないほど、水の神が傷ついているとか?


 正直よく分からないが、誰かが独占しているのならば話し合いをしてどうにか出来るのでは? そんな風に思うけれど、よっぽど話が通じないタイプとか?

 分からないが、とりあえず話し合いをするべきではと思った。




「……無理だ」

「どうしてですか?」

「……その特別な宝石を独占しているのはあの闇の女神であるノースティア様だからだ!!」



 そんなことを言われて思わずずっこけそうになった。

 まさか、ここで母さんの名前が出てくるなどと思ってもいなかった。母さんってずっと地球に居たはずなんだけれど。

 少なくともこの世界の方が時間の進みは早いらしいし、それこそ長い間この世界を開けていたはず。……ああ、でも父さんの身体の準備をしていたって言っていたからたまには来てたのか? 分からないが……母さんのせいでこんなことになっているなら母さんに聞こう。





「あー。なるほど。ちょっと待っててください。聞いてきます」

「え?」




 突然、聞いてくるなどといった俺に火の神は驚いた表情で固まっている。その火の神をおいて、俺は脳内で母さんに語り掛ける。




(母さん! 母さん、いる!? ちょっと聞きたいことあるんだけど!!)



 何度も何度もそう言って話しかけると、声が返ってくる。




『もう、煩いなぁ。なに?』


 あ、やばい。母さんがちょっと不機嫌そうだ。父さんとの時間を邪魔してしまったか……。

 母さんは本当に父さんとの時間邪魔すると怒るからなぁ。でもまぁ、父さんが隣にいるからすぐに機嫌なんて良くなるんだろうけれど。


 それにしても父さんの声が聞こえないのは、母さんが父さんの声を独占したいからとかそんなのかな。どれだけ独占欲強いんだか。





(母さん、父さんとの時間を邪魔して本当にごめん! それは悪かったと思っているけれど、母さんのせいでちょっと大変だからちょっと確認させて!)

『んー。まぁ、いいよ。博人が咲人の話聞いてっていうから、聞くよ』



 なんか一気に母さんの機嫌が直った。父さんが何かしたのだろうか。

 とりあえず有難いので、俺は早速本題に入る。




(ええっと、神力を回復させる宝石を母さんが独占しているって聞いたんだけど、本当?)

『ん? ちょっとまって』


 母さんは俺の言葉にすぐにぴんと来なかったみたいだ。母さんにとってはきっと火の神たちにとって切望しているものでもどうでもいい物だったりするんだろうなと思う。

 それにしてもなんで、母さん、そんなものを独占しようとしたんだろう? 理由がなければ母さんってそういうことしないと思うんだけどなぁ。




『オーレオーミィの宝石のこと?』

(え、ちょっと待って。確認する)



 固有名詞を言われてもさっぱりぴんと来ないので、一旦母さんを待たせる。




「あなたの欲しい宝石って、オーレオーミィって名前ですか?」



 俺が火の神に向かって問いかけると、「そ、そうだが」と頷かれる。あっているらしい。




『誰か近くにいるの? 神?』

(うん。オーレオーミィが欲しいって神様。母さんが独占しているから手に入らないって俺の身体代わりにしようとしてたんだけど)

『は? 私の息子を? 消滅させる?』

(母さん、待った!! させなくていいから!! 俺は平和的解決をしたいんだよ)

『でも咲人のこと、使おうとしたんでしょ? 博人が悲しむよ? 博人と私の息子にそんな真似するの駄目だよ?』

(母さんがそんな風に怒ってくれることは嬉しいけれど、本当にそれはいいから! 俺が気まずいし、やめてほしい。それよりオーレオーミィってもらえる?)



 物騒なことを言い始めた母さんを俺は必至で止めた。いや、だって母さんって俺でもどうにか出来るぐらいの火の神ぐらい、簡単に消滅できそうだし。

 うん、遠隔で消滅させるとか恐ろしすぎることをしそう! すぐに想像が出来る。




『いいよ』

(……母さん、そんな簡単に渡せるならなんで独占なんてしたの?)



 軽く承諾されて拍子抜けする。


 そんなに必要じゃないなら最初から独占なんてしなければいいのに。

 それとも母さんが独占したつもりないのに、勝手にそういう風に勘違いされただけなのか……。






『だって博人の新しい身体準備するのに使いたかったから』

(そうなの?)

『うん。だって私の博人の異世界での身体だよ? 私が準備するのを妥協するわけないでしょ?』



 どうやらその特別な宝石は、父さんの異世界での新しい身体に使われていたらしい。

 母さんは父さんのことだと全く手を抜かないので、それで独占していたのだろう。……うん、母さんらしい。



(本当に母さんって感じ)

『私は私だよ? とりあえず送っとくね。じゃあ、私は博人といちゃいちゃするから邪魔しないでね』


 そう言って母さんの声はぶつりっと途切れる。



 ――そしてそれと同時に目の前に、真っ白な輝きの巨大な宝石が落ちてきた。

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