洞窟の先に続いた場所 ⑬
「話? 神界に認められても居ない半神が俺に何を言うというのだ」
「はい? 認められてもないってなんです?」
なんか言い出した。
不遜な態度は神様だからだとは思うけれど、何を勝手なことを言っているんだろうか。
何言っているかさっぱり分からないのは、俺がこの世界について詳しく分かっていないからだろうか。
「俺はお前のようなものを知らん。神界では新たな半神が居れば基本的には紹介されるはずだ」
「あー……。なんていうか、俺は例外ですねー。最近、こっちにきたばかりなんで。あと神界には自分で行った方が楽しそうと思ったので、一緒にはいかないって言っただけですし」
うん、俺が神界に行ってないのなんてそういう理由。
本当にいきなり神界になんて行くの落ち着かないし、俺は折角異世界に来たからぶらつきたいと思っているし……。
それにしても俺は特にこの火の神様が目の前にいてもなんとも感じないのだけど、フォンセーラとか妖精たちはその神力を前に耐えられないのか黙り込んでいる。……クラならば耐えられそうだけど、まだこっちに戻ってきてないんだよなぁ。どこまで散歩に行っているんだか。本当にマイペースすぎる。
「何を訳の分からないことを!! そのような強がりでこの俺を騙そうというのか!!」
「いや、全く。というか本当のことを言っているし。少なくとも俺はどんな神様にだって使われる気はないし、それに妖精たちが取り込まれるのも正直言って気分が悪いから、他に解決方法ないのかなって話し合いたいと思っているんですけど」
うん、なんかこの火の神、凄く短気そう。俺は出来れば平和的解決をしたいと思っているのだけど……やっぱり力づくで黙らせなきゃ話なんて聞いてくれなかったりするんかなぁ。
どうしようかなと考えていると、火の神はいきなりマグマのようなものをぶつけようとしてきてびっくりした。いや、地形壊そうとするの本当にやめてほしいなと思う。
俺は思いっきり魔力を込めて、そのマグマを相殺する。一旦、魔力で閉じ込めて周りに影響がないようにしておく。そうしたら引き続き何度も何度も、火やマグマのようなもので攻撃を繰り出してくる。……俺が全て対応しきれなくて一部焦げたり、凄いことになっている。
こういう自然破壊を平然とやられるのはなんだかなと思。
「小癪な!! 半神風情が、純粋な神である俺を――」
「んー。ちょっと話を聞いてほしいので、黙らせますね?」
俺はそう口にして、喚いている火の神を黙らせることにする。
対峙した感じ、おそらく半神の俺でもこの神様をどうにかすることは出来そう。これは俺が母さんの息子だから、普通の半神より力があるからなのだろうか。
本当にそういう風に生んでくれた母さんには感謝である。
思いっきり魔力を込めて――多分、神力も混ざってるかな? って感じの力で火の神を押し込む。
ただ油断はしない。出来はしそうだけどさ、流石に神様相手だから、下手なことをすると俺がやられてしまうだろう。
「な、ななな、なにを」
「んー。こうするといいかな?」
「ちょっとま――」
「例えば、こうとか?」
神様相手に不謹慎かもしれないけれど、これは俺にとってはちょっとしたお試しの場みたいになってしまっている。うん、こういう神様相手に俺がどこまで出来るかという試しの場?
なんだろう、こういう神様だと人々の過ごすこういう下界だと全力を出せないとかそういうこともあるのだろうか。
どうなんだろう?
俺の力がどのくらい神様の世界で通じるかとかさっぱり分からないしなぁ。この神様って、俺の身体を勝手に使おうとしたり、妖精たちを取り込もうとしたりするぐらいだし、結構下っ端?
どちらにしても自分の力でどうにかしようとするではなく、妖精たちにお願いして俺を捕まえようとsいてたし。うーん、やっぱり何か制限ある?
とはいえ、母さんとか伯母さんとかだとそういう制限とかあんまりなさそうな印象。というか、母さんの場合だと多分そういうやってはいけないことの決まりとかあっても勝手に何でもしそうだ。父さんが止めない限りは……。
そんなことを考えながら、火の神への追撃は止めない。その間、火の神は声にならない声をあげているし、見守って身動きの取れないフォンセーラや妖精たちは唖然とした顔をしているけれど、まぁ、こうする方が一番平和的だった。
俺は火の神を消滅させるようなつもりはないし、あくまで冷静に話しをするために一旦黙らせるべきって判断。
――俺はそんなことを考えながら、火の神を無力化させた。
「よし、これで話が出来るな」
そう呟く俺のことを火の神は、失礼なことに珍獣か何かを見るような目で見ている。というか、唖然としている。この状況が理解出来ない感じなんだろうなと思った。
「俺は平和的に解決する方が好きなんだけど、他にその水の神をどうにかするための方法ってないんですか? 俺とか妖精を使わずに」
俺は力なく呆然としている火の神にそう問いかけるのだった。