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異世界の、はじめての街 ③

 食事を摂った後、街をぶらつく。



 一際目立つ建物がある。それは神殿である。神様への信仰をする者たちが集まる場所。街の由来になっている通り、この街では母さんの姉的な立場である光の女神イミテア様が信仰されているとのことで大きな石像がある。

 その石像の前で、光の女神イミテア様を信仰している神官が高らかに語っている。



「こちらの石像は、女神が実際に顕現した時の様子をもとに作られたものです。魔王軍がこの街を襲撃した際、『勇者』様が女神と共にこの街を守ってくれていたのです」



 この世界は神様という存在が地球よりもずっと身近にあるようだ。

 地球では神様なんて見たことはなかったけれど、この世界では神様というのは人の前に顕現することがある。とはいえ、それは限られた人の前にしか出ないらしいけれど。


 女神イミテア様は人と関わりの深い存在で、時折そういった逸話は残っているらしい。ちなみにその神官は母さんのことを「イミテア様を困らせる厄介な方」と称していた。

 母さんって色んな風にこの世界で思われているんだろうなと感じる。……俺はなるべく母さんの息子だとは露見しないようにしておこう。騒ぎになる予感しかしない。


 

 

 この世界に存在する数多の神……それは華乃姉と志乃姉が向かったという神界には沢山いるんだろうなぁ。その神様ごとに神殿などがあるんだろうか? あと信仰の仕方とかも違うらしい。

 

 神官から「あなたはどの神を信仰していますか?」と聞かれてしまったが、一瞬固まってしまった。

 だって信仰している神様なんていないし。しいて言うなら母さんだけどそれは言わない方がいいだろうし。

 そして結局当たり障りなく、光の女神イミテア様の名を口にしておいたけど。



 神殿を後にして、武器屋を見かけたので寄ってみる。





「兄ちゃんはどんな武器を使うんだ?」

「初心者でも使いやすいものをお願いします」



 魔法の使い方は母さんから埋め込まれてはいるけれど、折角異世界に来たのだから武器を持ってみるのもいいだろうとそう思ったので購入してみることにする。


 この世界がどんな感じかまだまだ全然分からないけれど、武器屋なんてものには興味が惹かれてしまったのだ。だからつい足を運んでしまい、気づけば店主に勧められるままに持ち運びのしやすい長剣を購入した。

 かっこよさげな大剣にも興味が惹かれたけれど、俺の腕力では持つのがやっとだった。というか、長剣でさえ持ち慣れていないから重く感じた。


 実際に手に持ってみて思ったけれど、漫画や小説の世界で大剣を振り回しているキャラって凄いんだなと思った。

 この世界、身体強化といったファンタジー漫画などでおなじみのものもあるらしい。身体強化の魔法の練習もするけれど、どうせならそれがなくても長剣を振り回せるぐらいにはなりたいな。



 そうしないとなんだかかっこ悪い気がして嫌だし。ちなみに今、俺は母さんの手によって解放された魔力が外に漏れないように制御されている状態だ。俺の魔力、母さんの子供というだけあってすさまじく多いらしい。それを制御できないと大変な状態になるらしい。

 全部母さん任せなのもアレなので、自分の力でちゃんとそのあたりもどうにか出来るようにしたいなぁ。



 それにしても異世界で俺はどうやって生きていこうか?

 正直地球にいた頃も、将来の夢なんて漠然としたものしか持っていなかった。明確に何になりたいってある方が少ないと思う。当たり前みたいに学校を卒業して、就職していくんだなとしか考えていなかったので、今の状態は完全に予想外でしかない。




 宿に戻ってから武器や魔法の練習ができる場所があるかと聞いてみる。

 冒険者になれば手っ取り早く訓練場を貸してもらえるらしい。しかし今の所、冒険者になるかどうかさえ決めていないので、街の外で試してみようかな? 魔法に関しても人が多いところでいきなり試すのはちょっと不安だし。


 でも魔物に襲われないようにはちゃんと注意を払わないと……。



 そんなことを思いながら、宿の部屋のベッドに腰かけている。


 ベッドは結構固めである。王族や貴族の眠るところだともっと良い設備なのかもしれない。

 というか、あれだな。この世界って王族や貴族が普通にいるんだよな。そのあたりに無礼な真似でもしようものなら大変なことになるのかもしれない。


 のんびりとこの世界を見て回って楽しもうとしか思っていないので、そういう身分が高い相手と関わることはまずないだろう。ただ万が一の可能性はあるかもしれないので、そういう時のことは想定しておく必要がある。


 しかし想像してみても、そういう相手と接する自分がいまいちピンとこない。本当にどうしようもない状況になったら母さんに助けを求めるのも一つの手かな。母さんは死んでも俺を蘇生させるとか言っていたけど、そういう状況にならないのが一番だし。







『咲人、この声、聞こえてる?』




 そろそろ眠ろうかと考えていたら、俺の頭にそんな声が響いた。






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