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洞窟の先に続いた場所 ⑪



 神の瞳が向けられたことを、俺は最初理解が出来なかった。神に対する恐れを抱いているであろう彼らがそんなことをしだすなんて思わなかったというのもある。それこそ、その信仰心が強すぎるせいで俺の意にそぐわぬことはするかもしれないと思っていたけれど、そのぐらいだった。



 ――でも、俺の身に起きたことはそんな軽い出来事じゃなかった。



 危険だと言われていた、神の瞳と呼ばれる二つの石のようなもの。その力が妖精たちの手によって、俺に向けられる。


 火と水。

 その魔力を宿した大いなる力が俺へに放たれ、俺は……すぐさま、自分の魔力でそれを相殺した。咄嗟の出来事に対応が出来たのはこれまでの経験があったからだ。異世界に来たばかりの俺だったら少なくとも対応は出来なかっただろう。


 ……というか、クラが居ない時で良かったな?

 クラが居たら迷わず殺されていたぞ? ちなみにクラに関しては神の瞳を取り戻した後に、ふらっとどこかに行った。多分、散歩。

 俺とフォンセーラは神の瞳を奪還したことで湧き立つ妖精たちと過ごしていたが、いきなり襲われたわけである。





 俺の後ろにいるフォンセーラの顔が強張っているのは、妖精たちが神の瞳を持っているからだろう。

 流石にただの人間の女の子でしかないフォンセーラは、そういうものを向けられたら恐怖しかないだろうし。




「なっ……」



 それにしても俺が神の瞳への対応が出来たことを、妖精たちは驚いているようだ。

 俺が神の血を引くと知った上なのだから、驚く要素はないのでは? なんて思う。


 俺は半神とはいえ、神の血を引く。母さんから魔力量が多いって言われるぐらいには多い。

 でももしかしたらこの神の瞳と呼ばれるものは、普通の神だとどうにか出来るぐらいには強力だったりするんだろうか……? そういう基準は全く分からない。


 それぞれの神の瞳の力が、まだ俺に向けられている。

 相殺していればそのうち、諦めるかなと思っていたのに……なんか、引くに引けなくなっているのか、ずっと向けてくる。




「あー……、これ、均衡を壊さないとずっとこれ?」

「かもしれないわ。でも妖精たちも神の瞳を使うことに疲弊しだしているから、待っていればそのうち力尽きそうだわ」

「え、力尽きるって、あいつら死ぬの?」

「じゃないかしら……。幾ら妖精とはいえ、これだけの力をずっと使い続けるのは難しいと思うわ。そのうちすべての力を込めて死に絶える個体が……」


 ……なんか俺が神の瞳の力を相殺しているうちにフォンセーラは少し冷静になったらしい。そんなフォンセーラと話していると恐ろしい推測を言われた。


 神の瞳に力を込めているであろう妖精たちを見ると確かに顔色が悪く今にも倒れそうな個体がいる……って、流石にそれは俺が嫌だ。

 このまま放置して妖精たちが死ぬとなると、ちょっと気分が悪くなる。うん、俺がただ嫌なだけ。



 そういうわけでさっさとこの場をどうにかすることにした。

 相殺する量しか込めていなかった魔力を、さらに強める。

 そうすれば、向こうの力が押され出した。



 さらに妖精たちが慌てているけれど、俺に反撃をされると本気で考えてなかったのだろうか。それか二つの神の瞳を取り戻すことが出来たから半神でしかない俺ぐらいどうにでも出来ると思ってた?

 俺のことはまぁ、いいけれど。でも母さんのことまで侮られている感覚になるのは嫌だ。って、あれか。俺が母さんの名前出してないからって言うのもある?



 そんなことを考えながら自分の魔力で、神の瞳から放たれている炎や水の魔力を全て押し切った。

 それにしても神の瞳から推し放たれた力のせいで、一部燃えたり水びだしになったり、うん、なんか湖も出来ているし。こういう物騒な力を俺に向けないでほしい。







「なんで、神の瞳を俺に向けたの?」





 俺は怒りとかそういう感情ではなく、ただどうしてという疑問で問いかけた。

 だってまさかこういうことになるとは思ってもいなかったから。





「ひ、ひぃぃいいいい」



 しかし妖精たちはと言えば、大体がへたり込み、飛ぶ力もなさそう。

 あと俺に対して恐怖や怯えの感情を抱いているのか、凄い顔を向けてくる。目が合うと背けられる。……そんなになるぐらいなら最初から俺に襲い掛かるなんてしなきゃいいのに。








「もももも、申し訳ございません!! わ、わしの命は差し出すので見逃して下さあああい」


 ……俺に色々説明をしてくれていた妖精が、そんなことを口にして必死な様子を見せている。ああ、でもこの妖精も俺が神の瞳の力の前にどうしようもなければこうはならなかっただろう。そう思うと冷めた気持ちにはなる。



「お前の命なんていらない。それより、なんでこんなことしたわけ? 最初からこのつもりだったとか?」



 本当に妖精の命なんていらなさすぎる。そんなもので喜ぶ人なんているのか?






「……最初からなはずがないです! わ、わしらだって本当はこんなことするもりなかったです。で、でも……神が久方ぶりにわしらに接触してくださったのです! その神が、サクト様の身体を使いたいと……!」


 俺が問い詰めれば、何だかややこしいことを言いだした。使うってなに?



 

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