表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/132

洞窟の先に続いた場所 ⑨

 

「お、おう。おはよう」


 こんなに沢山の妖精たちから声をかけられて、思わず動揺してしまう。

 いや、だっていきなりこんなに多くの妖精たちから声をかけられるなんて思ってもいなかったのだ。




「朝からどうしてこんなに集まっているんだ?」

「サクト様が目を覚ました時に、挨拶をするのは当たり前です」

「……あー、これからは要らないかな。俺はそういうの求めてないし。別にいつも通りに過ごしてもらえればそれでいいよ」


 本当にそんな感想しか抱かない。

 うん、なんていうか特別な存在として産まれたらそういうのが当たり前みたいになるのかもしれないけれどさ。俺は未だに一般市民な感覚しかないし。



「……分かりました。では、こちらを」

「いや、なに?」



 俺の言葉に頷いたかと思えば、突然周りの妖精たちに何かを持ってこさせるその妖精。

 ……そして持ってきたのは魔物の頭部。中々巨大で、妖精たちからしてみれば大きくて恐ろしい相手だろう。

 それを魔法でも使っているのか浮かせながらもってくる。この妖精たち、こういう魔物を普通に狩れるだけの能力があるのだろうか。ならば……俺の力を借りなくても神の瞳を取り戻せるのでは? なんて思った。


 が、まぁ、あくまでそれは俺の主観でしかなくて実際には神の瞳なんて言われるぐらいなのだから簡単に取り戻せるものではないのかもしれないが。





「サクト様への貢物になります。お気に召さないでしょうか……?」

「俺のためにって持ってきてくれて申し訳ないけれど、俺はそういうの要らない。今後、持ってこなくていいよ」



 俺がそう言うと妖精たちはざわざわしだす。

 妖精たちからしてみると神の血を引く俺のような相手にはこういうのを渡さなければと思っているのだろうか。




「サクト、何か受け取った方がいいかも。妖精たちも困ってしまうから」



 フォンセーラにもそう言われて、考えた末に魔物の素材の一部や周辺で採取できる植物を持ってきてもらう程度になった。簡単なものでいいとはいってある。いや、だってさ。俺は基本的に受け取ったらお返しをきちんと返したい方なんだ。

 もらいっぱなしだと、なんか俺は嫌だしな。



 そんな会話を交わした後に、神の瞳に関することを詳しく聞いた。

 ちなみにその間、クラは興味がなさそうに座っている俺の膝の上に乗っていた。気持ちよさそうにしているクラを撫でながら話を聞いたのだ。


 クラに怯えているらしく妖精たちは緊張した面立ちで説明をしてくれた。



 昨日も話に聞いた通り、神の瞳というのは火の神イーシーカと、水の神スイラのそれぞれから受け取ったもので二つあるらしい。それでいて火属性の神力と水属性の神力が宿っているのだとか。

 あと二つ揃うと効果が倍増するだとか、何か凄いファンタジー漫画とかで出てきそうな設定もあるそうだ。



 争いあっている人間の集落――彼らも互いの神の瞳を、相手に渡してはいけないとそう思っているようでそれを持ちだす時は限られているらしい。人間の集落は、神の瞳を使って妖精が近づけないように施されているらしく、その持ちだした時に神の瞳を取り戻す必要があるだとか。



 



「……というか、お前達ってその神の瞳を取り戻したらどうする気なの?」


 神の瞳の説明などを聞いている中でふとそんなことを思った。




「もちろん、わしらから神の瞳を奪った者達に制裁を加える必要があります。あのような者達は必要ありません」


 なんか物騒な答えが返ってきた。



「いや、それはやめろよ。少なくとも俺の力を借りて神の瞳を取り戻すっていうなら平和的にやってほしい。そうじゃないなら俺は手伝わない」


 うん、これで俺が手伝って神の瞳が戻ってきた際にそんな大惨事を起こされたらたまったものじゃない。

 そうなんだよな。目の前の妖精たちが幾ら言葉が通じようとも――人ではないんだよな。だから人と違う考え方を幾らでも持っていて、そういうことは起こりうる。


 ……俺は盗みは悪い事だと思うし、神の瞳が元々妖精たちのものだったらあるべき場所に戻すのは良いことだとは思う。だけどなんかうーん、元々本当に神の瞳が妖精たちのものだったかとかも判断がつかないんだよな。

 一方的に片方の意見だけ聞いてどうのこうの判断するのもどうかと思うし。



 というか火の神と水の神が争いあっていて――だけどその二柱の神の瞳と呼ばれるものを妖精たちが所有していて……うん、この妖精たちってどっちの味方なんだろ? 両方を崇拝している? 分からないな。



 本当に神の瞳と呼ばれるものを授けられたというのなら、きっと神たちにとってもこの妖精たちは特別な存在だったってこと?



「……そうですか。分かりました」


 残念そうにしながらも妖精たちが俺の言葉に頷くのは、それだけ妖精たちだけでは神の瞳を取り戻せないからだろう。



 俺は誰かを崇拝しているとか、信仰している気持ちはわからないが、やっぱり信仰対象から受け取ったものってそれだけ特別なんだろうなとは思った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ