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洞窟の先に続いた場所 ⑧

 目を覚ます。

 一瞬、此処はどこだろうかとぼーっとしてしまう。



 眠るフォンセーラの姿を見て、はっとする。そして目が完全に冷めた。

 

 だってこうやって異性と一緒の部屋で眠るのって慣れてない。

 落ち着かないまま、じーっとフォンセーラの寝顔を見てしまう。


 フォンセーラは可愛い女の子だ。眠っている姿は普段よりも気が抜けているというか、年相応に見える。

 どちらかというと冷静で、大人びている雰囲気。普段と違う様子にじっと見ていまったけれど、寝顔を見つめるのって失礼では? と思わず視線を逸らす。




「咲人、何をしているの?」



 そんなこんなしていると、急にクラのそんな声が聞こえてくる。

 俺はその言葉を聞いてびくりっとしてしまう。だっていつの間にいたんだ!


 昨夜、一緒に寝たクラは起きた時には傍にいなかった。気まぐれに散歩にでも行っているのだろうかとそう思っていたのだけど、まさか戻ってきているとは思わなかった。俺がフォンセーラの寝顔を見ていたのを見られてたか?




「……何でもない」

「なんでもなくはないでしょ。フォンセーラの顔をじっと見てたじゃんか」

「うん。まぁ、それはそうだけど。でも気にするな」

「乃愛も博人の寝顔をよく見ているよ。同じ理由?」

「なに、母さんの理由って」

「博人のことが大好きだから、ずっと見ていて独占したいって言ってたよ。博人の寝顔を他の人が見るの嫌だって。子供である咲人達のことは許すって言っているみたいだけど」

「あー……、いや、俺の場合はそれとは違うよ」



 クラの無邪気な言葉に俺はそう答える。


 確かに母さんの場合だとそういう独占欲から、じーっと父さんの顔を見ているんだろうな。……母さんって本当に父さんのことを見つめるのも好きだし、暇さえあれば常に父さんの傍にひっついていて、父さんが遅くなると「いつ帰ってくるのかな」って夜遅くまで待っていたりとか……うん、本当に母さんって父さんのことが好きすぎるなと思う。




「ちょっと女の子と一緒に眠るのって慣れてないから落ち着かないだけ」

「ふぅん。咲人はどういう子と付き合うの? 沢山の女の子に手を出しても何とかなると思うよ」

「……いやいや、出来たとしてもやらないし。ああ、でも父さんと母さんみたいな関係性は憧れはするからいつかはって思うけど」



 父さんと母さんみたいな夫婦には素直に憧れる感情は抱いているし、そういう相手と出会えるのならば嬉しいなとそう思うけれど。

 それにしても父さんと母さんの馴れ初めの場合は、母さん側からグイグイ行ってああいう夫婦になっているだろうけれど。





「そっか。フォンセーラのこと、起こす?」

「うん。まぁ、起こすか」



 俺はそう言ってフォンセーラに近づいて、声をかける。



「フォンセーラ」

「んん……」


 フォンセーラは中々目を覚まそうとはしない。昨日も沢山歩き回ったからもしかして疲れたのかもしれない。

 さて、どうやって起こそうか。起きるまで待っていてもいいけどなんて思っていると、「おきなよー」とクラがいつの間にかフォンセーラのお腹に思いっきりダイブしていた。



 いや、それ絶対に痛いやつ。




「うぐっ」



 フォンセーラはうめき声をあげて、目を開ける。

 そして驚いたようにお腹の上に鎮座しているクラを見ている。




「クラ……?」

「おはよう、フォンセーラ。朝だよ。咲人はもう起きてるから起きよう?」

 



 クラが無邪気にそう言うと、フォンセーラは頷きながら体を起こす。




「朝……。そういえば妖精の里に来ていたのだっけ」

「うん。そうだよ」



 フォンセーラとクラが話しているのを聞きながら、俺は妖精たちのことについて考える。



 俺に対して助けてほしいって言っていたから、実際に何をしてほしいかは聞いておかないと。

 面倒なことだったら結局断ることにはなるかもしれないが……話を聞くだけはしておきたいしな。ただ折角こうして妖精の里に招待されたりしているわけだし、問題がないことは手伝ってもいいかと思っているけれど。



 そんなことを考えながら窓を開けると――、窓の外に沢山の妖精たちが居てびっくりした。




「おおうっ?」

「咲人、どうしたの?」

「いや、窓の外に妖精が居すぎてびっくりした。なんでこんなに朝からいるんだ……?」



 少ない数だと可愛いものかもしれないけれど、これだけ大量にいると正直引いてしまう。

 




「神の息子である咲人に皆興味深々なんじゃないの? それか咲人より早く起きなきゃみたいな使命感があるとか」

「えー。要らない……。この世界って神様、全部そういう扱いなの?」

「さぁ? あの妖精たちは神への信仰心が強そうだから、余計にそういう態度なのかもよー」

「そっか……。一旦、そういうの要らないっていうか」



 この場にどのくらい留まるかは分からないけれど、毎回これだと嫌すぎる。



 そういうわけで外に出たのだけど……、



「おはようございます、サクト様!!」



 大量の妖精たちに一斉に頭を下げられた。



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