洞窟の先に続いた場所 ⑦
これ、家の中身などはどうなっているのだろうか。
地球だとこういう模型と人形を置いて遊んだりするものは売ってあったけれど、俺は特に興味はなかった。志乃姉と華乃姉も大人びていてそういうおもちゃで遊んだりなんてしてなかったしなぁ。
まぁ、それは神としての自覚があるからこそそうなのだろうけれど。
しかし勝手に中を覗き込むのもプライバシーの面であれだし、見るとしたら聞いてからにするか。
「クラ、家にちょっかい出すなよ」
俺の目の前でクラが家にちょっかいを出していた。それに対して妖精たちが慌てている。クラが手加減をしているのは俺にも分かる。本気を出したらミニチュアの家ぐらい簡単に壊したり出来るだろうことが想像出来る。
……クラは正直言って妖精たちがどうなろうとも気にしないだろう。とはいえ俺が別に妖精たちと敵対するつもりがないことが分かっているからか比較的おとなしくしているっぽい。
ただし妖精たちは、クラがこの妖精の里を破壊するのではないかと焦り始めている。
「もー、僕がお前達の里をわざわざ壊す必要ないでしょ!! そんなに慌てないでよ」
「ひ、ひぃ、怒らないでください!! お猫様!!」
妖精たちはぶるぶる震えて、首を垂れている。
それだけクラのことが恐ろしいんだろうな……。
「クラ、少し大人しくしといて」
俺はそう言いながら、クラのことを抱きかかえて落ち着かせるように撫でる。クラは気持ちよさそうに鳴いて、落ち着いた様子を見せていた。その様子を見て妖精たちは驚いた表情になっている。クラがこうやってただのペットのように落ち着いているのが驚きなのかもしれない。
「妖精って何を食べるんだ?」
「わしらは木の実などを食べています。あとは魔力も」
魔力を食べるってどういう感じなのだろうか。
俺の魔力も狙っていたりする? 神の血を引く俺の魔力だと、妖精たちにとっては好物とかになる?
……俺の魔力は食べさせないようにはしとこう。面倒なことになりそうだし。
ただ幾ら小さい体とはいえ、これだけの数の妖精たちが長い間木の実を毎日食べるだと流石に尽きそうな感じがする。毎日食べなくても生活できるとかそういう感じなのだろうか?
そんな疑問の尽きない俺は色々と質問を繰り出してしまった。
どういう風に生活しているかとか、此処でどのくらい前から過ごしているのか。
そういう細かい点を問いかける。やっぱり知らないことをこうやって知ることが出来ると楽しい。
色々と聞いて回って、俺の知らないことを知れるのは楽しい。というか、単純にワクワクする。
妖精ってやっぱり人とは異なる存在で、その考え方も生き様も何もかもが違う。それでも言葉は通じて、意思疎通をすることは出来る。うん、やっぱり異世界って面白い。
「サクト様は最近こちらに来られたと聞きましたが……これまでは神界に?」
「いや? えーっと、俺の母さんって多分かなりの変わり者の神様で、俺は最近まで自分が神の息子なんて知らずにのんびり過ごしていたから。だから多分、一般的な神様の子供とは違う暮らしはしていたと思うけど」
俺の母さんは異世界の神様だったわけだけど……、父さんが普通に過ごしたいって言ったからという理由だけで普通の人間の……ただの母親で、主婦として過ごしていた。俺は全く気付くことなんて出来なかったし、志乃姉と華乃姉が半神だなんてことも知らなかった。
それで地球で当たり前の高校生と育って……突然、召喚されて、母さんや父さんのことを知って……。
うん、改めて考えてみると俺って普通の神様の子供とは違う生い立ちをしていると思う。
神様の子供がこの世界にどのくらいいるかは分からないけれど、多分、半神とかもそれなりにいるんじゃないかなとは思う。そういう人たちって基本的にはこの世界で生まれ育っているだろうし、俺みたいに地球で普通に生きていたのにいきなり神様の子供だとか言われるってあんまりないんじゃないかな。
「なるほど……。サクト様から感じ取れる力はとてつもなく強いように見受けられますが、自分の出自を知らなかったと」
「そんなに強いの分かるの?」
「わしらは神と交流を持っておりましたから。だからこそ、うちに隠された力を感じとることは出来ました。まさかこのように力が強い方がこちらに来られるなど、まさに運命だとそう思ったのです!」
「……たまたまだぞ?」
なんかキラキラした目で断言されたけれど、本当にたまたまでしかない。
変な感じに思い込まれても困るなと思いながら、一応注意はしておく。何かあってもどうにでも出来るだろうけれど、念のためにな。
その後は色々と話をした後に、妖精の里で一泊させてもらうことにした。
どうやらこの妖精の里には人間サイズの泊る箇所もあったようだ。基本は人が訪れないようだが、時々は来訪者もあるものらしい。
そういうわけでそこに泊まらせてもらうことにした。
その泊まる場所に関しても家の作りからして幻想的で楽しかった。
……まぁ、フォンセーラも含めて一部屋に放り込まれたのは驚いたけどな。フォンセーラは気にした様子はなかったけど、俺は落ち着かなかった。