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洞窟の先に続いた場所 ①

 洞窟の先は、開いた空間が広がっていた。

 植物が多く生い茂っていて、背の高い木々が立ち並んでいる。


 魔物の鳴き声がそこらかしこから聞こえてくる。

 こちらに襲い掛かってくるような魔物はいるだろうかとそう考えて、周りを警戒する。



「大分、洞窟進んだけど、此処何処だろ?」

「さぁ? 私もああいう長く続いている洞窟は進んだことがないから分からないわ。それにしてもサクトといると新しい経験が沢山だわ。私一人だったら、自分が生き延びることの方を優先したもの」



 フォンセーラはそう言って笑った。



 俺から見たフォンセーラは、何というか自由な女の子だ。

 母さんへの信仰心がとても強くて、のびのびと自分のやりたいことをやりたいようにやっている。

 母さんがああいう風に自由きままに生きている人だからなのかもしれないけれど。


 フォンセーラは俺と会わなかったとしてもこのままで、何処までも自由なようにそう見えた。

 だから、俺と一緒だからみたいな言い方をされると驚いた。




「フォンセーラは興味があったり、母さんに纏わるものだと躊躇せず一人で向かうイメージだった」

「そうね。でも一緒に旅する人が居た方が何かをするにも安心が出来るわ。……私はずっと一人で旅をしていたけど、誰かと一緒というのもいいわね」



 フォンセーラはおそらく一人でも気にならないタイプなのだと思う。

 その人の性格によっては一人で居ることを望まなかったり、誰かと一緒に居ないといけないとそんな感情にとらわれたりする。

 地球でもそういうタイプの人は結構いた。

 フォンセーラは俺との旅が終わった後も――まぁ、正直終わりがいつなのかとか分からないけれど、誰かと旅をするのだろうなと思った。



 フォンセーラとは出会ってからそれなりに経っているけれど、俺はフォンセーラのことを詳しくは知らない。





「フォンセーラっていつから旅をしているんだ?」

「十歳の頃ね」



 さらっと答えられた言葉に俺は驚く。

 そんなに幼いころからそうやって旅をするというのは想像できない。でも異世界だからこそ、色んな常識が異なるのだろうなと思う。




「なんか、聞いているだけで大変そうだな」

「別によくある話よ。私が生まれ育ったのは小さな村だったわ。そして兄妹も多かったわ。私は末っ子だったから余計に食い扶持として邪魔だったの。だから自立するか売られるかだったから、村を出ただけよ。ノースティア様を信仰するようになったのも、一人で旅をするようになってからだわ」

「そっか」

「ええ。貧しい村なんてそういうものよ。それに飢饉が起きたりして運が悪かったというのもあるわ」



 多分、フォンセーラは家族に関しても特に関心はないのだろうなと思う。色んな家族のあり方があるだろうし、それに関してはそういうものなんだろうなと思う。

 俺はもし誰かと結婚をして、子供が出来るとなるときっと家族を大切にすると思う。というか、大切にしたい。仲が良い家族の元で育ったから、俺はそういう風に生きていきたいとそう思っているから。





「そういう状況になったら死んでしまうことも多そうだよな。……フォンセーラが生きててくれてよかった。フォンセーラが居るからこそ、俺は今がより一層楽しいから」

「サクトはそういうことをさらっと言うわね。そうね。私はいつ死んでもおかしくない状況にはあったわ。今でこそこうして旅に慣れて、自由に動き回れているけれど――旅をし始めた当初は生きていくのに必死だったから。世間知らずだったから人に騙されることもあったわ。下手に人を信じて、殺されかけたりもしたわ」



 淡々と、そう言われる。

 フォンセーラにとってそういう過去の出来事も、平然と語れることなのだと思う。悲観をしていない点も、フォンセーラらしいなと思う。



 母さんの信者だからというのもあるだろうか。母さんは実際に何処までも楽観的で、余裕がある人だから。そういう生き方をこの世界でも母さんは示していて――だからこそ母さんの信者達は自由を何処までも尊重しているというか、そのあり方を大切にしているのだと思う。






「ねぇ、咲人とフォンセーラは何、難しい話をしているの? それより行くよ!!」



 俺とフォンセーラが会話を交わしていると、クラが退屈そうにそういう。猫であるクラからしてみると、俺とフォンセーラが話していることはつまらないことと思っているのかもしれない。



 俺はそんなクラに思わず笑って、そして頷いた。



 それからその森の中を奥へ奥へと進んでいく。途中で見かけた魔物を魔法で倒しながら進む。

 美味しそうな果実なども見かけたが、どうやらそれは毒のあるものらしく見た目では判断が出来ないなと驚いた。

 進んでいく中、何かが動く気配がする。



 その音からしておそらく大きな生物――それこそ人か、それよりも大きなものだろういうのは分かった。





「あ」




 そして何かの声が聞こえてそちらを振り向く。

 そこには一人の男性の姿があった。





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