何処に向かうか相談 ④
10/27 二話目
「咲人、フォンセーラ、奥の魔物が通っていいって」
しばらく待っているとクラが帰ってきた。
それにしても、何処か楽しそうな様子だ。
「奥の魔物?」
「うん。僕の気配に少しびびっていたみたい。これでも最近、気配隠しているのになぁ」
「そっか。でもまだ話が通じる魔物だったならよかった」
こういう場所で戦うというのはなるべく避けたい。しかもこうやって意思疎通が出来るような魔物だと大体がそれなりに力を持っている魔物であろうと想像が出来る。
多分、勝てはするとは思うけれどわざわざ戦いたいとは思わないしな。
そういうわけでまずはその魔物の住処の横を通って、さらに奥に進むことにする。
その魔物は巨大な赤色の芋虫のようなものだった。大きくてびっくりした。というか、こういう魔物は洞窟に住むのかと驚いた。どうやら主食は草らしく、緑色の巨大な草が沢山その場には置かれていた。
人語は話せないみたいで、俺には何を言っているかはさっぱり分からなかった。
とはいえ、クラは何を言っているかなんとなくわかったようで通訳してくれた。
どうやら俺を敵に回したくないとそう思っているらしい。クラのような存在を引き連れている俺は意思疎通の出来る魔物からすると恐ろしいのかもしれない。
その魔物から、素材の一部をもらう。その魔物の角の一種らしい。時々生え変わるらし、不要なものらしい。ただ武器とかの素材にはなりそうだと思った。素材ごとに色んなものに使えそうなのが面白いよな。
それからまた進むと、今度は少し下へと続いてた。ちょっと降りるのは大変だったけれど、魔法を使ったので問題なかった。本当になんていうか、人の手が入っていない。だから人が移動するのが全く想定されていないのだと思う。
少し下へと下った後は、そのまままた奥へと続いている。思ったよりもずっと先へと続いていて驚く。
「これ、何処まで続いているのかしら?」
「最後が行き止まりだったら出るのが少し大変そうだよな」
そんなことをフォンセーラと話しながら、俺達はまた奥へと進む。途中で襲い掛かってきた魔物はクラが先に排除してくれた。
それらの素材も必要なものは確保しておく。
俺も魔法で対応した魔物は幾つかいた。それにしてもこの洞窟は本当に色んな魔物が生息している。
見たことない魔物を見るのは結構楽しい。あとは見たことない植物が生えていたりとか。そういうのもまた面白いよな。
なんだか興味を引かれた植物はなんとなく採取しておいた。後々何かに使えたら面白そうだなと。
「これ、上どうなってるんだろうな。下にもぐっているなら地下だろうし」
「ええ。そうね。普通に地面なのでは?」
「それか湖とかそっち系の可能性もあるよな」
地下の洞窟が、湖の下にあるとかだと凄く楽しいなと思う。うん、面白そうだ。
上に何かあるか調べられる魔法とか世の中にはあるのかな? 一応、魔力を薄くのばしてみれば何かしら分かるだろうか。
「ちょっと止まっていいか?」
俺はそう言って、一旦立ち止まる。
そして魔力を伸ばしてみる。地層が厚いのか、よく分からない。うん、今の所上に何もなさそう。まぁ、魔物は土の中を移動しているっぽいけど。
こういう土の中を移動している魔物は洞窟側にきたりしないのだろうか?
「サクト、何をしているの?」
「魔力で上の状況探れないかなって、ただ俺の魔法スキルがなさすぎて、何が何だか分からない……。何回もやったらこういう風に魔力で色んなことが分かるようになるかな」
「そうね……。魔力の扱いが上手くなったらそういうことも出来るようになると思うけれど、それを分かるようになったら楽しいの?」
「うん。楽しいと思う。自分が行った場所の記録とか、纏めてもいいかもな。自分用の地図とか、きっと楽しいと思うんだ」
そんなことを考えると、俺はワクワクした気持ちになる。
自分だけの記録、地図……そう言ったものって作れたら楽しいよな。父さんとかに見せたら喜んでもらえそうだし。
そういうわけで少し遊びながら、奥へ奥へと進んでいく。俺が時折立ち止まってしまっていたけれど、クラもフォンセーラも特に文句も言わずに付き合ってくれた。それがとてもありがたいなと思った。
そうやって進んでいると、魔力を流すと上が水のようになっているのは確認した。
やっぱり川とか、湖とか、海などの下を通っているのだろうか? 海底洞窟みたいな感じだと、面白いよな。
なんかそういう単語にただ楽しい気持ちになる。
それからまた奥の方へと進んでいくと――あけ放たれた空間に出た。何だか妙に広い場所。何かしら面白そうなものがないかと探索をしてみると、モグラのような魔物には遭遇した。それが大量に居る。どうやらその魔物の住処らしい。ただこちらから手を出さなかったら特にこちらに襲い掛かってくることはなかった。
そういうわけで特に戦う意思はないので、そのまま奥へと進んだ。
そしたら――ようやく外につながった。