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闇の女神に纏わる遺跡 ⑮



「貴方、どうしてノースティア様の信者であるにも関わらず、サクトを襲ったのかしら? 同じノースティア様の信徒として嘆かわしいわ。確かにノースティア様は伝え聞く限り、誰かを特別に思う方ではないことは人間である私でも知っているけれど、だからといっていきなり否定するなんて……。サクトが貴方に負けるほど弱くなかったからよかったものの……もし命を奪うことになっていたらどうするつもりだったの?」

「えっと……それは」

「言い訳をしてもどうしようもないことが分かるわよね? 貴方は人ではないわよね。ノースティア様のことを実際に知っている身でありながら、サクトの言葉を聞かないなど本当に信じれない。言っておくけれど、ノースティア様は案外子供を大切にしている方なの。ですからサクトに何かあれば間違いなくノースティア様はお怒りになられたはずだわ。私達信徒が一番してはならないことは、ノースティア様の意に沿わぬことをすることです。貴方はそれを行ってしまったことを自覚しているの?」

「は、はい……」

「本当? これまでもノースティア様の名を騙り、この遺跡で好き勝手していたのよね? これまではノースティア様が関心の一つもしない物に関することだったので問題にならなかったのかもしれませんが、サクトはノースティア様の子供なのよ? 貴方はもっとノースティア様の信徒としては不適切なことをやったと自覚し、反省が必要よ」

「分かってます。ごめんなさい……」



 目の前で、凄い光景が繰り広げられている。母さんの信者だという人ならざるもの。

 黒髪の美少年が、フォンセーラに説教をされている。その目の前で正座している。うん、まさか、こんなことになるとは。


 確かにフォンセーラは、今回の件に関して憤慨していたし、よく話をしなければならないとは言っていたけれど……。



 本当に怒っているんだなというのがよく分かる。俺はこんな風にフォンセーラに怒られたことはないので、驚きしかない。





「フォンセーラ、僕より怒ってる。あの乃愛の信者、泣きそう」

「そうだな。やっぱり怒られたこととかないんじゃないか?」



 こういう異世界だと、地球よりもなんというか力が全てなイメージはある。それに神という存在が身近だからこそ、そういう存在が何をしようが結局許されるのではないかと思う。

 母さんの信者であるこの少年も、人とは違う枠組みで生きている存在だからこそ――うん、特にこういう風に動いていても誰も何も言わなかったのだろうなと思う。


 そもそもなんというか、神などの人ならざるものとの遭遇ってこの世界だと自然災害とかそういうものだろう。遭遇したら運が悪かったと言える、そういう奴。特に母さんなんて天災扱いだしなぁ。

 





「分かったのならばいいわ。それとサクトはノースティア様の名を勝手に使われていることを嫌がっているから、貴方がノースティア様の信徒であることは問題ないけれど……ノースティア様の名の元に勝手に行動するのはやめた方がいいわ」

「……そうですね。そうします」



 なんだかあいつ、心折れてない?

 そんなことを思いながらじっと見ていると目が合う。




「ごめんなさい。サクト様。僕はノースティア様の息子になんてことを……」

「もうやらないならいい」

「許してくれるなんて、サクト様、優しい……!!」



 豹変しすぎでは? と正直寒気がした。

 いや、だってさ。いきなり襲い掛かってきて、俺が母さんの子供だって信じなかった奴がいきなりこうだとびっくりするのは当然だろう?


 



「ふんっ、今更手のひら返しても遅いよ」

「えっと、猫様のお名前は?」

「僕はクラネット! 乃愛の信者、お前は?」

「クラネット様ですね。僕はチエリックです。乃愛というのは?」

「お前の信仰している女神の別名」



 クラネットがそう口にすると、チエリックは目を輝かせる。母さんは地球からこの世界に戻ってきたばかりだから、当然、地球で過ごしていた頃の母さんの呼び名など知らないのだろう。





「ノースティア様の別名を知れるなんて!! それにしてもノースティア様は雲隠れされておりましたけれど、まさか子供がいらっしゃるとは」

「上に二人いるから、三人いるぞ」

「えっ。三人も……? あのノースティア様が??」

「母さんは父さんを愛してやまないから寧ろ三人でも少ないと思う」



 というか……なんか母さん、こっちの世界に来たらきたで妹か弟増やしそうだよな。今、誰にも邪魔されずに二人っきりで異世界を周っているだろうし。

 母さんなら父さんとの子供は幾らでも欲しいって思ってそう。




「え。まさか、サクト様達の父親って同じ存在なんですか?」



 なんだか、チエリックはとてつもなく驚愕した顔をしている。




「そうだけど?」

「ノースティア様が、同じ存在と子を三回も成す……!? あの、ノースティア様が??」



 先ほどと同じことを言いながら驚愕している。

 本当にこの世界の、昔から母さんを知る存在にとってはそれだけ驚くことなんだろうなと思った。



 そんなチエリックに俺は、母さんは父さんを如何に愛しているかと、そのために異世界にずっと滞在していたことや今も二人っきりでいちゃいちゃしているであろうことを言うと今度はキャパオーバーなのか混乱した様子になっていた。



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