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闇の女神に纏わる遺跡 ⑬




「母さんは父さんの見た目をそれはもう気に入っているから、それを母さんの前で言ったら怒るぞ」



 俺の言葉を目の前の存在は全く聞きもしない。

 そのまま何も言わずに俺にとびかかってくる。


 本当にどうしてこんなに短慮的というか、全く俺の言葉を聞かないのだろうか?


 確かに父さんの見た目は平凡だ。どこにでもいるような日本人男性としかいいようがない。だから地球にいた頃から見た目が良い母さんが父さんを好きでたまらないことを不思議そうにしている人たちは多かった。全員母さんがいつの間にか黙らせていたけれど……。

 父さんの働いている会社で、社員の家族も呼んで行事があった時とか母さんは凄く目立ってたし。それは志乃姉にも華乃姉にも言えることだけど。



 物凄いスピードでつっこんでくるので、正直言って避けるのに必死である。

 ……母さんの信者ってこういうのが多いのだろうか? 俺はこの世界の母さんのことを知りたいから、こういう場所にはこれからも訪れる予定だけど、こういう連中ばかりだと面倒だと思う。





「避けるな!!」

「避けるに決まってるだろ! お前、話聞かなすぎ!! 俺は母さんの息子であることは事実なんだって」

「嘘を吐くな!! ノースティア様の息子がいるなんて聞いたことない! それに神力もないし!!」



 ……母さんが周りに俺が息子だって知られないようにしてくれているからか、それとも俺がまだ人間の枠組みから外れていないからか、目の前の存在には俺が母さんの息子だとは分からないらしい。

 伯母さんは俺が母さんの息子だって知っていたけれど、神様達以外は父さんの事も、俺達姉弟の事も把握できてないのかもしれない。


 その段階で、本当に目の前の存在は母さんにとってどうでもいいと思われているんだろうな。



 それにしても闇系統の魔法の使い手なのか、黒い魔力をまとわりつかせてこようとしてきて何だか不愉快だ。



 それにしてもこういう輩を黙らせるにはまだ俺の魔法は練度が足りない。異世界にやってきて魔法の練習はしてきたし、それなりに経験を積んできたはずだけど……自分の無力さに少し嫌な気持ちでいっぱいになる。



 もっと俺が魔法を得意になれたら……そうしたらこういう面倒な奴に関してもどうにかすることが出来るようになるだろう。



 ――その黒い魔法が俺に触れると、そのまま俺に影響を与えていく。この魔法は精神に影響していくようなものっぽく、結構不愉快だけどそれだけだ。こちらを洗脳してこようとするような声が聞こえてきたりもするけれど、そういう煩わしいものは全てはねのける。





「お前、どうして狂わない!! さっさと屈すればいいものを!!」

「嫌に決まってんだろう!! というか、お前、母さんの名を使って好き勝手するなよ! 母さんが望んでいないことを母さんの名でやっているお前の方が俺にとっては不愉快だ」




 地球にいた頃だってそうだ。有名人というのは、あることないこと囁かれる。勝手に名を使われて、面倒なことになったりする。それと一緒でこの世界で母さんの名は有名だからこそ、こうして母さんのあずかり知らぬところでこうやって勝手に母さんの名を使われることは息子としては正直嫌な気持ちになる。


 俺の言葉にその存在は一瞬びくつく。

 こういう風に誰かに声をあげられるというのは中々ないことなのだろう。だからこその反応なのだとは思う。





「なっ、お前、僕のこともノースティア様のことも馬鹿にしているだろう! 僕はお前みたいな人間がそんな口を利いている存在ではないのだぞ!!」



 そう言ってその存在は益々怒り狂う。

 どうにか避けることはできるけれど、こいつを黙らせるためにはもっと強力な魔法を使わなければならない。




 それとこいつが俺に対して怒り、冷静さを失っている。

 だからこそ勝機がある。

 もっと冷静な状況で相手にしていたらもっと苦労をしただろう。




 俺は闇の魔法をその場に展開する。炎や水などの大規模な魔法をここで展開するのは問題だと思っていたので、一先ず闇の魔法にしたのだ。

 だって気に食わないとはいえ、命まで奪いたいわけでもないし。



 そういうわけで俺は闇の魔法を使って、目の前の存在を押しつぶしてみることにする。





「なななななっ、なんだよ! その魔法は!!」




 文句を言っているそいつはなんとか魔法から逃れようとして――、結局押しつぶされた。





 俺の魔法がこういう存在に効くと分かるのは良いことだなとそう思う。

 これからこの世界で生きていく上で、役に立ちそうだしな。……考えたくもないけれど、こういう母さん関連の面倒な連中と関わることも増えそうだからな。







「……お前、本当に……、なんなんだ」

「だから何度も言っているだろう。俺は母さんの息子だって。お前が認めなかったとしても、俺が闇の女神である母さんの息子であることは変わりがない。だからいい加減納得しろ。あと、俺の仲間たちは何処にいる?」



 俺は倒れ伏すその存在を前に、そう問いかけるのだった。



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