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闇の女神に纏わる遺跡 ⑩


 遺跡の罠は様々である。

 この遺跡のいやらしいところは、ただ罠が凄まじいだけではなく、多くの魔物が生息していることだろうか。


 ……普通、魔物が倒されたらそのうち魔物が居なくなってしまうと思うのだが、そういう気配はないようだ。

 おそらく魔物が発生する仕組みが出来ているか、誰かが補充しているかのどちらかなのではないかなとは思う。


 基本的に魔法を使って対応をする。

 俺の魔力は一般的に見て、魔力量が多い方だ。とはいえ、魔法をどんどん使うとお腹がすく。


 収納系の魔法具に突っ込んでいた保存食を取り出し、食べる。

 正直言ってこういう保存食はそこまで美味しくない。この世界の保存食、今の所、美味しいものはあんまりなさそうなのだ。


 あんまり長期間、どこかにこもるというのは特に俺は異世界に来てからやってこなかった。

 街から街への移動の最中も、途中で村によったりすることも多く、普通の食事をとることが多かった。だから保存食ってこんな感じなんだなぁと少し気分が下がる。





「自分のためにも美味しい保存食作ろうかなぁ」

「美味しい保存食? こういう遺跡に潜った際は美味しい食事なんて食べられないのが当たり前だと思うけれど……」

「俺は当たり前で済ませたくないかなぁ。今後ももしかしたらこういう閉鎖的な場所に潜ることになったり、中々人里に遭遇出来ないエリアを徘徊するってなった時に食事が美味しくないだと気分が滅入るし」

「そういうもの?」

「うん。そういうものだよ。フォンセーラだって、好きなもの食べると嬉しくなるだろう? モチベーションをあげるのって大事だと思うんだよな」



 保存食を食べながら俺が口にした言葉に、フォンセーラは首をかしげていた。

 あまり共感してもらえなかったようだ。この世界の人達にとって保存食が味気がないものなのは当然という認識なのだろう。


 思えば俺が地球で読んでいた異世界ものの漫画やラノベなんかでもそういう感じのものが多かった。

 とはいっても俺は普通の高校生でしかなかったから、そういう知識はないけれど……、その辺は調べて何かしら作れそうなら作ってみてもいいかもしれない。

 なんてそんなことを思う。



 食事をとった後に、またひたすら遺跡の奥を目指す。

 やっぱり空間を広げている何かしらの魔法が行使されているのか、全然最深部までは辿り着かない。




「なんか、想像しているよりずっと広いね、此処」

「そうだな。今回の探索で奥まで生きたいとは思っているけれど、どのくらいでつくかな」



 クラは少し飽きている様子である。

 まぁ、結構似たような光景がずっと続いているからなぁ。



 奥へ進めば進むほど、罠も多様化している。あとは魔物も量が増えたりしているようには見える。

 特にこういう奥まった部分だと、遺跡攻略のために足を踏み入れた人たちも中々辿り着くことが出来ない場所なんだろうなとは思う。だからこそ、魔物の数も多い。

 どういう仕組みでこの遺跡の魔物たちが出現しているかは不明だけど、此処まで到達できるものが居なければ魔物が増えていくことは当然だからな。




「サクトとクラと一緒に遺跡に来れて良かったわ。私はいつか此処に足を踏み入れようとは思っていたけれど、此処まで大変だとは思っていなかったもの」


 フォンセーラは一人で冒険者として生きてきただけの実力があり、きちんとついてこれている。

 とはいえ、一人だったらきっと苦労しただろうというのは本人も分かっているらしい。



「俺もフォンセーラが居てくれてよかったと思っているよ。俺も一人でも母さんに纏わる遺跡には来たと思うけれど、下手したら死んでいただろうし」

「咲人の場合は死んでも乃愛が復活させそうだけどね」

「いや、まぁ、そうだけど……」


 でもだからといって簡単に死んでもいいなんて思えない。生き返らせてもらえたとしてそれに甘える気はないし、俺はなるべく死なずに生きて行こうとそう思っているのである。




「フォンセーラのことはおそらく母さんは生き返らせないと思うから、死なないでほしい」

「もちろん。まぁ、此処で死んだとしても私は後悔しないわ」


 ……フォンセーラは本当にここで亡くなることになっても、全く気にしないのだろうなというのが分かる。

 俺は母さんの信者たちについて詳しく知っているわけではないけれど、そういう部分は母さんの信者らしい部分なんだと思う。


 ぶれないというか、思い切りがいいというか……。

 母さんは父さん第一で、それ以外はどうでもいいと思っていて。

 母さんの信者というのは、基本的に母さん第一で。

 多分、自分の母さんへの信仰心を示すためなら命を惜しくないとさえ思っている。それこそ母さんが信者達を顧みないとしても、どうでもいいと思っていたと知ってもだ。


 俺はフォンセーラと話せなくなるのも、一緒に過ごせなくなるのも嫌だなと思うぐらいにはフォンセーラのことは大切には思っている。

 だから最悪の場合は俺がフォンセーラを庇おうとは思う。だって俺に何かあった場合は母さんがなんとかしてくれるしな。


 多分、俺がそんなことを言ったらフォンセーラはそんなことしなくていいと言いそうだけど。




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