闇の女神に纏わる遺跡 ②
ダークエルフと呼ばれる種族は、エルフ同様魔法に長けている。ただ得意属性などはエルフとは異なるらしい。
エルフとダークエルフは似て非なるものという認識らしい。
エルフは光の存在というか、どちらかというと伯母さんと親しくしているような種族のようだ。これまでの『魔王』との戦いの歴史の中で、『勇者』の味方としてよくいるらしい。あとは『魔王』を倒すための旅の途中に、エルフの集落に寄ったりとか。
逆にダークエルフはどちらかというと悪側につくこともあるらしい。過去にそういう悪い意味で名が知れた存在の傍にダークエルフの姿があったことも迫害される一因だったようだ。
ほとんど集落から出てこないというのに、この世界で有名なのが悪名高いダークエルフだった。そういう状況だと種族事そういう存在だと思われてもおかしくない。その状況をどうにかしたのに母さんが関わっているらしいのだ。
「我らはノースティア様に感謝している。かの方がいつの日か我らの力を望んだ時は、いつでもこの身を捧げるつもりである」
興味本位で店主に母さんのことを聞いたら、そんな重い感情を聞かされた。なんというか、母さんの信者って軽い信仰の人、あんまりいなくない? なんで揃いも揃って皆、こんなに重たいのだろう……。
人数が少ない分、そういう感じなのかな。母さんは信者に何かを求めたりとかしないだろうな。なんでも自分の力で解決するような人だから。
店主の男性は俺とフォンセーラが母さんの信者だと聞いて気をよくしていた。
やっぱり俺が母さんの息子だって知られたら色々と面倒そうだなと思う。それにしてもこうやって母さんの信者と遭遇して思うのは、俺のことを知られたのがフォンセーラで良かったなと思う。
なんていうか人によっては俺の意思とか関係なしに暴走するような信者もいると思うのだ。母さんのためだなんて、勝手に口にして、そうあるのが正しいと思い込んで――俺のことを持ちあげようとする人だっているかもしれないのだ。
基本的には母さんの言葉に彼らが絶対服従とはいえ、結局神である母さんが直接話しかけるようなことなどないのだから……、母さんを変に誤解する人ってきっといる。
この店主も、母さんのことをどこまでも特別で神聖なものと思っているようだ。あと母さんは父さんに出会う前はキスして人を魅了したりとかしてたらしい。……絶対今ならしないだろうけれど、そういう接触があった方が操りやすいとかだったのかな?
それで操られた人たちは、信者達の中では特別な存在として知られるものらしい。ダークエルフの中にもそういう母さんの信者の中でも特別扱いされている人がいるんだとか。……母さんは覚えてないだろうけどな。
「『ノースシィーダ』に潜るのならば、あの遺跡の情報も教えてやろう」
「潜ったことあるんですか?」
「ノースティア様の信者であるならば、潜るのは当然である。もし遺跡の謎を解き明かしたのならばノースティア様の麗しい声を聴くことが出来ると言われているのだ」
……色々と突っ込みどころは多いが、とりあえず一つ思ったのはそんなものを解き明かした所で母さんはきっと何も言わない。
俺は神様というものがどういう行いをするものなのかとかは知らない。多分、神様によっては信者を大事にして、信者に声をかけたりするんだろう。でも母さんはそういう神様ではない。
「それで声が聞けなかったらどうするんですか?」
「その時は我らの信仰心が足りなかったというそれだけの話である」
「そうですか……。ちなみにどのくらい危険ですか?」
「それも分かっていないのか? 気を抜くと初心者は死ぬこと間違いなしだぞ。あそこにいる住まっている魔物は恐ろしいものばかりである。それにノースティア様への信仰心が足りないと罰を受けたりもする」
……なんだろう、ただの自然物ってわけじゃなくて誰かが実は管理とかしている系の遺跡っぽい? だってただの遺跡なら、母さんへの信仰心が足りないと何かがあるなんてないだろうし。それとも何かシステム的なものがあるんだろうか? うーん、遺跡に対する謎が深まるばかりだ。
それにしても遺跡の中に魔物が結構住んでいるっぽい?
罠とかもあるらしいし、なんだかゲームとかで見るダンジョンっぽいもの?
そう考えるとちょっとワクワクしてくる。
外でもない母さんに纏わるダンジョンってだけでなんだか面白いし。
ちなみに中は、見た目よりも大きいらしい。表面上の見た目も既に大きいのにもっと中身が広いってどういうことなんだろうか。ザ・ファンタジーって感じはする。
その後、店主に沢山遺跡の話を聞いたのだけど、うん、事前情報より中々やばそうな遺跡だった。まぁ、俺はクラとフォンセーラと一緒だから特に問題はないだろうけれど……、それに俺が母さんの関連する遺跡で死ぬなんてことがあったら母さんが黙ってないし。
でも普通の人たちが入るのは本当に大変だろうなとは思った。