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遺跡へ向かう道中 ⑥

 伯母さんと会話をした後、また俺達は遺跡へと向かうことにする。

 母さんに纏わる遺跡に向かうまでの間、特に他に何かがあったわけではない。俺達はただ進んでいった。



 魔物や盗賊などと遭遇したら対応をする。そして神に纏わる何かを見かけたら、そこに寄ったりはしている。




「なんか乃愛の遺跡が近いからもあるだろうけれど、神力を感じる場所がそれなりに多いね」



 クラはそんなことを言っている。



 それにしてもその遺跡ってどんなふうに母さんと関わりがあるんだろう?

 母さんの名が関連している場所で、母さんは何をしたんだろう?

 実際にこの世界に伝わっていることがどれだけ真実が含んでいるかは分からない。だから、実際に情報を集めた後に本当にあっているか、母さんに確認しようかなと思う。





「母さんの遺跡ってどんなところだろうなー。クラ」

「乃愛の遺跡みたいな名がついていると博人に纏わる物が沢山ありそうだなーって想像するけれど、この世界に居る時は乃愛は博人に会ってないんだよね?」



 クラは俺の肩に乗ったままそんなことを言う。



 確かに母さんに纏わる遺跡だと言われると、真っ先に思い浮かぶのは父さんに関わることなんだよな。

 父さんは嫌がりそうだけど、父さんの写真などを集めた資料館のようなものなどとか意気揚々と作りそうだし。

 父さんは写真を撮ることが好きで、母さんは写真を撮られるのも父さんの写真を撮るのも好きだから。



 そういえばこの世界って写真とかの文化はないのかな。異世界から文化を持ち込むとかって許可されているようなものだろうか? 母さんだったら幾らでも何でも持ち込めそうだけど。




「うん。母さんが父さんに出会う前に過ごしていた軌跡がこの世界には沢山あるんだよ。正直、俺は父さんと出会う前の母さんなんて想像もできないけれど」



 俺が知っている母さんは、当たり前だけど父さんと出会ってからの母さんなのだ。父さんに出会わずに生きている母さんなんて想像が出来ない。でも確かに、母さんはこの世界でずっと生きていたんだよな。それこそ、神である母さんにとっては父さんに出会ってからの方が短いだろう。

 



 それでも母さんにとってはきっと父さんと出会ってからの日々の方が大事だと思う。うん。それで父さんを連れて帰ったのだから、きっとこの世界で母さんと父さんは沢山色々起こすんじゃないかなとは思う。




「僕も想像できないなー。乃愛って博人のことが大好きだし、寧ろ他の生き物にたいしては博人と関りあるか、それ以外かしか思ってないじゃん」

「うん。まぁ、それはそう。多分母さんにとってどうでもいい人と、その辺の虫も同等の命だと思う」


 母さんは極端である。基本的に父さん以外はどうでもいいと思っている。


 父さん。

 父さんに関わるもの。

 それ以外。


 母さんの中での分類はきっとそれだけで、そういうのを知っているからこそ本当に父さんと出会う前の母さんって分からない……。




 この世界で仮に父さんを馬鹿にする者や、排除しようとする者が居たら……きっと母さんは大暴れするだろうなと思う。それこそどれだけ父さんが嫌な目にあったか次第では、世界滅亡……とまではいかなくても、国が一つ亡ぶぐらいはあるのではないか。

 そういう物騒な噂が広まるよりも、そうだな、母さんと父さんが仲が良いとかそういう平和的なことで有名になっている方がまだいいな。

 父さんは目立つことを嫌がるから、そもそもそういう風に何か起こしたりしないかもしれないけれど。






「乃愛って力凄いからね。ぶちって潰すみたいに殺せそうだし」

「うん。多分、そう」


 どんな人も、魔物も――全て、母さんはどうすることだって出来る。

 


 母さんの遺跡に辿り着くまでの間、ずっと母さんと父さんのことをクラやフォンセーラと話していた。正直言って、両親の話は尽きない。今、どんなふうに過ごしているだろうかということやこの世界での母さんのこと……そうやって話せるのって俺が両親のことを慕っているからだ。

 そもそも俺が家族のことを好きじゃなければ、こうやって異世界に来ようと思わなかったからなぁ……。



 遺跡に向かうまでの間に、この世界の母さんのことをフォンセーラや道行く人たちに聞いた。その噂の中の母さんは、俺の知る母さんと重なるようで重ならない。父さんに出会う前の母さんは、本当に制御の効かない絶対的な力を持つ者みたいな認識をされている。

 ひとたび、その闇の神の不興を買えば大変な目に合うだろうということを皆が知っている。なんというか、孤高な雰囲気。

 周りに人を寄せ付けず、自分から誰かに近づくことはあまりなく、興味を抱いても……すぐに飽きてしまうなんて言われている。



 父さんの名をあれだけ愛おし気に呼んで、構ってほしそうにしていて、父さんに飽きる様子が全く想像もできない。


 この世界の人たちが、父さんのことを知ったらどうなるんだろう? ってそれも思った。







「ここが、母さんの遺跡か……!」



 ――そしてようやくたどり着いた母さんに纏わる遺跡は、驚くべき大きさだった。



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