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遺跡へ向かう道中 ④

6/22 二話目





「咲人、クラネット。ノースティアの夫とはどういう人ですか?」


 伯母さんは興味深そうにそんなことを問いかける。


 あれかな。母さんは父さんと二人っきりを満喫中で、誰にも邪魔されないようにきっとしているはずだから……。うん、多分、伯母さんにも自分たちの様子が見えないようにとかしてそう。

 おそらく神様と呼ばれる存在だから、人がどうやって生きているかぐらいのぞき見できそうだし。そういうのを全部はねのけて二人っきりを楽しんでそうだなぁ……。



「父さんは……凪とか、どっしりと構えた大木みたいな人だとは思います」


 海や湖で風の影響を受けずに、波立たない様子の凪のように。

 例えば台風が起きたとしても、倒れることなく地面に根を張る大木のように。


 何があっても動じないというか、ブレない感じがする。

 それは異世界にやってきてから、より一層感じる。というか、普通なら異世界のお揃い神様で、常識改変とかわけわからないようなことをする存在を”ただの女の子”として扱うなど出来ないはずだし。


 うん、俺は少なくとも同じ状況になったらそんなこと出来ない。




「博人は凄いと思うよ。僕、神獣になってから乃愛が凄い力を持つなぁって改めて実感出来るようになったけれど、博人はそういうのも気にせずに乃愛と一緒にいるもん」


 クラは神獣化する前はきっちりと母さんの力というものを感じ取っていたわけではないらしい。というか、長い間、薄井家で飼われていた猫だからこそ今を受け入れているのであって、クラだっていきなり知らない人から神獣化とか言われても頷かなかっただろう。


 ……俺とクラは母さんを知っていて、母さんを信用しているからこうして異世界に来たのだ。やっぱりいきなり母さんのことを受け入れた父さんっておかしいよなと思った。


 


「なるほど? 咲人とクラネットの私に対する態度が変なのはそういう身内がいるからですか。こういう態度をされるのは珍しいので新鮮です。それにしてもノースティアの夫は私の義理の弟にあたるので会ってみたいのですが……、ノースティアには拒絶されています。それに華乃と志乃にも邪魔をすると怒られると言われているのです。いつになったら会えるのでしょうか?」



 伯母さん、凄く父さんに興味津々のようだ。

 母さんにとって父さんの存在は絶対的で、他の人にああいう態度をしているのは見たことがない。だから多分、この異世界でも母さんにとって父さんのような存在っていなかったのだろうなと思う。


 ……父さんが傍にいない母さん。うん、なんか何にも興味なさそうに制御が効かない暴走機関かなにかを想像してしまう。そもそも過去の話を聞いた時も、人で遊んだりしていたっていってたし、おそらく異世界でも人で遊んだり凄くしてたんだろうな……。





「母さんが父さんとの二人っきりに満足するまでは会ってくれないかと」

「それいつになるんですか?」

「分からないです。異世界に来て、俺達子供も手を離れて、本当に二人っきりになれて多分はしゃいでいると思うので……」


 うん。少なくとも華乃姉と志乃姉が産まれてからは二人っきりではなかっただろうし……。まぁ、二人は半神的な存在って聞いているから手はかからなかったかもだけど。俺はそういう神の感覚なんて分からないから、手はかかっただろう。

 ……下手したら数十年から百年とか二人っきりを満喫したがったりしそう。


 


「なるほど……。早く義弟に挨拶をするのと、記憶改変を解いてほしいのですが」



 伯母さんも自分に記憶改変がかけられたままというのは嫌らしい。というか、伯母さんにそういうものをかけられる存在って、母さんとか一部だろうしなぁ。

 本当に母さんって本人が気づかないうちにそういう改変をさらっとやったりするから、凄まじい力だと思う。




「それにしても……咲人はノースティアには似ていませんね。華乃と志乃は似てましたが」

「俺は父さん似なので」

「ノースティアは見た目の美しさで伴侶を選んではいないのですね。私の好みはもっと美しい異性ですが」

 

 伯母さんは面食いのようで、そんなことを言いながらまじまじと俺を見ている。


 ……そういえば噂では伯母さんって英雄と恋仲になっていたりする感じなんだっけ。神だからこそ、そういう風に恋愛に奔放でも許されているけれど、そうじゃなければ白い目で見られそうだと思う。まぁ、俺には関係ないけど。





「僕は咲人の顔も、博人の顔も好きだよ。一緒にいると落ち着くもん」


 俺が好みじゃないと言われたら、クラがそう慰めるようにそういう。別にショックは受けていないのだけど。ただクラの気遣いは嬉しいので頭を撫でる。


 俺がクラの頭を撫でていると、伯母さんも撫でようとする。だけど、クラに拒否されていた。



「な、なぜ、拒否するのですか!!」


 伯母さんは本気でショックを受けた顔をしていた。こんな風に拒絶されることが中々ないのかもしれない。



「撫でられたくないもん」

「すみません。伯母さん。クラは家族にしか撫でられたがらなくて……」



 俺がそう言うと、「私はノースティアの姉なのに!!」と家族扱いされていないことに益々ショックを受けていた。




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― 新着の感想 ―
[一言] 恋愛脳じゃない姉上がかなりまともに見える
[一言] イミテアおばさんなんか前作に比べてマトモになった感じに見えますねぇ。 あっちは勇者のせいでだめに見えただけかもですが
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