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遺跡へ向かう道中 ②

 母さんの遺跡へ向かう中で、母さんを信者も当然見かけるがイミテア様の信者も当然見かける。

 というか、イミテア様の信者の数の方が圧倒的に多いので、そこら中にいるのだ。


 幸いなことにこのあたりにいるイミテア様の信者は、何もしていない母さんの信者を静粛しようとは思っていないようだ。まぁ、全員が全員、フォンセーラを襲っていたような過激派だったら世界が大混乱していそうだしな。



 ただ流石に、イミテア様の信者の前で母さんの信者だと大々的に言うわけにはいかないけれど。







「サクト。此処に大きな跡が残っているでしょう? これはイミテア様が過去に遣いを寄越した場所と言われているそうよ」

「へぇー」



 遺跡へと向かう道中は、母さんの痕跡だけではなく他の神様の痕跡も見かけることがある。というかこの世界は、地球とは違って神の存在が本当に身近である。




「このあたり、神力がまだ漂っているね」

「神力?」

「うん。神の力が残っているよ。最近もまた神に関わる者がやってきたりしているんじゃないかな?」



 クラはその痕跡――何かの巨大な足跡のようなものを見ながら神力が残っているなどと言っていた。

 母さんの神獣であるクラはそういうものを感じとる能力が優れているのかもしれない。



「サクトもやろうと思えば感じ取れるようになると思うよ?」

「そっか。なら、俺も感じ取れるようになりたいな」



 少なくともそういうものを感じ取れるようになれたら、敵対している者が神に纏わるものかどうかの区別はつきそうだしなと思う。

 

 そういえば今いる、イミテア様の遣いがやってきたと言われているこの場所にはイミテア様の信者が多くみられる。なんていうか地球でいう所謂観光スポットか何かのようになっているのかもしれない。

 何かしら特別な言い伝えがある場所だと、皆来たがるものだろうしな。



 イミテア様に纏わる神聖な場所……そういう場所に関してはこの世界では周知されているようだ。それはイミテア様が世界に歓迎され、多くの信者を持つ女神であるからとは思う。

 逆に母さんは周りから忌避される女神で、一般的に見れば母さんを信仰している者は少な目だ。

 だから逆に母さんに纏わるものだと周りに広められることなく、一部の人たちだけが知っている場所もあるのではないかと思う。






「クラは母さんの神力の残っている場所もすぐに分かる? もし見つけたら教えて」

「うん」


 俺の言葉にクラは頷く。




 地球に居た頃、母さんが異世界の神だなんて知りもしなかった俺は、母さんのことを知っているつもりになっていた。当たり前のように改変されていた思い出話を信じ切っていた。まぁ、地球に居た頃の俺が異世界の話などを聞いても冗談だと思われただろうけれど。


 



 こうして異世界にやってきて、今まで知らなかった母さんの痕跡を知れることが俺にとっては楽しい。




「それにしても、神力って最近来たとか以外だと残らないもの?」

「どれだけ力を使ったかによると思うよ! よっぽど強い力を使ったものだと、多分ずっと残るんじゃないかな?」



 クラはそう言いながら、楽しそうにしている。

 クラも神獣になったばかりだからこそ、この世界については新米ものというか、まだまだ分からないことばかりだろう。俺もクラも母さんから知識を与えられているけれど本当に知らないことばかりだから。





 一応、イミテア様への挨拶も込めてその神聖な場所で軽く祈っておいた。




 これからこの世界で頑張るのでよろしくお願いしますというのを、伝えておく。

 そうしたら変な感覚が起きた。


 何かの力が、俺に向かって語り掛けているような何か。








「サクト、きょろきょろしてどうしたの?」

「……フォンセーラは何か感じないか?」

「感じないわね。サクトだけ感じる何かでもあるのかしら?」



 フォンセーラは全く、その違和感を感じ取っていなかったようだ。俺だけがそれを感じ取っているのは何か理由があるのだろうかと思っていると、クラが声をかける。




「乃愛の姉からの干渉かも。咲人、何か挨拶でもした?」

「うん。よろしくお願いしますって挨拶しといた」

「だからかも。乃愛が多分、他の神が咲人に何かしないようにはしているから、何か感じる程度なのかなって」

「あー、なるほど?」

「咲人自身が乃愛の姉の干渉を受けいれたら、何か聞けるかも」



 イミテア様は、俺が母さんの息子だからこそ気にかけてくれているのかなとは思う。母さんの姉とはいえ、異世界で最も有名で信者の多い神様。

 ……どういう人なんだろう? なんというか、会ったこともない伯母とこの年になってから初めて交流を持つことになるとは思っていなかったなぁ。



 そういうことを考えながら、クラに言われるがままに何かの力を受け入れることにする。







『聞こえるかしら? 私は女神イミテアよ』





 ――そして聞こえてきたのは、優し気な女性の声だった。




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