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使い魔のお店と、旅立ちと ③

 使い魔用の食事は、様々なものがある。魔物の生肉だったり、地球でいうドックフード的なものだったり、あとは人が食べる料理と同じようなものだったり――。

 

 クラは神獣として生まれ変わったからというのもあり、基本的には食事をしばらくとらなくてもなんとかなるらしい。ただ一緒に食べたいからという理由で人の料理と変わらないものをクラは頼んでいた。



 俺はお肉と山菜の炒め物を頼んだ。ご飯が恋しくなるけれど、白米は残念ながらない。日本人として白米食べたいなぁ……とそんな気分になってしまう。あと味噌汁とかも飲みたい。

 母さんは基本はパンが主食のこの世界から地球に来たわけだけど、食文化の違いとかなかったのかな。あ、でもあれか。母さんは神様だから食事とかいらないとかそういう系なのだろうか。まぁ、母さんの場合は食事とかにこだわりなさそうだけど。基本的に地球での食事も父さんの好みのものをいつも作りたがっていたしなぁ……。



「サクト、手が止まっているけれど、どうかしたの?」

「ちょっと母さんの料理を思い出していたんだ」

「お母さんの?」

「ああ。しばらくは食べられないだろうから」


 母さんは父さんと二人きりを満喫していて、父さんと共に過ごすはずだ。だから母さんの料理はしばらく食べられないだろう。……父さん経由で頼めば何かしら作ってくれるかなとは思うけれど、今は邪魔するつもりがない。

 母さんの機嫌は損ねたくはないものだ。




「しばらくは食べられないって……家族は離れたところにいるの?」

「そうだな。しばらくは会えないだろうなぁ」

「……そっかぁ。それは寂しいことだね」



 寂しいことだなどと言われたけれど、不思議とそういう寂しさはない。そもそも家族会議が確定で開催されることが決まっているからなぁと思う。異世界にやってくることになって家族と全て関係を絶たなければならないみたいな状況だったらもっと寂しさで一杯になっていたかも。

 俺の場合は多分、中々特殊な異世界転移だららなぁ……。



 ギドは俺が家族と離れ離れになっていて寂しい思いをしていると誤解していそうだが、まぁ、そのまま話を続けた。家族会議とかのことは他人に言えるようなものではないし。

 普通の人だと脳内で行う話し合いなんて基本は出来ないだろうし。




 食事をとりながらギドと会話を交わす中で、他の席に座っているお客さんにも声をかけられたりする。クラが可愛いから、興味津々な様子だ。こういうお店に来るお客さんは当然だが、生き物が好きな人が多い。他人の使い魔を眺めにここに来る人も多いようである。

 使い魔マニアというか、使い魔の絵を描いてまとめている人もいた。クラの絵を描きたがっていたので、クラに許可を取ってから描いてもらった。二枚描いてもらって、一枚はこちらで受け取った。



 報酬は要らないと言われたけれど、ただでやってもらうのはどうかと思っているのでその人が食べていた食事代は支払っておいた。

 それにしても絵が上手い人って凄いなと思う。地球でもイラストや漫画を描くのが趣味だという友人は居た。そういう人の手で生み出される作品を見てすごいな思っていたものだ。

 だって俺はそういう才能がなかった。母さんはなんでもそつなくこなせるタイプだったから、絵も上手だったけれど。





 クラに友達が出来たりするかなと少し思ったが、やっぱりクラに何か感じ取っている使い魔ばかりである。そういう察しがいい使い魔はそんな感じだし、無邪気で何も考えてない系の使い魔に関してはクラと気が合わなさそうではあった。

 クラは特に店内の使い魔たちとそもそも友達になる気はなさそうなので、まぁ、いいかと思うことにする。


 俺は色んな使い魔と交流が出来て楽しかったしな。




 そのうちこの街は去る予定なので、滞在期間中に来れるだけ来ようとは思っている。オーナーや仲良くなった人たちには「しばらくこの街に滞在していればいいのに」と言われたが、折角異世界にやってきてやりたいことが様々あるので滞在し続ける気はない。


 ああ、でも異世界を楽しみつくしたらどこかに住まうこともあるかもしれないけれど。そういうのはまだまだ先のことだからなぁ。



 将来、俺はどうなっているんだろう。

 異世界でどんなふうに生きていて、その時にどういう人が傍にいるのか。うん、全然想像もつかないけれど、楽しい未来になっているといいなぁと思う。






「街の外れに大型の使い魔を預けられる施設があるんだ。たまにそこに行くけれど、楽しいよ。サクトは行ったことがある?」

「いや、ないなぁ」

「じゃあ、一緒に行こうよ。小型の使い魔も可愛いけれど、大型の使い魔も素敵だよ」



 このお店の常連だという女性にそう誘われる。初めてこの店を訪れたギドや他の常連客も一緒にこの後向かってみることにした。




『どんなに大きな使い魔よりも、僕の方が凄いよ!』



 などと、道中でクラから思念を飛ばされたので、頭を撫でておいた。





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