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使い魔のお店と、旅立ちと ②

「はい。俺の家族のクラです」


 俺がそう言って笑えば、オーナーも笑う。


 そしてクラのことを撫でようとして、右足で思いっきり弾かれていた。

 怪我をさせないように爪は立てていないようだが、クラは撫でられることを嫌がっている様子である。



「すみません。クラは家族以外に撫でられるのを嫌がるんです」

「そうなのか……。それは残念だ。しかし爪を立てないようにしてくれているとは、優しい子だ」


 撫でることを拒否されてもオーナーは特に気分を害した様子はないようだった。寧ろ、クラのことをいい子だと言って笑ったままである。

 よっぽど使い魔と呼ばれる存在が好きで、どんな態度をされても気にならないのだろう。




 オーナーに案内されるまま、席へとつく。

 こういうお店だと相席にするのが当たり前のようで、俺の前には同年代の茶髪の男の子がいる。その子もこういうお店に来るのが慣れていないのか落ち着かない様子である。





「こんにちは」

「こ、こんにちは」


 俺が声をかけると、緊張した様子が見られる。



 その肩には鳥――鷲のような見た目の小型の魔物がいる。獰猛な目つきをしているが、その男の肩で大人しくしている。




「俺はサクトと言います。こっちはクラネット。君は?」

「ぼ、僕はギド! こ、こっちはシーフェ。よ、よよろしく」


 なぜだか分からないが、とても緊張している様子だった。

 ……なんだか俺が虐めているみたいに見えるので、落ち着いてほしいなと思う。



「初めて、この店に来たのか?」

「そうです……。さ、最近、この子と契約を交わしたので、折角なので……」



 ギドはどうやら最近使い魔と契約を結んだばかりらしい。使い魔って通常の手段だとどんなふうに縁を結ぶんだろう? それぞれにドラマのようなものがあるんだろうなと思いながら聞いてみる。




「ぼ、僕は商会からこの子を買いました」


 俺の期待したようなドラマチックなものではなかった。でもそうか……、使い魔が欲しいとなると自分で捕まえに行くよりも買う方が多いのかもしれない。

 個人的には何かしらの事情があって、特別な出会いをしてと言う方が好きだけど購入する出会いもあるだろう。




「そうなんだ。俺はクラとは昔からの仲なんだ。それで気づいたら一緒に居る感じ」


 地球からやってきて、クラが神獣化してなどという事情は当語ることは出来ないのでそういってぼかす。

 俺が産まれた頃から薄井家で飼われていて、ずっと一緒に居たのは確かだからな。それにしても闇の女神が母親で、ペットが神獣化して、俺も神の血を引いていて……って改めて自分自身のことを考えると色々とおかしいな。普通ではなさすぎて、簡単に人には語れない。




「いいなぁ。そういうのだと絆が凄そう。僕はまだこのことそこまで仲良くなれていなくて……」

「そうなのか? 大人しくしているし、仲良く出来てそうに見えるけれど……」

「それは首輪で制御しているからだよ。まだまだこの子は僕に心を許してくれていないんだ」



 俺は母さんの手によって使い魔のような存在としてクラを渡されたわけだけど、普通の使い魔だと首輪などで制御するもののようだ。

 だからまだ心を通わせることは出来ていないのだとか。でもよく考えたら俺とクラは意思疎通ができるけれど、目の前の使い魔は言葉を喋れないだろうし中々心を通わせるのが難しいのも当然なのかもしれない。





「それに……どうしてだか、さっきから大人しいんだ。直前まで鳴いていたのに……」



 急に大人しくなったと聞いて心配になっていれば、小さな声で「僕のせいかも」とクラに呟かれる。


 詳しくどうしてなのかは分からないけれど、神獣であるクラのことを何かしら感じ取っているのだろうか? ただ他のお客さんの連れている使い魔はこの鳥の魔物ほどおとなしくはしていないので、そういうものが感じ取れるかどうかは個体差があるのかもしれない。

 ……クラの存在を感じて萎縮しているのだとしたらちょっと悪いことをしてしまったなと思う。





 でもまぁ、そのあたりは仕方がない。



 ひとまず俺は食事を頼むことにした。このお店では人用と使い魔用の食事を両方用意してくれるのである。地球でいう猫カフェとか犬カフェとかみたいな感じである。




「クラ、何食べたい?」



 俺がメニューを見せながら言えば、クラはその右足で指をさす。

 文字とイラストの描かれたメニューを見て、食べたいものが見つかったらしい。




「メニューを理解しているんだね。頭がいい」


 ギドにそう言われて、クラは得意げに当たり前だろうとでもいう風に「にゃあん」と鳴いた。

 そんなクラの頭を撫でる。クラはまた気持ちよさそうに鳴いた。



 ギドがクラのことを撫でたそうにしていたけれど、「クラは家族以外に撫でられるのを嫌がるんだ」と言うと諦めたようである。流石にクラを撫でさせないのに、シーフェに触りたいとは言いだしづらいので、俺も撫でてみたかったけど我慢した。



 それからしばらく待っていると、俺達の元へと食事が届いた。




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