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使い魔のお店と、旅立ちと ①




「クラ、今日は一緒に出掛けよう」

「前に言っていた使い魔のお店?」

「うん。クラも一緒に行けるから、行こう。クラにも友達出来るかもよ」



 宿の部屋。

 俺はベッドで丸まっているクラに声をかける。

 魔物を倒して、街は平和になっている。落ち着いた雰囲気を取り戻しているからこそ、魔物が現れる前に見つけた使い魔も一緒に入れるお店に向かうことにする。


 友達が出来るかもと口にしたら、クラには何とも言えない顔をされる。



「僕、友達なんていらないけど」

「そっか。でも俺が一緒に行きたいから、一緒に行ってくれる?」

「うん。いいよ」



 クラはなんだかんだ家族には甘いというか、本当に気を許している。俺が生まれる前から薄井家のペットであったクラにとってみれば、俺なんて弟か何かのような認識なのだろうなとは思う。

 


 それにしても他の人の連れている使い魔ってどんな感じなんだろう? クラみたいに喋れるような個体とかもいるのだろうか?

 クラは人語を喋ることが出来るからこうやって意思疎通が出来るわけだけど、喋れない使い魔だとどうやって意思疎通しているんだろう?



「使い魔って喋れる個体もいるのかな?」

「さぁ? 乃愛がくれた知識だとその辺ないから分からない。でもこの世界で名が知られている危険で特別な魔物だと喋れるっぽい」

「そっか。それならクラは喋れないふりをしていた方がいいかもな」

「それ必要なの?」

「ああ。だって、クラが特別であればあるほど狙われる可能性が高いからな」



 俺がそう言ったらクラは頷いてくれる。



 そもそもクラは母さんの――この世界で有名な女神の神獣なのだ。そんな特別な猫だと知られたら、狙う人は狙うかもしれない。正直言って母さんのように敵対したら大変な存在の神獣に手を出そうとする人の気は知れないけれど、そういう人はいないわけではないからなぁ。

 神獣だと知られなかったとしても、クラがどれだけの力を持っているか知ったら欲しがる人もいるかもしれないし。




 そういうわけでクラを肩に乗せて外に出る。クラを乗せて街を歩いていると、いつもよりも視線を向けられる。子供達がクラを撫でたそうにしていたりするけれど、声はかけない。だってクラは家族以外に撫でられるのを嫌がっているから。クラの事を撫でたいといって声をかけられても基本は断っている。

 クラの意思が大事だからなぁ。



 

 そのまま使い魔のお店へと直行する。

 街を歩いていると、例の魔物が倒されたことで以前のように活気にあふれていて安心する。とはいえ、魔物の被害で亡くなってしまった人もいるからその遺族達は立ち直るのには時間がかかりそうだが。

 こうやって元のように戻りつつある街を見ると、あの魔物を倒せてよかったとほっとした。

 

 これからもそういう危険な魔物が居たらなるべく倒そうとは思うけれど……何から何まで自分の手で解決しようとするとキャパオーバーになってしまう可能性もある。何事にも選択はきっと大事で、何を取って何を捨てるか――そのあたりは考えながら決めていかないといけない。

 俺は母さんの息子で、力はある。とはいえ全てをどうにか出来るような万能であるとは思わない。


 多分、これから異世界を歩いて回れば色んな事態に遭遇すると思う。俺が母さんの息子だからこそ起こるような危険なことだってきっとあるかもしれない。



 ――それが起きた時に、どう行動するかは考えておかないと。





 そんなことを考えていると、直接脳内に一つの声が響く。




『咲人、どうしたの? 心配事?』



 直接クラが俺の脳内に声を届けているようだ。

 急に聞こえてきた声にびっくりした。




「大丈夫だよ」


 俺の方からクラに声を届ける方法はよく分からないので、道行く人たちに聞こえないように小さな声でクラへと答える。


 そういう何か起こった時のことは、最悪、起きてから考えればいいとひとまず頭の隅っこに追いやっておく。





 今はそういうことを考えるではなく、こうして街に平穏が訪れたことを喜んでおくべきだろう。そう結論付けて俺はそのまま周りを見渡しながら進んだ。




 ――そして前に見つけた使い魔と一緒に入れるお店の前へとたどり着く。




 以前訪れた時と同様に、相変わらずにぎわっている。相変わらず色んな魔物の姿が外からも見えて、なんだか楽しい気持ちになった。これだけの種類の魔物が使い魔として、人と交流を結んでいるってそれだけでも楽しいよな。



 こういうお店に入れないような大きな魔物の使い魔ももっと見てみたいなぁなどとも思った。





 そんなことを考えながら、中へと入ることにする。店内は前に見させてもらったけれど、クラを連れてくるのは初めてなのでなんだかとても新鮮な気分である。





「来てくれたのか。その子が君の使い魔かい?」



 そしてオーナーは俺の顔を覚えていてくれていたらしい。俺に向かって朗らかな笑みを浮かべ、次にクラへと視線を向ける。使い魔というものが好きなのだろう。クラを見てにこにこしていた。




 

 



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