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街を探して歩いていると盗賊に遭遇した ②

 街を探しながら歩き進める。

 母さんが俺達を飛ばした場所は結構人気がない場所だったみたいで、中々街は見えてこない。

 とはいっても流石に幾ら歩いても街に辿り着かないなんて場所には、母さんも飛ばさないと思っているのでしばらく歩けばつくとは思う。




「フォンセーラ、ごめん。母さんが結構不便な場所に俺達を飛ばしたみたいで……」

「何も謝る必要はないわ。それにノースティア様だって何か意味があって此処に飛ばしたと思うもの」

「いや、母さんは絶対にそんなこと深く考えてない……」



 フォンセーラは母さんがそれだけ深く考えているのではないかと思っているようだが、絶対にそんなことはない。


 母さんはなんというかとても分かりやすい。父さん第一で、自分がやりたいようにしか行動しない。

 ……父さんに出会う前の母さんってもっと自由というか、制御が効かない感じだったんだろうな。今は父さんっていう一番が居るからそれに準じた動きしかしないけれど……。

 母さんは地球で父さんと出会ってからずっと一緒に居るということは、この世界に居た頃の母さんってどれだけ凄まじい行動を起こしていたのだろうか。周りのことなんて全く考えなくて、どれだけ巻き込まれる人間が居ようとも気にしない。暴走機関みたいなそんな感じか?


 ……そういう神様だったからこそ、色んな呼び方がされていたんだろうな。



「この世界に伝えられている母さんがどういう風か俺は知らないけれど、母さんって先を見据えて行動するタイプでもないんだよ。父さんのことなら先の事は考えているかもしれないけれど……、それ以外のことなんて母さんにとっては些細なことだろうし」


 うん。本当に母さん以外は虫けらか何かみたいな認識かもしれない。俺たち子供はかろうじてそれ以上の認識かもしれないけれど。




「神託の際にノースティア様は旦那様のことを語っていたわ。その際に他のことを話すように高揚した声だった気がするわ。サクトの話を聞く限り、その方も特別な方だというのは分かるけれど……」

「いや、父さんはどちらかと言えば普通というか。でもまぁ、特別と言えば特別なのかな。今、父さんを完全にこの世界の住民にするために母さんは準備に励んでいるんだよ。だからこれから父さんは色んな意味で特別にはなりそうだけど……でも少なくとも母さんが好きになった父さんは性格はともかくとして普通の人間だよ」


 母さんは父さんの新しい身体を用意すると言っていた。

 その身体を使うというのならば、父さんは人間と言う枠組みから確実に外れる。とはいえ、母さんが好きになった父さんは――特殊な点はあるものの、普通の人間である。




「ノースティア様が普通の人間を好きになるなんて信じられないわ。それにノースティア様のことを受け入れられるその方も……」

「うん。父さんの凄い所は母さんがどういう存在か知っていても、自分を簡単に殺すことが出来るだけの力を持っていると知っていても受け入れたところだと思う」


 異世界の神様。

 それも邪神なんて呼ばれ方をするような物騒な神様。どれだけ見た目がよくても、無邪気でも、そういう存在を受け入れたことは改めてすさまじい。



「本当に凄いわ……。ノースティア様の旦那様についてもまとめて信仰しなければ」

「……父さんは信仰されたら嫌がりそうだけど」

「でもそんな偉大な存在を知ったからには信仰せずにはいられないわ。それに何よりノースティア様が何よりも優先している方ならば私たちにとっても特別な方だもの」



 なんだか……父さんの存在が知られたら父さんの信者ってそれだけ増えるのかもしれない。

 そういう面倒なことも覚悟した上で、父さんはきっとこの世界にやってきて母さんとずっと一緒に居ることを選んだんだよなぁと思うと自分の両親が仲が良くて嬉しい気持ちにはなる。



 父さんの新しい身体が出来て、それで母さんがこの世界で何かしら騒動を起こすなら父さんのことも一気に広まりそうだ。ただ父さんは平穏な日々を愛しているような人だから、その影響で母さんがこの世界に帰ってきたことは周りに知られないかもしれないけれど。



「サクト、止まって」



 会話を交わしながら進んでいると、急にフォンセーラがそう言った。

 俺は言われたとおりに足を止める。




「誰かがいるわ。この数……盗賊かもしれない」


 フォンセーラにそう言われて俺は驚く。盗賊なんてものと遭遇するなんて考えていなかった。

 存在していることは認識していたけれど、実際にこんな風に簡単に対峙するものだとは思っていなかったのだ。






「サクトは人と戦うのは慣れてないのよね? なるべく回避しましょう」

「それが助かるかも……」


 俺が人と戦うことに慣れてないことも把握しているフォンセーラの言葉に、有難く頷く。




 そしてばれないように進んでいたつもりだったのだけど――、



「その女を置いていけば許してやるよ」



 完全に回避することは出来なかった。




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