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街を探して歩いていると盗賊に遭遇した ①



「フォンセーラ、一旦街を目指そう」

「そうね。まずは今、何処にいるかを正しく理解した方がいいわ」



 フォンセーラが俺の言葉に同意してくれたので、俺たちは近くの街を目指して歩くことになった。

 俺が母さんの息子であることはフォンセーラに知られてしまっているので、移動の最中に遭遇した魔物の対応は俺の魔法で行ったりした。


 フォンセーラは俺の魔法を見て驚いていた。なんというか俺の魔力が多いから力任せの魔法になってしまっているようである。





「サクト、流石だわ。それだけの魔力をあなたは保有しているのね。普通なら今まで魔法を使ったこともない存在がこれだけの魔法を使うことなど出来ないもの」

「やっぱり初めて魔法を使うとなると、皆大変なのか?」

「ええ。もちろんよ」

「俺は……母さんが魔力の暴走をしないようにしてくれているから普通に魔法が使えているけれど、なんかそれって他の人からしてみるとずるいのかなぁ……」


 普通のこの世界で初めて魔法を使う人たちは、それだけ苦労を重ねているのだと思う。

 そう考えると俺が母さんの力で暴走せずに魔法を使えているのは当たり前に魔法を使う努力をしている人たちからしてみるとずるいことなのかもしれないななどと思ったりする。



「何もずるくはないわ。あなたはノースティア様の息子なのだから、寧ろもっと特権を謳歌したって誰も文句を言わないわ」


 当たり前みたいにフォンセーラにはそう言われた。


 ああ、でもそれもそうとも言える。だって母さんは神なのだ。人の手の届かない力を持ち合わせた、この世界でも有名な神様。だからその息子というだけで俺が好き勝手しても誰も何の文句も言えないのかもしれない。

 ……とはいえ、それはあくまで母さんの力でしかなく、俺が何か特別とかそういうわけではないと俺は思っている。うん、母さんの威を借りて特権を謳歌するのはなんか違う気がする。



 母さんのそういう制御を借りずに、自分の手で魔法の制御が出来るようになった方が良いとそんな風に思ってならない。いつまでも母さんの力を借りっぱなしなのも情けないしなぁ。




 そういうわけでフォンセーラに色々魔法の制御を習ったりしてみる。

 フォンセーラは俺の事情を把握しているからこそ、特に何も隠さずに済むから楽だ。母さんの信者であるフォンセーラはその信仰心があるから俺にとって不利益なことはしないだろうしな。




 魔法というのはやっぱり難しいものだ。

 俺の魔力が平均よりも多いからこそこれだけ苦労しているのだろうけれど……。それにしてもこれだけの魔力を自由自在に使えるようになったら、俺はどういうことが出来るのだろう?


 空を飛んだりとか、普通ならば行けない場所に行ったりとか――そういうことだって出来るようになるのだろうか? 魔法はありとあらゆることを可能にするようなものに聞こえるけれど、当然出来ることと出来ないことがある。それは母さんの知識もそう言っているし、フォンセーラに聞いたことからも明確なことだ。






「でもサクトはノースティア様の息子だから、人の身では不可能なことだってきっと出来ると思うわ」

「なら、出来るようになりたいな。折角だからなんでも出来るようになった方がきっとこの世界で生きやすいだろうし」

「サクトは異なる世界でこれまで生きてきたのよね? 確か召喚された昔の『勇者』と同じ世界なのよね?」



 『勇者』が地球からこの世界に召喚されたからこそ、地球の情報は少しは残っている。とはいえ、それもこの世界にとっては昔のことだ。



 地球よりもこの世界は時間の進みが速く、父さんたちが高校生だったころにこの世界で生きることになった『勇者』はもうとっくにこの世界では寿命を迎えている。

 というか、父さんと母さんの出会いのきっかけともいえる『勇者』は一度地球に戻った後、また異世界で生きることを選択したらしいからな……。




「そう。この世界とは全然違うよ。母さんも普通の主婦として生きていたし……」

「ノースティア様が普通に生きているというのが想像もできないわ」


 異世界の神様なのに、父さんと一緒に生きていきたいがために平凡な人間を装っていた母さん。きっと誰も母さんが異世界の神様だなんて想像もせずに、普通に接していたと思う。

 ……母さんにとって父さんの傍というのは、本当に神様という地位を投げ捨ててでも居たい場所だったんだろうなと思う。


 それだけ母さんを惚れさせた父さんって、やっぱり俺が思っているよりもずっと凄いんだろうな。

 あれだけの重い気持ちを受け止めて、母さんが異世界の神様だって知った上であれだけ平然としていて……メンタルお化けというか、本当に凄い。







「ノースティア様の話をこうやって聞けるのが嬉しいわ」

「俺は母さんの話をこうやってできるのが嬉しい」



 フォンセーラは母さんの話がきけるのが嬉しいと笑うけれど、俺は母さんの話を出来るのが嬉しかった。



 この世界でも有名な神様である母さんの話題は、中々出しにくいからなぁ……。



 



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