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幕間 女神は愛しい人と共に故郷を歩く ③




「博人ー、ほら、撮って?」



 私、薄井乃愛は博人の方を振り返ってそう告げる。

 私は博人に沢山写真を撮って欲しかった。というか、私だけを見つめて、撮ってほしくて仕方がない。


 博人が私以外を撮るなんて許したくないし。



 博人を独占したいから相変わらず、人気のない場所を二人でぶらぶらしている。私だけと博人が会話を交わしてくれるのっていいよね。

 博人と出会ったのは地球で、博人が郷に入っては郷に従えって言葉を教えてくれて、地球に住まう人としておかしくないようにすべきっていうからずっと我慢していた。

 博人に嫌われることが私にとって一番嫌なことだもん。私の特別である博人が私に構ってくれなくなるなんて耐えられない。


 今、こうして博人のことを独占出来ると、やっぱり他の生命体なんていらないよね? なんて気分になる。

 だってさ、私の博人が何かに興味を持つなんて本当は嫌なんだよ。というか他の存在の名前が出されるだけでも、私の博人なのにって思う。



 ああ、でも博人はもっと他の人達と関わりたがるだろうから、結局それは許容しなければならないのだけれども。



 博人は私の言うことなんて聞かなくてもいいし、私が幾ら何かを言ったとしても無視して神界に行くことだって出来るけれど……私が嫌がっているからって二人っきりでぶらぶらするのを付き合ってくれる。

 出会った時からずっとそう。博人は……私のことを対等に見ているというか、私にちゃんと意見も言うし、私のやりたいこともやらせてくれる。そういう博人だから私は好きなのだ。


 ……博人は私が、神界に行ってもいいよと言い出すのを待っているんだろうなと思う。

 博人は真面目だから、お姉ちゃんとかにも挨拶したいって思っているだろうし。




 でも神界にいったらきっと博人に興味を持つ神は出てくる。私にとっての特別な存在。私が夫にした博人がどんな人なのか気になっている人はいる。それに私のことを無駄に崇拝している連中とかは、私の博人に文句を言うかもしれないのだ。

 私の博人に近づく存在は要らないし、私から博人を奪おうとする存在なんてもっと要らない。




 私はじーっと博人の事を見る。



「どうしたの、乃愛」



 博人の声が優しい。私から見つめられるなんて、その威圧感とか、私への恐怖とかで動けなくなる存在ばかりなのに。私は産まれた時からそうだったから、それが当たり前だった。私の言うことを誰もが聞くのが当然で、気づいたら私に操られているんじゃないかって怯えている神も多くいて、私の行動一つ一つを警戒している存在ばかりだった。

 ――博人は私の性格を知っていて、本質を理解していて……そしてこの世界に戻った本当の私を見ても、どれだけの力を見せても変わらない。





「博人が私以外の生命体に認識されるのが嫌だなって」

「別に認識されたからって何もないけれど」

「それでも嫌だなって。それこそ、全ての生命体を滅ぼしたり、私達だけの世界に行きたいなって思うぐらい」

「それは詰まらないから嫌だよ。駄目だからね、乃愛」

「むー。分かっているよ。でも博人は神界にもいつか行きたいんでしょ。神界に行ったら博人絡まれるよ。そんなの見たら私、相手の神を消滅させたくなっちゃうもん」

「乃愛は何を心配しているの?」



 ほほ笑みながら、そう問いかけられる。

 私がどれだけ過激なことを言っても、博人はいつもこう。博人は私の言葉をただ受け入れて、優しい。心配……うん、そうだね、私は神界に行って嫌だなって思うことがちらほらある。





「博人が他の神に取られちゃうこと? 私は博人だけが大好きだし、博人以外要らないけれど、博人が私じゃない誰かを好きになったら嫌なの。そうなったら博人のことを殺して魂だけ愛でちゃうかも。私の物にならない博人なんて見たくないもん。でもそれで博人と話せなくなるのも嫌だし。このまま博人を独占出来た方がいいのになって」

「乃愛、僕は奥さんが居るのに他に目移りなんてしないよ?」

「うん。知っている。でもずっと一緒に居たらそういうこともあるって他の神が言ってた。博人は神になったから、長く一緒に居て私を嫌っちゃったりしたらやだもん」



 私は基本的にこれまで怖いものなんてなかったし、誰がどうしようとどうでも良かった。でも博人が私のことを嫌ったり、私以外の誰かに恋愛感情を抱いたり、何ていうのは本当に嫌。

 どれだけ長く仲良くしていても、親しい相手が居ても浮気する神も見たことある。それに夫婦だったのに喧嘩してしばらく離れ離れになっていた神とか。この世界に戻ってきて、そういうことを思い起こすと博人がそんなことがあったら私は博人の意思を無視して博人を閉じ込めてしまうかも?


 博人は私の物で、私の博人が誰かの視界に入るのも嫌なのに。私の博人は私だけを見ているのが一番よくて、他の物なんて見るべきじゃないもん。




「乃愛」



 名前を呼ばれたかと思ったら、博人に抱きしめられた!



「大丈夫だよ。僕は乃愛が嫌がることはしないよ。乃愛が笑っている方が僕は好きだし、悲しませることなんてしないって約束するから」

「本当? 嘘ついたら、閉じ込めちゃうよ?」

「うん。それでいいよ。乃愛が少しでも不安に思ったら閉じ込められても構わないし、それはそれで乃愛と隔離生活楽しむだけだし」

「……博人が浮気とかしたら、相手は殺すよ? それで博人から身体没収して、魂だけにしちゃうよ?」

「それは乃愛と話せなくなるから嫌だなぁ。身体没収はまぁ、乃愛がしたいならそれはそれでいいけれど。僕、乃愛との最後の会話が喧嘩別れとか嫌だよ?」

「うん、私も嫌。だから本当に駄目だからね? 博人は私のだから」




 ぎゅーっと博人に抱き着きながら言ったら、相変わらず博人は笑っていた。



 博人は私が本気で告げていることも知っていて、こうして受け入れてくれるの。流石、私の博人。




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― 新着の感想 ―
おぅ、寛容というか何というか、前作からそうだが懐の広さがカンストしてますわ…
さすが、博人…… スゲェや
前作主人公の威厳…
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