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砂漠を歩く ⑫




「……き、貴様は何者なのだ。なぜ、人の身でありながら私にこんな真似が出来るんだ」

「んー、俺は人間だけど?」

「は? そんなわけはないだろう」

「かろうじてって言われたけれど、人間であることには変わりない。あと俺達が此処から去ったからといって、他の人に迷惑かけていいって思わないようにな?」

「……そ、そんなことは思ってない」

「どもっているあたり思っているだろう。いいか? 俺は神界に知り合いが居るから、ちゃんとお前のことを見張っておくように言っておくから」

「は?? やっぱり貴様は人間では――」

「人間だよ。神の血は引いているけれど」



 とりあえずそう答えておく。うん、俺はまだ人間のはず。だから人じゃないみたいに言われても知らない。

 母さんが俺のことをまだ人間だっては言ってたし、それは間違いないはず。



「……神の血を継いでいる人間。いや、しかし人間という枠組みならこんなことが出来るはずがない。ただの半神でこんなことが出来るなんてありえない……!!」

「ブツブツ煩い。とりあえずあんたのことは神様に言っておくから」



 俺はそう口にすると、その神様は黙り込んだ。さて、とりあえずどうするか。母さんに連絡はなし。父さんとイチャイチャしているところを邪魔してしまったら、きっともっと大変なことになってしまう可能性がある。

 母さんを怒らせたくはないので、俺は母さんは呼ばない。かといって姉さん達は神界に訪れてしばらくしか経ってないし。やっぱり伯母さんに頼むのが一番か?




『伯母さん、ごめん。忙しいだろうけれど聞こえます?』



 俺は脳内で伯母さんに話しかける。多分、これで伝わる気がする。俺の方から魔力を伸ばして、伯母さんに話しかける。





『あら、何かしら?』



 少しすると伯母さんからの声が聞こえてきた。





『ちょっと監視してほしい神様居るんですけれど、お願いできます?』

『監視……? まさか、ノースティアの息子であるあなたにちょっかいを出した愚かな神でも居たのですか!? なな、なんて命知らずな!!』

『まぁ、俺が母さんの息子だって知らないからだと思いますよ。あと凄く弱いので、俺に神の血が流れているとか気づいてなかったですし』

『そんな末端の神が私の甥に何を?』

『俺にっていうか、砂漠をぶらぶらしていたら神様に迷惑をかけられている人を見かけたんですよね。それでなんというか、この神様、人族側が嫌がって逃げ回って拒絶しているのに無理やり自分の物にしようと砂漠に閉じ込めたり、周りとの時間をずらしたりとか好き勝手していて。ストーカーで気持ち悪いじゃないですか』

『……ストーカーで、気持ち悪いですか。しかし愛があるなら』

『伯母さんももしかして同じことしたことあります? もうしない方がいいですよ。伯母さんに対する悪い噂は今の所あまり聞かないですけれど、そういうやり方、うちの父さん好きじゃないんで。そうなると母さんが出てきますよ』

『う、うぐ。わ、分かってますよ。若気の至りで確かに人族に迷惑をかけたことはありますが、円満に解決はしているの』

『ならいいです。伯母さんがこの神様とは違うということでほっとしました。目の前にいる神様はただのストーカーですからね。しかも無理やり自分の物にして、相手が諦めたら愛を受け入れてもらえたなんてほざく存在ですよ?』

『それはいけないですね……』



 伯母さんにもちょっとそう言う気質があるらしい。俺の言葉に少しショックを受けてはいるようだが、今は反省しているらしいのはまぁ、いいだろう。というか、本当に伯母さんがそんな風に人に迷惑をかけていたら、神界でも問題にはなっているだろうしなぁ。




 そういうことがないなら、まだ自重はしているのだろう。自覚して抑えているのならばいい事だとは思う。

 ……でも俺が言ったことは脅しでもなんでもない。父さんはそういう話を聞いたら眉を顰めるだろうし、そうすれば母さんは姉だろうと問答無用で何かするだろう。うん、母さんの常識改変は伯母さんにも影響するものって聞いたし、多分知らない間に矯正させられるんじゃないか?

 そういうのは伯母さんも嫌だろうしなぁ。あと姉さん達もそんなことを伯母さんがしていたら軽蔑しそうだし。この伯母さん、姉さん達のことも俺のことも姪と甥として扱っているから。






『では、すぐ行きます』

『それは助かりますけれど、俺の仲間と迷惑かけられた人族も近くに居るんで対策して来てください』

『分かりました』




 伯母さんのそんな声が聞こえたとともに、その場に伯母さんが現れる。神様は伯母さんの姿を見て固まっていた。あと凄く青ざめている。やっぱり神様だと伯母さんの顔とか知っているんだろうか。





「なななななっ、なぜ、イミテア様が……」

「なぜって、あなたが私の甥に迷惑をかけているからでしょう? それにしてもこのような神と呼ばれるのも怪しい程度の力しか持たないのに、咲人に気持ち悪いと思われる行動をするなど命知らずにもほどがあります。あなたのせいで、甥から私が同類に見られたらどう責任を取るつもり? 神自体に対して不快感を持たれたら、遊びにきてくれなくなるかもしれないわ。それどころか姪たちにも嫌われてしまうおそれがあるのですよ?」

「……甥?」

「そうですよ。私の妹の息子です」



 そう言った瞬間、神様が固まった。そしてガクガクと身体を震わせる。




「い、イミテア様のい、いいいいいい妹君というと、まままままま、まさか……ノノノノノノ、ノースティア様の」

「そうですよ。あの子は大切な息子があなたのようなものに不快な思いをさせられたと知ればどう思うでしょうね?」




 ……神様、噛みすぎじゃないか? 

 そんなに怯えるなら最初から馬鹿なことしなければいいのに。少なくとも俺が普通の人族じゃないって分かった段階で引けば伯母さんが出てくることもなかったし。



 

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