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砂漠を歩く ⑪





「き、ききき貴様は何者だ!! わ、私にこんなことをして許されると思っているのか!! 私は神なのであるぞ。人族というのは神を――」

「あー、もう煩いな。テンパっているからだろうけれどなんか言っている言葉が情けなさ過ぎる。許されるかどうかって、許されなくても問題がないし。大体自分の手で俺をどうにもできないからって、他の神様に「助けて」って口にするのは情けないだろう」



 うん、そもそもこの神様が人にちょっかいかけて迷惑な行動してなかったら俺はこんなことをしていないし。




「ひぃいいいい。はははは、離せ!!」

「無理。大体、あんただって嫌だと言う連中相手に無理強いしているだろう。その結果、どれだけの人が不幸になったと思っているんだ? ノスタのことも無理に拘束しようとしていたみたいだし。というか神様だろうとも嫌がる存在相手にそんなことをするなんて本当に気持ち悪い。無理ロさ、神様だって言うのならばそんなことをするじゃなくて人が寄ってくる者なイメージなんだけれど」

 



 うん、母さんはまさにそう。父さんのことだけは追いかけているし、独占しようとする。でもそれよりもずっと母さんに惹かれている人の方が多かったしな。



 神様というのならば、もっと余裕を持つべきでは? なんて俺の勝手な押し付けか。いや、でもこんなのが神様ってかなり情けなさ過ぎて嫌すぎる。



「……そ、そんな酷いことを言うな。私が気持ち悪いなど、そんなことがあるわけないだろう!! 私に愛されることがどれだけ幸せなのか!!」

「うわー、そういうところが本当に気持ち悪すぎる。自分が望むならば幸せだとか、そんなことを思っているあたりマジでただの質の悪いストーカーか何かでしかないじゃんか」



 なんというか、ストーカー気質というか独りよがりすぎてやばい。俺はそんな感想しか思い浮かばない。

 それにしてもこれが依り代じゃなくて本体だっていうならどうしようかなぁ。



 ただ痛めつけるだけでいいのか、どうなのか。うん、正直神様たちがこういう好き勝手迷惑かけている神様にどういう対応しているかさっぱり分からなすぎる。




「とりあえずさ、嫌がる相手に無理強いされるのは見ていて気分が悪いわけ。だからそういうことをもう二度としないって約束出来る?」

「ななな、なぜ、ただの人にそんなことを決められなければならない!! そもそも最初は嫌がっていても、結局我が手中に収まれば私の愛を受け取って――」

「……それ、本心だとでも思ってんの? 神様に無理やり連れ去られて、受け入れるしかなくて感覚麻痺してそうなっただけじゃね? 最初に嫌がっていたのならあんたのことなんてきっと好いてないだろう。それで全て上手く行っているとか、自分は愛されているとかそんな勘違いしているってこと? うわぁ……本当、ただの勘違いで、ストーカーの、気持ち悪い存在でしかないじゃん」



 神様に無理やり恋人みたいにさせられたってことだよな? それにしてもこの神様、たった一人じゃなくてそんなに何人もにこれまで目をつけてきたのか? どれだけ被害者居るんだろうか……。

 場合によっては無理やり連れ攫われても本当に愛情を抱く人もいるかもしれないけれど、普通に考えるなら愛情を抱いたっていうより諦めただけだよな。




「か、勘違い? ストーカー? 気持ち悪い……?」

「うん。勘違いのストーカーで、気持ち悪い存在だよ。人だったら犯罪者とかだと思うけれど。本人の意思を無視して攫うなんて誘拐犯でしかないし。ただ神様っていう自分達ではどうしようもない存在だからこそ、ただ反論しなかっただけだろう? だからあんたのやっていることは、ただの独りよがりってこと。それが分かったらもうノスタにつき纏うのやめなよ。それと同じように人に無理強いすることもな。別に誰かを気に入ることを俺がどうのこうの言うのはしないよ。だって神様だろうとも、人に興味を持ったり、愛情を抱いたりはするだろうから。ただ神様だからって、好き勝手して許されるわけじゃないだろう。やるならやるで徹底的に、誰にも悟られないように全てを終わらせるなたそれはそれだけど。こんな風に人に迷惑かけていたりしたら、倒されたりしそうだし」



 俺はこの世界の一般的な人族について詳しく知っているわけじゃない。ただ人の身でありながら神に至った存在や、人でありながら神を倒した存在も世の中には居ないわけじゃない。

 実際にそういった英雄と呼ばれるような存在は、この世界には居るし。



 あとは父さんみたいに神の力や魔法とかが全然利かないような特異体質な存在もいるわけだし。まぁ、父さんはかなり特殊だけど。母さん曰く、そんな存在は父さん以外知らないって言ってたし。






「うぅ……私が、愛しいノスタを諦めれば離してくれるのか……」

「うん、そうだけど?」



 俺がそう口にすると、神様は諦めたように「分かった。……あ、諦める」と名残惜しそうに言った。




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