砂漠を歩く ⑨
自身の魔力で、落ちてきたものへの対処をする。受け止めた後は、放り投げてしまうと他への被害が大きくなるだろう。
というか、この神様はどうしてこう周りへの被害などを全く考えていないんだろうか。
俺はそんなことを考えて何とも言えない気持ちになった。この俺を押しつぶそうとしているものって、俺には被害はないけれど他の者達にとっては大きな被害を与えてしまうものだ。
間違いなく、死んでしまうのでは? とそうも思う。
だからこそ周りに被害を負わせないように、俺は魔力でそれを抱え込む。
さてと、どうするべきか? 魔力でどうにか消滅させる? それが一番いい気がするけれど。
俺がそんなことを考えながら行動中に、その神は俺に対して攻撃を繰り広げてくる。
うーん、めんどくさい。
俺でなかったらとっくの昔に死んでいる。神ってこんなに人の世界に干渉していいものなんだろうか? 少なからず神様に対する逸話があるから良い時も悪い時もありそう。
神様の世界にとって、このような行為ってどういう風に言われているんだろうか?
俺は神の血を引いていても、神界でこういう神様がどういう扱いなのかさっぱり分からない。
とりあえずさっさと対応をすべきと判断し右手で落ちてくるものの対処をしつつ、左手で攻撃に対して迎え撃つ。
こうやって左右の手で別々のことをするのはなかなか難しい。《アイテムボックス》的なものを使えるようになりたいと、魔法の練習をし続けたから俺も大分器用に仕えるようになった気はする。
「よし、これでいいな」
一先ず攻撃に関してはあしらう。周りに被害が起こることがないように、空の上へと受け流す。そのまま消えて行った。これでいいはず。
落ちてきたものに関しては、俺の魔力で包み込んで、そのまま消滅させる。無理やり自分の力で、何かの存在を消すことというのはかなりの魔力を使ってしまった。結構疲れるな、これ。
「なななななっ!! なぜ、貴様のような小僧が我が神力を打ち消すことが出来るのだ!!」
煩いなぁ。
本当にどうしてこう、喚いているのだろうか。相変わらず声だけしか聞こえないし。
どこから見ているんだろう?
神界に居るにしても、こちらに何かしらコンタクトは取っているはず。そこを探すか。
なんというかさ、向こうからしてみると俺達の方から接触も何も出来ない状況って認識だろ。それなのに、一方的に害しようとするなんてなんか情けないなんて思ったりする。
神と人の関係性は決して対等ではないものだろうけれど、だからって一方的にこんなことされるのは俺は気に食わない。
「そこか?」
魔力を張り巡らせた結果、上空の方に違和感はあった。あそこか? 引きずり出せるかな。いや、でも適当に引きずり出したら、周りへの被害がひどいか。
フォンセーラ達以外の生物たちにも大きな影響は与えられるだろうし。
そんなことを考えながら、俺はクラの方へと視線を向ける。
「クラ、あの神様引きずり出そうと思うけれど、周りに影響ないように出来る?」
俺一人だと正直上手く出来る自信がなかったので、俺はクラの方へと視線を向けて告げる。
フォンセーラとノスタのことを守ってくれていたクラは、俺の言葉に「にゃあああん」とご機嫌そうに鳴いた。
クラは相変わらず、こんな時でもとてもマイペースである。
余裕があるからだろう。ノスタの前だからと、言葉は発していない。
クラは母さんの神獣として、こんな神様相手に恐れはないのだろう。そもそもただの猫だった時から、母さんに対して物怖じしないタイプだったしな。……そんなクラは神獣になるにあたって、母さんの偉大さは理解しただろう。その力も。それでもこの調子であるのが、クラらしいなとそう思ってならない。
俺も普段と変わらない様子のクラを見ていると、何の心配もいらないんだろうなと落ち着いた気持ちになる。
クラが、神力を使って空間の隔離を行っているようだ。
冷気がその場を支配し、それと同時に一部の空間が隔離されたのを感じ取れた。こういうこともできるんだなと、流石クラだと思う。
もしかしたら母さんの力でも借りているかもしれない。こういう細かい操作は、クラにとってもちょっと苦手なことだろうから。
そして下界への影響力がないだろうということを知った俺は、そのまま魔力を使って神様のことを引きずり下ろした。
「なななななああああああああ」
喚いている。
本当に情けないほどに。
このような状況は神様にとっては予想外なのだろう。俺も神様がこうして何かに無理やり落とされる姿なんて見たことはないし、聞いたこともない。
狼狽している神様は、そのまま勢いよく落ちていく。俺の魔力で身体を包み込んでいるから、疎外されているからか……上手く自分で神力を使えないみたい。
俺も神様に怪我をさせたいわけでもないので、一旦魔力で受け止める。もちろん、変なことはしないようにしているけれど。
それにしてもこれ、本体? それともさすがに依り代? 引きずり下ろしたものの、あまり強い力を感じ取れなくて疑問に思った。