砂漠を歩く ⑧
俺自身は、神様の血を引いているという自覚はあまりない。というか母さんが神様だっていうのは頭では分かっているけれども、やっぱりなんか俺はまだまだ人間って感覚。
とはいえ、母さんは俺の魔力が多い方だと言っていた。実際に俺は母さんの血を継いでいるのもあって、神様に対する耐性はとても高いようだ。そうじゃなきゃ、ノスタに会うことなんて出来なかっただろうしな。
クラは「にゃああん?」と鳴いて、自分がやろうかとでもいうような態度だった。
そんなクラに対して、俺がやるとでもいうように目配せをするとクラは大人しく座り込んだ。さてと、ええっと、こういうのどうすればいいんだろうか。魔力で無理やりどうにかするのが一番? とりあえずこの場所に魔力を巡らせるか。
目を瞑って、自分の魔力を外へ外へと巡らせる。
まるで蜘蛛の糸を張り巡らせるかのように、ただ魔力を流し続ける。
そうすれば、違和感はすぐに感じ取れた。
俺達が居る一帯が、他の力から干渉を受けている感覚があった。これは魔力とは違って、神力か。なんか……ノスタにそれが繋がっている感覚? これって所謂、神がノスタを神力使ってストーカーしているとかそんな感じか? 気持ち悪っ!!
いや、まぁ、母さんもさ、父さんへの執着が異様なほどだし、父さんのことはなんでも知ろうとしているし。うん、似たようなものかもしれないけれど、父さんが母さんの気持ちを受け入れているからいいとは思うんだ。だが、これってノスタが嫌がってるから余計になんか、引いてしまう。
魔力を巡らせ、そして俺達が道を惑わされている原因を探す。
多分、これだよなぁ。それをぶっ壊したらいいか? あとはそうだな、こうして魔力を巡らせないと気づかなかったけれど、ノスタに纏っている神力は切っていおいた方がよさそう。
そうしないと永遠と、ただノスタがその神様に狙われるだけだし。いや、でも切断したところでまた繋がれるか?
うーん、どうしようかな。
そんなことを呑気に考えながらも思いっきり原因となっている力を自分の魔力で覆って、そして壊そうとする。かなり抵抗された。よっぽど、俺に邪魔されるのが嫌なんだろう。なんだか自我が凄く強そうだ。面倒だな。
「よしっ、出来た」
俺が魔力を壊したと同時に、その場に声が響く。
「なぜ、私の邪魔をするんだ!! その美しい人は私のも――」
「うわっ、魔力を壊した途端、声かけてくるとかずっと見張っていたのかよ。やばすぎ」
俺は引いていた。聞こえてきた声もなんか、実際のことを知っているとドン引きである。ノスタは嫌がっているにも関わらず、自分の物発言をしようとしていたなんて何言ってるんだ? とそんな気持ち。
それにしても明らかに話聞かない系統だよなぁ。なんか、俺、ノスタの自由がそれこそ十年以上も奪われていたことに凄く複雑な気持ちなのかも。あと単純に聞いているだけでなんか胸糞悪い話だし。
俺、そういうストーカー好きじゃないんだよな。
「なっ、神である私に向かってなんという口のきき方か!! 私の物を奪おうとするだけでなく、愚弄するとは万死に値する!!」
なんで、神様ってこう、怒りっぽいんだ? しかも問答無用で殺そうとしてくるし物騒すぎる。
まだ母さんの方が話が通じる。父さんっていうストッパーが居るからともいえるけれど。
ノスタやフォンセーラは、神の声だけで萎縮していたのでそのあたりはクラが気絶しないように対応してくれたみたい。クラは出来る神獣だなとそんな気持ちになった。
この神様、依り代や本体は姿を現してはいないけれども声だけでも普通の人にとっては辛いらしい。というかそのことが分かっていて、気遣いが出来るタイプの神様だったら間違いなく好意を寄せている相手が気絶するようなことはしないだろうし。
なんかあれだなぁ、ただ人族のことを取るに取らない存在だと思っていて、少しぐらい傷ついてもいいと思っているのかも。それか中身はどうでもよくて、外側……その気に入っているらしい見た目だけ残って入ればいいとか?
……それって何が楽しいんだろうかと疑問だ。まぁ、神様の考えることなんて俺にはさっぱり分からないので、理解出来なくて当然だけど。
「それで、どうするって?」
挑発するようにそう口にしたのは、気持ち悪いという感情が勝っているからかもしれない。あとはさっさとノスタが自由になった方がいいなとそうも思っているから。
「貴様っ!!」
うん、めちゃくちゃ怒っている。こんなに切れ散らかすかってぐらい憤怒しているみたいだ。
よっぽどお気に入りの玩具……ノスタが自分の手から離れるのが嫌だと火、そんな感じなのだろうか。
その声と同時に、空が暗くなった。
――上空を見上げれば、大きな黒い塊が落ちてこようとしているのが分かる。
俺のことをこのまま潰そうとしているのだろうか。……あれ、闇魔法かな?
俺は落ちてくるそれを見ながら、手をかざした。
多分、どうにか出来るはず。