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砂漠を歩く ⑤




「外に出させてもらえないっていうのは?」

「方向感覚をずらされるし、元の場所へと移動される。それで持ってきた食糧も尽きた。なんとか魔物を狩ったり、水源を見つけたりしていたけれど……流石に限界が来て……」



 うんざりとした様子でそう言ったかと思えば、嫌そうに大きな声で叫ぶ。




「それでいてずっと気持ち悪い声が響いていて!! なんで僕は男なのに、男神に狙われなきゃならないんだ!! それにひたすら僕の心を折ろうとしてきて性格悪すぎるし!! 僕はノースティア様にこの魂も含めて全て捧げているっていうのに、本当に煩わしい!!」




 僕と言っているから、薄々気づいてはいたけれど性別は男のようだ。だけれども女の子と言われてもおかしくないぐらい中性的である。

 それにしてもなんだ、男神に口説かれているってこと……? 同性愛は特に本人たちが良ければ否定はしないけれども、これだけ嫌がっているのに無理やりどうのこうの言っているっていうのは引く。俺も同じように気持ち悪いなという感想を抱く。


 ここから出ないようにさせているのは、窮地に陥らせて自分の手中におさめようとかそんな風に考えているからなのかもしれない。そんな風に人の意思を無視して行動する神様ってどうなんだろう……って思った。

 いやまぁ、母さん見ていると周りの意見知るかって行動は確かにしているよ。それは同意する。ただし母さんは無理やり誰かを自分の物にしたりとかはしないんだよな。



 ……父さんのことも、無理やり物にすることはきっと母さんは簡単に出来るはずだったんだ。でも二人のなれそめ聞く限りそうではないんだよな。母さんは父さんの言うことはよく聞くから。

 そう考えると母さんって邪神呼ばわりされていて、神様の中でもかなり悪い分類に思われているし、近寄らない方がいいと認識されてそうだけど目の前の少年にちょっかい出している存在よりもずっとまともな気がする。


 それにしても母さんの信者って、極端だよな。母さんは信者の全てを捧げられてもぽいって捨てそう。そのくらい無関心。父さんの魂は絶対に離さないだろうけれど。



「へぇ……大変だな」


 正直な感想はそれだけだ。



 自分に置き換えてみると凄く嫌だ。そもそも相手が異性の神様だったとしても自分が望んでいないのに迫られるとか最悪だろう。結局力に屈して神の物になるしかないパターン多いのかな。

 


 地球の神話でも結構理不尽なもの多かったしな。それと一緒か。神は力がある、絶対的な存在だからこそ望みが叶うみたいなそんな感じのイメージ。




「……お前達のことも、その神の関係者かと思ったんだ。それで酷い態度をした。ごめん」

「そうなのか」



 面倒な神に狙われているのならば、警戒するのも当然と言えば当然か。

 素直に謝られると、話を聞かなきゃ見たいな気分になった。そんな俺とは正反対にフォンセーラとクラは興味なさそうにしている。






「そうだ。だってこの砂漠にきてからまともに人と喋れなかったんだ。多分、近づけさせないように何かされていたのではないかと思う」

「あー、なるほど? だから俺達のことも神の関係者だと思ったのか」



 神の力が働いているのなら、そんなことも起こり得るだろう。

 実際に一部見た母さんの力も凄まじいものだったし。母さんの場合だと相手に自覚させずに操ったり出来るからこんな問題起こんないんだろうなぁ。起こったとしたら母さんが敢えて自覚させるようにしていたってことだし。


 この少年にちょっかいかけている神様って、恒常的に常識を改変したりは出来ないのかもしれない。そこまで力がない神? それか、あれか……母さんだからこそ半永久的に常識を変え続けるなんて出来ないのか。




「そうだ。……どうしてか、お前達にはその神の力が利いていないらしい。だからこそ頼みたい。僕をこの砂漠から出してくれないだろうか……!!」



 切羽詰まった様子でそう言われる。

 心から助けてほしいと願われると、そのまま頷いてしまいたくなる。



 ちらっとフォンセーラとクラを見る。



「サクトが決めればいいわ。どうにでもなると思うし」


 フォンセーラはそう口にし、クラは黙ったまま好きにしたらとでもいう風に頷いている。

 決定権は俺にあるわけだけど、どうするか。……神様が関わっているなら最悪敵対することにはなるのか?



 俺が母さんの息子だって知ったら手出しはしてこないかな? よっぽど愚かな神様じゃなければ母さんの名を聞いた瞬間逃げそうだし。

 あー、でもあれか。母さんの信者であるこの少年に手を出そうとしているのは母さんが信者に関わろうとしないからだろうし、俺が母さんの息子だって言ったところで自称しているだけって思われそう。



 母さんの子供って、姉さん達と俺しかいないわけだし。



 まぁ、でもなんとかなるか。最悪家族に助けを求めよう……。



 そんな結論に至り、俺は少年に声をかけた。




「分かった。じゃあ、砂漠の外まで行こうか」



 俺がそう口にすると、少年は嬉しそうに笑った。



 

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― 新着の感想 ―
地上で好き勝手やってる神達を黄門していってる。あれ?やってること割と神話では……
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