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砂漠地帯へ向かう準備 ②



 ――ある時、灼熱の大地で水を求めて少女は彷徨った。

 ――そんな少女に近づいたのは、見目麗しい男神。神は少女を救い、妻として神の世界へ持ち帰った。



 ……そんな神の話を、酒で酔ったおじさんが高らかに歌いながら語ってくれる。

 気分よく歌っている様子を見るのは、気分が高まるけれどその内容はなかなかアレだ。



 いや、だって無理やりじゃね? ってそんな気持ち。俺は神の血は継いでいるけれども俺自身は人という感覚の方が強い。でも神様という感覚がある人だと、人って別の存在って感じに思わないのかな。

 まぁ、母さんも父さん相手に惚れているからそういうこともあるんだろうけれど、



 でもどうなんだろうなぁ。神様って案外簡単に人に惚れるものなのか? 地球で言う神話だとそう言う系統の話それなりにあった記憶だけど。


 あとなんかうわぁ、と思ったのは砂漠地帯ってそういう言い伝えが残っているようだ。行方不明になった人が子を成して帰ってきたとか、神様と一緒にいたと語る人がいたとかあるそうだ。

 え、捨てたの? ってなった。いや、まぁ、神様からしてみると人なんてそういうものかもしれないけれど。


 ただ正直言って神様のお手付きになるだけでも人々にとっては名誉なことという認識なようだ。それだけ自分とは異なる高みにいる存在だからこそ関係を持てるだけでも素晴らしいって感じか? ただ人に置き換えると中々アレだけどなぁ。でも母さんも父さんに惚れる前は好き勝手ちょっかいは出していたっぽいし、複雑な気持ちだ。




 


「兄ちゃんも連れの姉ちゃんが神様に気に入られる可能性があるから、嫌なら注意しておくべきだぞ」

「……あー、はい」


 フォンセーラの見た目は可愛らしい方だ。客観的に見ても、目を引く。

 砂漠の神様達が人にちょっかいをかけやすいタイプだというのは確かだろう。そうでないとこんなに逸話残ってないだろうし。


 フォンセーラは母さんの信者ではあるけれど、どうなんだろう? そういうことを望むならまぁ、複雑だし正直俺としては嫌だなとは思うけれど、止めはしない。ただ知り合いの女の子が神様にそういう扱いされるのは滅茶苦茶何とも言えない気持ちにはなるけれど。






 ちらっとフォンセーラに視線を向ける。



「私は全力で抵抗するわ。私の信じる神は、自分の意思に沿わないことはしない方がいいと言っているから」



 他にも人がいる状況だから、フォンセーラは母さんの名は出さずにそう言った。

 ……母さんがそういう神託を下したらフォンセーラは頷くだろうけれども、そもそも母さんが自分のやりたいように自由気ままで、信者に干渉しないタイプの神だからこそフォンセーラは信仰しているのだろうけれど。




「はははっ、神に目をつけられたら抵抗しても仕方ないだろう」

「神に遭遇して、そういう仲になるなど滅多にないことだ。運が悪かったと思うしかないな」



 などと、そんなことを笑いながら酔っ払いたちに言われる。


 ……うん、神様に遭遇したとしても俺は危機的状態になったら家族に助けを求めよう。俺にとっての神様はあくまで母さんや姉さん達なんだよな。あとは父さんも今は神様なのか? 家族は話が通じるけれど、砂漠の神様達って話通じなかったりする方なのかな?

 そう考えるともし遭遇した場合に面倒なことにはなるかなとそんなことを思った。




 それにしてもこの世界にとって、神様という存在は中々理不尽だ。圧倒的な力を持っているからこそ、何をされても黙っているしかない感じか?




 ただ話を聞いている限り、英雄と呼ばれる存在などだと神様の決定に抗うこともあるようだ。母さんみたいに常識改変をひたすら出来るタイプだと人側はどうしようもないけれど。でもある意味その方が平和なのか。





 俺は神の血を引いてはいるわけだから、それに興味を持って近づいてくるような神様もいたりするだろうし気を付けておかないと。

 俺が母さんの息子だと知っていれば下手な接触はしてこないはず。ただそれを知らない神様だとややこしいことにはなりそうだな。




 ついでにそういう会話を聞きながら、砂漠でしばらく過ごすための秘訣なども色々と聞いている。水分の取り方とか、危険な魔物についてとか、それらの情報もちゃんと集めた。



 オアシスの場所なども全て確認する。ただし地図によってはオアシスの位置は違うみたい。高価なものだと詳細に書かれているけれど、少し安いものを購入してしまうと誤った情報だったりもするんだとか。



 こういう命の危機があることだと、ちゃんとお金は払うべきだよな。





 その日は結構遅くまで情報収集をした。フォンセーラも俺と同じように沢山のことを聞き出していた。それにクラも俺の肩の上に乗りながら、周りが何気なく言った言葉なども聞き洩らさないようにしてくれていたようだ。




 ――そしてその数日後、俺達は砂漠へと旅立った。




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