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姉さんたちがやってくる ⑨

 さて、俺達姉弟は母さんの信者らしい人たちの集まりを探ることにした。折角姉さん達が俺に会いに来てくれたのに、その対応だけで終わらせたくはない。というか、さっさとその問題は片付けて華乃姉と志乃姉のやりたいことを幾らでも一緒にやりたいと思う。



「さっさと調べないと。折角、姉さん達がきているのに」



 俺がそう口にすると、姉さん達はおかしそうに笑う。




「別にそんなに急ぐ必要はないわよ? 解決しないならそれはそれだし」

「問題ないわ。私達だって母様の信者の人達と会ってみたいと思ってるし」



 華乃姉と志乃姉はそうはいってくれているけれど、出来ればさっさと片付けたい。本当に些細な……調べる必要もないようなことをやっているのならともかくそうでないのなら問題解決に時間がかかるかも。 

 でも母さんの信者達が好き勝手しているなら、俺達が母さんの子供だって言えば言うことは聞いてくれそうな気はする。……まぁ、それは完全に最終手段だけど。だって俺がこれからこの世界を旅するにあたって、自分が母さんの子供だって言うのはなるべく言いふらさない方が楽そうだけど。


 だって俺は母さんの子供とは言え、この世界にとってはただの異世界人なのだ。それなのに特別視されたりするのもなんか嫌だし。



 そんな会話を交わしながら、俺達は母さんの信者について探っていたわけだけど……、クラの力を借りたら案外すぐに見つかった。一見するとクラはただの黒猫にしか見えないから、人々も警戒などほとんどしないのだろう。






「あの人間たちがどのあたりにいるかは分かったけれど、どうするの? 突撃する?」



 クラは軽い調子でそう問いかけてくるが、どうしたものかというのは悩みどころである。

 早急に解決はしたいものの、彼らが何をしたいか把握していない状況では動きにくい。直接聞くのが一番早いだろうが、それで面倒な事態になっても嫌だしな。

 そんな風につらつらと、色んなことを思考してしまう。





「咲人、そう難しく考えなくていいんじゃない?」

「私達もいるのだから、何かあってもすぐに対処が出来るよ?」


 姉さん達はどうしたものかと考え込む俺にそんなことを言う。




「いや、出来れば華乃姉と志乃姉の力は借りずに終わらせたい。二人とも常に俺の傍に居るわけではないし、こういう問題が起きた時に毎回助けてって家族に言うわけにもいかないだろう」



 確かに半神としての力をきちんと使うことが出来る姉さん達の力を借りれば、問題が起こっても正直言ってどうにでも出来そうだとは思う。ただ俺はこの世界でこれから自立して生きて行こうと思っているのだ。

 親元を離れているというのに、いつまでも親とか、姉さん達に頼ってばかりだと情けないしなぁ。



「幾らでも助けてって言っていいのに」

「そうよ? 母様や父様だって咲人が困っていたら助けてほしいって言うと思うのだけど」


 簡単にそういうことを言う華乃姉と志乃姉は本心からそう思っているのだろうなというのはよく分かる。





「でも俺が嫌なの! だから、ひとまず解決できそうならなるべく姉さん達の半神としての力は借りずに解決させたい。さりげなく聞いてみるか、どうしようかなぁ……」


 俺は華乃姉と志乃姉に向かって宣言した後、これからどうするべきかと呟く。

 そんな俺に一つの提案をしてきたのはフォンセーラであった。




「サクト、それなら私が聞いてこようか?」

「いいのか? それでフォンセーラが大変なことになったりしたら……」

「構わないわ。私自身もノースティア様の信者であるし、彼らがサクトたちの望まぬことをしようとしているのならば止めたいと思うもの」



 フォンセーラはただ淡々とした様子でそう告げる。情報収集に行くことぐらい、特に気にならないらしい。

 ただ本当にいいのだろうか……? と思う。

 いや、でもよく考えればフォンセーラって俺に出会う前は一人旅をしていて、その間に母さんの信者であることを隠したりとかは特段していなかったんだろうなとは思う。

 だから俺は、フォンセーラが彼らに話しかけることで何だかややこしいことになるかもと思っているけれど……、フォンセーラにとって話しかけることでおこることって特に面倒でもないことなのかも。


 そういうのは人によって考え方が違うからな。





「本当に問題ないのなら、聞いてほしいかも。あ、でも途中でやっぱりこんなことしたくないとか思ったら遠慮せずにやめていいから」


 俺がそう口にするとフォンセーラはくすりっと笑った。



「私は本当に嫌なら、嫌というわ。だってノースティア様を信仰するということは、自分の気持ちを偽らないことを信念にしていることでもあるの。だって私の信仰するノースティア様は、自由の象徴みたいな方だから。此処で自分が納得していないのに行動を起こすなんてノースティア様の信者らしくはないことよ」


 はっきりとフォンセーラはそう告げる。

 本気で嫌がってなさそうなことにはほっとした。




 それからフォンセーラには「私が探ってくるから、その間はサクトたちはシノ様とカノ様と遊んできていいわ」と言われた。






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