姉さんたちがやってくる ⑦
こうして街をぶらぶらしていると、案外母さんに纏わる物が存在していたりする。
母さんの信者であると断言をすると、問題が起こったりするのだ。だからこそ、こうしてこっそりと信者であることを示しているのかもしれない。
――姉さん達と一緒にこうしてぶらぶらしていると、沢山の発見がある。俺だけでは気づけなかったようなものが沢山見つかって楽しい。
「咲人、これ見て」
「これは……伯母さんの信者の方が作ったものかな?」
「多分、そうよ」
「伯母さんも本当にこの世界で信仰されているんだなぁって実感するよな」
伯母さんの信者らしき人は本当に沢山見かける。それに母さんを信仰することと比べて、伯母さんを信仰することはそこまでのリスクがないのだと思う。一般的に信仰されているからこそ誰もが伯母さんの信者だし。
俺としてみれば母さんもそういう感じになればいいと思ってしまうけれど、母さん本人がやっぱり嫌がるだろうか?
母さんは邪神呼ばわりされているからアレだけど、それ以外の神様の信者よりも伯母さんの信者の数の方が多い。伯母さんって、そういう点で凄い神様なんだなと思ってしまう。
「伯母様は神界でも凄く信頼されているわ」
「やはり、神様としては強さが重要なのよ。信仰心が集められているということは、それだけこの世界で功績を残していたということ」
華乃姉と志乃姉は、そう言って楽し気に微笑んでいる。
神様の生きている世界――神界には俺はまだ足を踏み入れたことはない。正直想像もなんとなくしか出来ない。俺が神界に足を踏み入れたら、自分の足でそこに迎えれば――どんな世界が待っているんだろうか。
その世界だと、きっと母さんも伯母さんも凄い立場なのだろうなとは思う。下界だけではなく、そして神界でもその名を轟かせている。――それは本当に、凄いことだと思う。
「この世界でぶらぶらしていれば、自然と母さんと伯母さんの話は幾らでも入ってくるけれど何処まで本当かって全然分からないんだよな。この世界で生きている人たちにとっては遥か昔のことばかりだろうし」
神と人とでは明確に寿命といった点でも差がある。
――だからこそ真実は分からないことも多いだろう。どれだけ上手に伝えようとしても、後世に上手く伝えられないことは沢山あるだろう。なんかこれまで母さんのことばかり気にしていたけれど、伯母さんのことももっと噂を集めておくと後から楽しいかも。
実際にどれだけ違うのか、それに関しては俺だからこそ本当のことが分かることだろうから。
だって普通に考えれば人が神様に簡単に細かいことなんて聞けない。神様がどういう風に過ごしているかとか、どういう考えを持っていたかなんてそんなことは出来ないだろう。そういうのを聞けるのは母さんの息子である俺の特権だろうし、母さんや伯母さんが俺に話してもいいよって言った事に関しては周りに言うのもありか?
少なくとも母さんの評判は少なくともあげたいけれど、伯母さんの評判なんて既に最高潮というか、この世界で最も信者が居ると言っても過言ではないし。うーん、伯母さんとか、他の神様的には母さんの信者が増えることって何かしら問題が起きたりするのかな。
「母さんの信者増やしたら、伯母さん嫌がったりするかな? どう思う?」
神界のルールなどは全く分からないので、そのあたりは疑問である。信者の数とか競っていたりするんだろうか? うーん、母さんはそういうのが幾らいようが特に気にしないタイプだけど、伯母さんってどうなんだろ。
負けたくないとか、信者の数が多い方が偉いとか、そういうのあったりするのか? 伯母さんもそういう細かいことは気にしない気もするけれど。
「気にしないと思うわ。でも神の中には、そういう信者の数を重要視している者はいるとは聞くわ。そういう方はそのことで争いあうことはあるらしいけれど、母様や伯母様はそうではないわね。母様はそんなもの気にしないし、伯母様は信者が幾らでもいるからそんな些細なことは気にしない」
「もしかしたら私達で母様の信者増やしたら何か言ってくる神はいるかもしれないけれど、その時はその時で私達でどうにかしましょう。母様の手をそんなくだらないことで煩わせたくないもの」
にこにこと笑いながら、華乃姉と志乃姉にそんなことを言われる。
やっぱりそういうことを気にしている神様はいるにはいるみたい。俺が知っている神様って、母さんと伯母さんと、この前会った火の神と水の神とかそのくらい? 俺は神である母さんの息子ではあるけれど、神様のことをあまりにも知らないなと思う。
うん、これからもっと色んな神様と一緒に関わることになるだけれど、神様への考え方も大分変りそうだよなぁ。
でも姉さん達のいうとおり、そういうことがあったら俺達でどうにかしよう。姉弟三人で一緒に何かをするのは楽しそうだし。