姉さんたちがやってくる ③
ご飯が届いたので、それを食べながら母さんの邪神扱いをされないための方法を色々と姉さん達と一緒に話す。しかし結局といって母さんは邪神呼ばわりされていても全く気にしないので、俺達がどうこう言ったところで関係がないのかもしれないけれども。
ただ俺達からしてみると、やっぱり母親を悪く言われるのは嫌だなとそう思ってしまう。
「母様は父様に夢中だから、あんまり下界で何かしようとかもなさそうだしね」
「伯母様や他の神様が言うには母様はこの世界で過ごしていた頃よりはずっと丸くなっているとは聞いたわ。でも自由なのが母様だから、母様らしくある姿を邪神以外で表してほしいわ」
志乃姉と華乃姉はそう言いながら、食事を口にし、口元を緩めている。どうやらここの食事は姉さん達のお気に召したらしい。二人とも地球に居た頃からそれなりに料理はしていた。……とはいってもよく考えると父さんに食べさせるものは母さんが全て作りたいなどと言っていて、父さんに食べてもらうことはそんなになかったはずだが。
俺は二人が作る料理も好きだ。たまにしか食べることはなかったけれど、いつも美味しかった。
あとはバレンタインとかだと、志乃姉と華乃姉がいつも俺にチョコくれていたんだよな。母さんのチョコは父さん専用なので、もらうことはなかったけれど。
志乃姉と華乃姉の言う通り、俺も母さんは母さんらしく信仰されるべきだとは思っている。そもそも俺達が母さんが周りにもっとよく見られるようになってほしいからって母さんを変えようとするなんてするのは烏滸がましいし。俺も、姉さん達も母さんは母さんのままでいいとは思っている。
ただ邪神扱いかぁと微妙な気持ちになっているだけだ。
母さんは自分本位だけど、悪って感じではない。どちらかというと無邪気というか……強者故のあっけらかんとした様子があるというか、多分そんな感じ。誰かに悪意を向けて何かをしようとか、誰かの上に立って悦に入るとかそういうのでもない。母さんにとっては父さん以外は平等だから、そもそもどうでもいい存在に特別な感情なんて抱かないので母さんはそういうものなのだ。
「邪神以外だとなんだろ……。父さんの存在が公になったら、なんか色々呼び方とか変わりそうな気はするけれど。でも父さんって多分、変に目立つの嫌いだろうしなぁ」
俺にとっては父さんは自慢の父さんだ。うん、普通に尊敬している。だから父さんのことも母さんと一緒に有名になったらそれはそれで良いことだなって思う。母さんもどうせ何か噂されるなら父さんと一緒がいいだろうし。
「それはそう。父様はこっちにきても多分自然体。変わらないはず」
「父様、母様の最愛なんだからもっと偉そうにしたりしてもいいのにね。実際に母様のことを制御出来るのは父様だけだしさ」
父さんと一緒に母さんが噂になったら、どんな風に言われるんだろう? 全然想像はつかない。というか、俺、こういう呼び名とか考えるとのは全く得意じゃないからな。分からなさすぎる。
俺と姉さん達がそんな会話を交わしている間、フォンセーラはずっと俺達の会話を聞き洩らすまいといった態度で食事の手が止まっていた。
「……フォンセーラ。母さんの話だからしっかり聞きたいのは分かるけど、ご飯冷めるよ?」
「冷めても構わないわ」
「俺達が気にするから食べて。今、姉さん達と話している程度のことならいつでも話せるから」
俺がそう言ったら、フォンセーラはようやく食事に手を付け始めた。食事よりも母さんの話を優先しているところも含めて本当にフォンセーラらしいというか、こいいうところは特に母さんの信者なんだなと実感する。
フォンセーラと俺の会話を聞いて、志乃姉と華乃姉はくすくすと笑っている。ちなみにクラに関しては呆れた様子で、用意されている使い魔用の食事を食べている。
「こういう母様のことを好きな子を見ると私、嬉しいわ。母様はとても素晴らしいのよ? ちょっと我儘で、自分勝手だけどそこも母様の魅力だもの」
「この世界の人達は母様が神様で、とてつもない力を持っていることも……、その性格も知った上で信仰している子ばかりだからいいよね」
志乃姉と華乃姉はそんなことを言いながらにこにこしている。
「本当にノースティア様は素晴らしい神なのです。そもそもノースティア様がノースティア様であることが、全て正しいことなのです。想像とは違う一面があったとしても、それも含めて信仰しない者など信者とは言えません」
……本当にフォンセーラって、母さんが言ったことは全部真実として進めるんだろうなと思った。他の母さんの信者達も同様っぽいよな。大量に集まったらどうなるんだろう? 少し見てみたいような、集まったら担がれそうで大変そうな気もするような……。
俺は母さんの信者が増えるのはいいことだとは思っているけれど、それで母さんの名で好き勝手起こされるのは嫌だなとは思っているのでなんかもっと平和的に信者が増える感じのことが出来ればなとは思う。