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前編

   

 撮り鉄や乗り鉄という言葉がある。

 鉄道の写真を撮影するのが好きだったり、目的地へ行くよりも列車に乗車することそのものが好きだったり、一言でまとめてしまえば「鉄道ファン」ということになるのだろう。

 それほどではないけれど、私も小さい頃は、旅行などで珍しい列車を見かけたら無性に嬉しくなっていた。

 おそらく現地の人々にとっては、日常的に乗り降りする列車のはず。それでも自分にとって「珍しい」というだけで、大きな価値があったのだ。

 それに乗るだけでワクワクしたし、親のカメラを借りて、キャッキャッと騒ぎながら撮影したのも覚えている。


 それとは別に、鉄道のおもちゃにも興味を示す子供時代だった。子供心でも「これは高価」と理解できるような、立派な鉄道模型を買ってもらっていた。

 いつも目にする緑や青の電車――山手線や京浜東北線――も欲しかったが、最初に買ってもらったのは、キハ58という気動車だった。窓周りが朱色の太いラインになっている、クリーム色の車両だ。

 当時、田舎に帰省する度に見かける列車であり、私にとっては「近所では見られない」でも「毎年見られる」という、珍しさと親しさの同居した、特別な車両だった。

 その後、全く乗ったこともない電車なども買ってもらったが……。

 一番よく遊んだのが「EF65(1000番) 24系25形(ニューブルートレイン)編成」という6両セット。

 いわゆるブルートレインだ。

 付属の説明シールには「EF65(1000番)」「オハネフ25」「オロネ25」「オシ24」「オハネ25」「カニ24」と書かれている。おそらく「オハネフ25」「オロネ25」「オハネ25」の『ネ』は『寝』の意味であり、寝台特急のセットのはず。だからわざと部屋を暗くして、ライトを点灯させて走らせていた。

 特に末端の「オハネフ25」と「カニ24」には光るテールマークが内蔵されており、しかも「富士」「はやぶさ」「あさかぜ」「出雲」の4種類を、付属のミニドライバーで回して選択できる。凄いギミックだと、子供の私は大興奮だった。


 しかし、現実には、そうした寝台特急に乗る機会はないまま大人になり……。

 社会人になると仕事が忙しくて、電車で遠くまで旅行することもなくなった。たまに出張などで遠出することがあっても、飛行機がメインで、電車は新幹線くらいだ。

 いつのまにか、珍しい列車を見ても興奮しなくなったし、高価な鉄道模型も全て押し入れに仕舞われるようになっていた。私は鉄道ファンではなかったのだろう。

   

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