1章 5話
だいぶん長い間、私は風間の胸の中で泣いた。ずっと、ずっと泣いていた。その間、風間はなにも言わなかった。何も言わずにずっと抱いてくれた。
私には、そんな風間の優しさに心が救われた。
「…ごめんね。」
「…いいよ。これからはさ、俺に頼ってきてよ。俺がちゃんとお前を守るから。」
「―ぇ??」
「…俺、お前のこと好きだわ。本当はさ、こんな時に言わないほうがよかったのかもしれないんだけど。やっぱ気持ち、抑えきれないわ…。ずっと前から、好きだってさ、もう、俺どうしよ…。」
―――本当…??!
夢じゃないよ…ね??
「…うん。これからも私を守って…。ずっと、ずっと…。」
「――ずっと、守ってやるよ。杉本のこと。」
「ねえ…あのさ、一緒に寝てほしいんだけど……。」
「は??!」
「ずっとさ…親の悪い夢ばっか見るんだよね。お願い!!……恐いのよ、私一人生きている、この、罪悪感が…。」
「…いいよ。」
「――ありがと。」
「…なんか、恥ずかしいわ…」
「そぅ??私は、嬉しいよ。」
「まあ…俺も嬉しいけどな…。」
「嬉しいんだ 笑」
「……。」
「……。」
「杉本、――目、閉じて。」
私の生まれて初めてのキスは、とてもロマンチックな感じだった。とても、…嬉しかった。
この瞬間、私達は一番輝いていたのかもしれない。一番楽しかったのかもしれない。
この後、私達の運命を変える出来事が、あんなにも突然で、あんなにも理不尽に、おこるなんて……私達は思ってもいなかった。