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俺の召喚獣はとっても可愛い小人さん!  作者: 夜々里 春
【煌めき立つ王剣】第一章

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◆第五話『シャディア先輩の部屋、なのっ②』

 シャディア先輩が話を切り出してきた。


 おかげで俺は崩壊していた理性を取り戻すことができた。慌てて深呼吸をして平常心を取り戻したのち、「はい」と頷く。


「どうしても気になってしまって……」

「あなた、1度訊いて答えてもらえなかったのでしょう? それでも詮索するつもり?」

「たしかに勝手に探るのはダメかなって思います。でも、なんだかその話をしていたときのティリス先輩、なんだか辛そうだったので」


 俺ならどうにかできるかもしれない、なんて考えは完全に思い上がりだ。しかし、そうだとわかっていても、なにもしないのは性分じゃなかった。


「まあいいわ。話してあげる」

「本当ですか!?」

「……暑苦しいうえに、うるさいわね」


 俺が前のめりになったせいか、冷めた目を向けられてしまった。シャディア先輩が仕方ないとばかりにため息をついたのち、話しはじめる。


「といっても、わたしもあなたと同じ回答をされたから言えることは少ないわ」

「やっぱり王室のほうから出ないように言われてるってこと、ですか」

「だそうよ。ティリスの話では、ね」

「どういうことですか?」


 なにやら含みのある言い方だ。

 シャディア先輩が脚を組みなおしたのち、話を続ける。


「いまの国王。つまりティリスの父親もこの学園に通っていたのだけれど、学園大会に出場してるのよ。しかも本戦で優勝も果たしてるわ」

「すごい……って王様が出てるならティリス先輩が出ないのはおかしくないですか?」

「まったくもってそのとおりね。まあ、いまになって方針を変えた可能性もあるけれど」


 シャディア先輩は違うと確信しているような口振りだった。ただ、その場合、なぜ出場しないのか。そもそも出場を辞退しているのは誰の意思なのか。……この先を知るには、やはりティリス先輩本人から訊くしかなさそうだ。


 俺がそんなことを考えていると、視界の中でナノが目をこすっていた。そのままふらふらした足取りでシャディア先輩の足下まで行くと、そのままもたれかかってしまう。


「……他人の部屋でこんなくつろぐなんて、いったいどんな神経してるのかしら」

「す、すみません。いまどかします」

「べつに構わないわ。ぬいぐるみが乗ってるようなものだもの」


 言うや、シャディア先輩がナノを抱きあげた。そのまま脚組みを解いたかと思うや、膝の上に乗せる。ナノもよほど居心地がよかったのか、すやすやと眠りについてしまった。


 不愛想な面で「まったく良いご身分ね」と悪態をつくシャディア先輩。ただ、ナノを撫でる手つきはとても優しかった。


 怒っているところばかり見ているせいか、誤解しそうになるが……本当はとても面倒見がいい人だ。時折──いや、よくキスフィが絡むと暴走して手がつけられなくなるが。


「ティリスはね、授業でも本気で戦わないのよ」


 シャディア先輩がナノを撫でながら、ぼそりとそう口にした。


「恵まれた才能を持っていながら、そのすべてを出そうとしないの。わたしはそれが腹立たしくて仕方ないのよ」


 もどかしさを孕んだ声音だった。先輩の綺麗な眉もわずかながら歪んでいる。シャディア先輩はなおも俯いたまま静かに話を継ぐ。


「もしティリスが舞台に上がるというなら、それは願ってもないことだわ。だから、なにか困ったことがあったら言いなさい」

「は、はいっ。そのときはお願いします!」


 まさか今後の協力までしてもらえるとは思いもしなかった。ティリス先輩との関係性も考えれば、シャディア先輩以上に頼りになる人はそういない。俺は喜びをあらわにしながらがばっと頭を下げた。


「で、1つ確認したいことがあるのだけれど」

「……はい? なんですか?」


 突然、シャディア先輩の声が低くなった。いやな予感がして恐る恐る顔をあげる。と、さっき俺が交渉品として渡した〝キスフィのハンカチ〟をシャディア先輩が手にしていた。


「これ、どうしてあなたが持っていたの? まさかキスフィから盗んだんじゃないでしょうね……?」

「ち、違います! 先輩にどうしたら話を聞いてもらえるかって俺が悩んでたらそれを使えって言ってくれたんです!」

「でも、キスフィが私物を誰かに渡すなんて考えられないわ。ましてや同年代の男になんて……」

「そ、それだけキスフィが優しいってことじゃないですか? いや、さすがシャディア先輩の妹さんですよね。人間性ができてるっていうか、もう本当に尊敬します!」


 さすがに露骨過ぎたか。

 そう思ったのだが……どうやら杞憂だったようだ。


「ふん、よくわかってるじゃない。そう、キスフィほどできた子はいないわ。心技体、すべてにおいて至高に達した究極の存在よ。とくに可愛さなんて誰も太刀打ちできないほどだわ。もし美の神が存在するのならきっとあの子のことを言っているのよ。ええ、そうに違いないわっ!」


 恍惚の笑みを浮かべながら語りはじめるシャディア先輩。なんだか変なスイッチを押してしまったようだが、話をそらすことには成功した。


 ティリス先輩について話すという目的は果たしたし、いまのうちにさっさと退散するとしよう。そう決めるやいなや、俺はすっくと立ち上がる。


「それじゃ俺、そろそろ行きますね。あ、ナノをありがとうございます。で、では失礼します……」


 ナノを受け取ってそのまま退室しようと扉に手をかけた、そのとき。シャディア先輩から「お待ちなさい」と呼び止められた。肩越しに振り返った先、映り込んだのは笑っているはずなのにそう見えないシャディア先輩の顔だった。


「……アル・クレイン。わたしの大切なキスフィを泣かせるようなことをしたら、わかっているでしょうね?」

「は、はい。肝に銘じておきます……」


 キスフィを褒めればシャディア先輩の機嫌はよくなる。だが、同時にシャディア先輩からの敵視も増すことがよくわかった。


 ──呑気に寝ているナノが羨ましい。

 そんなことを思いながら、俺はシャディア先輩の部屋をあとにした。



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