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8.王家の闇

 猫になって5日が経った。

 散歩に行った次の日から忙しいのか、起きたら王子はいなくて、日中は一人でゴロゴロとしながら過ごし、夜遅くに疲れた顔をした王子が帰ってくる。


「ただいま」という彼に頭を撫でられ、いつも通り夜は隣の枕の上で丸くなって寝るのだけど……最近……いや、あの日から王子の様子がおかしい。

 何と言うか、何処か無理をしているように見える。



(……もしかしたら、この前の会話を気にしているかもしれない)




 何となく、そう思った。

(……あの兵士達、次会ったら絶対この爪で引っ掻いてやる)






 隣で眠っている王子の顔を見て、私は暫くその横顔を見つめていた。






 ☆





「おはよう、リリー」

「にゃ……(ん……)」




 寝起きでぼーっとする視界いっぱいに広がるエヴァン王子の顔に、私はまた悲鳴を出しかけ慌てて引っ込める。

(本当、イケメンの顔に慣れないわ……!)




 そんなことを一気に覚めた頭の中で考えていると、エヴァン王子は「最近忙しくて構ってやれなくてすまない」と頭を撫でられた。

(……そんなこと、気にしてくれてたんだ)




 その優しさに、私はキュンとした。

「それに今日は、夜会で帰りが遅くなるかもしれない。 ……すまない。 先に寝ていてくれて良いから」

「にゃー?(夜会?)」

「夜会っていうのは、簡単に言えばパーティー、だな」




(ごめんなさい王子、そういう意味で鳴いたのではないの)



 夜会は知っている。 だけど、何のために夜会なんて開くんだろうと疑問に思ったのだ。

 今は夜会シーズンではない。

(なのに、どうして?)



「……全く、面倒なことをしてくれるな……本当、メイナードには申し訳ないが、あの女だけはどうも性に合わん」




 深くため息をつく王子を見て、私は首をかしげる。

(メイナード? ……あ、思い出したわ)




 メイナード王子。 この前兵士達の間でも話していたが、この国の第二王子で、確かエヴァン王子より3歳下、だったはず。

 詳しいことは知らないけど、あまり仲良くないという噂を聞いていたが……。




(メイナードに申し訳ないと言ったってことは、メイナード王子とは仲が良いのかしら)




 ……噂って、本当でたらめなのね。

 私は少しだけため息をつくと、王子は「あぁ、こんな話をしてもつまらないな」と言ってベッドから出て着替え始める。

 私は王子からさっと目を逸らしていたら、エヴァン王子は上着を着ながら声をかけられた。



「だからリリー、お前は気にせずご飯をしっかり食べて寝てて良いから。 俺の帰りを待たなくて良い」

「にゃー(嫌だ)」




 どうせ猫語にしかならないから、とわがままを言ってみたら、言葉は通じていないはずなのに、王子は「そんな顔しなくても」と苦笑いをした。




「なるべく早く帰ってくるようにする」




 そう言って部屋を出て行ってしまった。




(……夜会、か)




 何のための夜会なんだろう?

 ……あの女は性に合わん、と言っていたってことはもしかして。

(……王子の結婚相手探し!?)




 私はどきっとした。

(……いやいやいや、私は王子から逃げてしまっている身なのに、とやかく言う筋合いはない、わよね……)




 ……なのに、何故だろう。





(……どうして、こんなに胸がもやもやするの……?)







 ☆





 そのもやもやは暫く続き、もうとっくに夜会が始っている頃にまで日が暮れた。



(……エヴァン王子は、“リリアン・マレット”以外の結婚相手を、見つけるのかしら)




 ……どうも心が落ち着かない。

(……この国では、一夫多妻制はOKだし、それに実際に今の王家の実権を握っているのは、側妻であるリネット女王だし……)



 この国は今、何年か前から国王様が病に臥せており、正妻だったエリン様も私が生まれる前に亡くなってしまったらしく、その代わりの王として側妻であるリネット女王が選ばれたのだ。

(……あ)




 そう考えると、エヴァン王子には今、ご両親がいない。 それに、今はリネット女王権力を握っている。

 ……そんな彼に、王室内での強い後ろ盾はいないとしたら。




 ……それに、朝食を食べていた時のジーンさんの言葉もきになる。




 ―――……幸せになれる道を、貴方が切り開けば良いのです。 私共もそのために一丸となって今頑張っているのですから。

 ……それに貴方が一番、この国の王に相応しい方なのです。




 そうジーンさんは言っていた。






(……もしかしたらこの王室には、私達の知らない“闇”があるのかもしれない)





 そうでなければ、あんなに優しいエヴァン王子が時折見せる寂しそうな、悲しい表情も、人に見せる冷たい顔にも説明がつかない。





(……調べてみる価値はありそう)




 こんなの、私の勝手かもしれない。 だけど、エヴァン王子のあんな表情にする原因なのだとしたら。

 私はその原因を突き止めて、取っ払いたい。

 どうしてか、そう思った。





 私がその答えにたどり着いた時、不意に体がじわっと熱くなる。

 この感覚に、私は、また来た、と思ったのも束の間、目線が高くなる。




「……ほらね」




 服の裾を摘み、苦笑いをする。




「……この魔法、便利なのか便利じゃないのか分からないわ。 ちゃんと洋服も着ているしね」




 私はそうため息をついて、近くにあった椅子に座る。

(……廊下には誰もいないはず。 今日が夜会でよかったわ)



 これで今日はバレないはず。

 そう思っていたら。




(……んんん!?)






 カツン、カツン、と誰かの足音と声が聞こえる。




(……まずい、こっちに向かってる……!)





 私は慌てて、バルコニーのカーテンを閉めて、バルコニーに出たのだった。


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