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4.かけられた魔法

「リリー……た、ただいま」



 扉を開けて入ってきた直後、少しだけ頰を赤らめながらそう微笑みながら言うエヴァン王子に、私は驚いて思わず見つめてしまう。

(……エヴァン王子はもしかしたら、噂のような“冷血非情”な王子ではないのかも)

 私はそんなことを考えながら、「ニャー(おかえりなさい)」と反応してみる。



 すると、エヴァン王子はまたパァっと、少しだけ顔を輝かせ、恥ずかしくなったのか、軽く咳払いをした後私に歩み寄ってきて「良い子にしていたか?」と頭を撫でてふっと笑った。




(……い、イケメン怖い……!)




 その破壊力に恥ずかしくなった私は、慌ててベッドの下に潜り込む。



「……す、すまない。 怖かった、だろうか?」



 そう言ってベッドの下を覗き込むようにして屈んだエヴァン王子の、申し訳なさそうな顔を見て罪悪感が生まれ、恐る恐るベッドから出てみると、エヴァン王子の破顔した顔に私はやられる。

(……う、なんだこのギャップ……!)




 私がこそばゆい気持ちになってそっと視線を反らした隙に、王子は自分の服に手をかけ……。




「!? に、にゃー!?(!? え、着替えるの!?)」

「? 何だ?」




 突然私が出した声に驚いたのか、私を見てギョッとするエヴァン王子。

 エヴァン王子は少し首を傾げたが、再度服に手をかける。

 私は恥ずかしくなって、またベッドの下に逆戻りしたのだった。






 そうして着替え終わったエヴァン王子に呼ばれ、ベッドの下から出てみれば、エヴァン王子が手招きしていたのは……。




「……にゃーーー!? (ベッドの上ーーー!?)」




 そう、ポンポンとエヴァン王子は二つ置いてあった枕の内の一つを叩いていた。




「そこでは冷えるだろう? こちらに来て一緒に寝ないか?」

 その方が温かいだろう、そう言うエヴァン王子に、私は少し迷った後、寝られる場所はそこしかないと諦めてエヴァン王子が叩いた枕の上に腰を下ろした。

 するとエヴァン王子はそのまま、「おやすみ」と微笑んで、明かりを消すと、私のところまでそっと掛け布団をかけてくれてから目を閉じた。



 そんなエヴァン王子を眺めていたら、王子がふと私を見て、その口から突如心臓に悪い言葉が飛び出す。




「……ふふ、お前の体温は温かいな。 とても落ち着く」



 そう言って目を瞑る王子とは裏腹に、私はきゃーーー!!と思わず声を出しそうになった。

(なになになになに、この人本当無意識怖い……!)



 そんな私をよそに、エヴァン王子から穏やかな寝息が聞こえ始め、私はようやく落ち着きを取り戻した。

 ……夜行性だから眠れない、と思った私は、とりあえずこのまま、オフィーリア様から頂いて飲み込んだ光の粒……“情報”をもとに、現状把握を開始することにした。






 簡単に要約すると、オフィーリア様のかけた魔法はとんでもない魔法だった。



 この魔法は、自動的に一ヶ月で切れ、人間に戻ることができる。

 その一ヶ月間はこの猫の姿で過ごさなければならない。

 万が一人間になりたい場合は、“人間になりたい”と強く願えば叶う。

 但し、その魔法は週に一度のみ、大切に使うように、とのことで。



(……いや、本当に酷い魔法をかけてくれたものね……)




 又、もっと酷い注意事項まであった。

 それは、もし私の正体が人間だとバレた瞬間、仮死状態に陥る、というものだった。

(いや、相変わらずほんっとわけのわからないタチの悪い魔法かけるよねあの人……!)



 ちなみに、仮死状態になったら何年も眠りについてしまう……らしい。 人によって個人差がある、とまで書かれている。

(いや、そんな曖昧な魔法かけるなよ)




 段々言葉遣いが悪くなってくるのを自覚し、私はいけないいけない、と首を振りつつ頭の中の情報の続きを読みこむ。




(猫の姿になる魔法を解呪するには、方法が一つ。 それは……)





 ……好きになった相手との両思いのキス。





(……んんんんんん!? 両思いのキス!?

 男性苦手って言ってるのに何考えてんの!?)




 私が独身を貫きたいことを知っていて、よりにもよってそんな魔法をかけたのか。

 本当に酷い魔女様だ。 あり得ない。




(……あぁ、一ヶ月猫の姿確定ね……)






 このまま大人しく一ヶ月間王子に飼われたら、絶対にオフィーリア様に一生独身で暮らせる安寧の地をプレゼントしてもらおう。

 それでチャラにしてあげるわ。





 私はそう心に決めて、隣で眠るエヴァン王子の寝顔を横から見つめ、先が思いやられるとため息をつくのだった。




 ☆





 翌朝。 いつの間にか眠っていた私は、先に起きていたらしいエヴァン王子に、少しあどけない表情で「おはよう」と言われ、危うく心臓が止まりかけた。とりあえず小さく、「にゃー……(おはようございます……)」と返すと、嬉しそうにするエヴァン王子。



 そして彼はゆっくりと私を抱き寄せると、頭を撫でた。




(……うっ)




 まだ男性に触られるのは慣れていないが、一国の王子に爪を立てるわけにもいかず、ただ大人しくしていると、コンコンとノックをして昨日と同じ人物……ジーンさんが入ってきた。



「エヴァン様、お早うございます。 朝食の準備が出来ております」

「あぁ、今行く。 ……なあ、ジーン」

「はい?」



 エヴァン王子は私を少しだけ持ち上げると、そっと小さく言葉を発した。



「……リリーも連れて行って良いか?」

「は?」

「にゃ?(え?)」



 私とジーンさんの声がハモる。

(どうしてだろ?)



「……リリーも、一人じゃ寂しいだろう」



(? 私も? ……確かに、エヴァン王子の部屋で一人きりだった食事は、味気ない気はしたけど……)




 私は一応、素直に「にゃー」と言って頷けば、ジーンさんは付けていた眼鏡をカチャッと掛け直して「王子がそう仰るのなら」と言って頷いた。

 それを肯定と捉えたエヴァン王子は、「良かったな」とまるで自分のことのように嬉しそうに言って私の頭を撫でた。



(……私のことなのに、エヴァン王子、嬉しそう)




 そんな姿に私は、内心可愛いと思ってしまうのだった。


明日から毎日更新させて頂きます!

1日目安1、2話あたりで頑張りたいと思います…!お読み頂けたら嬉しいです♪

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