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伝説の勇者、転生して異世界の破壊者になる。  作者: 五目時五目
プロローグ
3/8

開始、世界を滅ぼす旅

 目覚めると、そこは一面の闇が支配する空間。

 

《目覚めたようね》


 虚空から少女の声が響く。その声音は幼さを感じさせる甲高い声だ。


 しかし、辺りを見回してみても、光を呑み込む漆黒が広がるだけ。


《私の名前はアテナ。

 実は私、神様なのです!》


 得意げになって自慢するような口振りで神様とやらは自己紹介してきた。


「此処は一体、何処なんだ」


『此処は死後の世界よ』


「・・・・・・死後の世界」

 

 呟いてみて、不思議と腑に落ちた。

 

 脳裏に張り付いた最悪の光景。


 あれが現実であったとするのなら、この結末は必定。


「それで、俺はこれからどうなるんだ?」


《君には転生という選択肢が存在している》


「次の俺の人生はどういったものなんだ?」


《それは十三番目の勇者として、世界を壊す選択肢だ》


「世界を壊す勇者になれって言うのか?」


《そうだ。世界を呪っている君ならば願ってもない頼みだろう?》


「解せないな。神が世界を壊す頼み事なんて」


《何、毒を以て毒を制そうとしているだけさ。

 世界は現在、消滅の危機に瀕しているからね」


「世界の危機って、どうせ魔王が復活でもしたんだろう?」


 魔王という存在は存外にしぶとい。


 何度、封印しても平気で封印をこじあけてくるものだ。


《魔王は既に討伐されている》


「では、何が世界を壊そうとしている」


《魔王を討伐した十二人の勇者こそが問題なんだよ。

 彼等はそれぞれにチートと揶揄されるスキルを備えて転生した。

 勇者はそれぞれ人でありながら、神の領域に達してしまった》


「神の領域に達したことの何が問題なんだ?」


《神が現世に姿を現さないのはその存在が強大過ぎるからだ。

 神とはそこにいるだけで世界に大きな負担を強いる》


「一つの世界に十二人の神は多すぎるって訳か」


《そうだ。世界の許容量を超えたエネルギーは世界の自壊を招く。

 だから、私達は彼等を始末することにした》


「始末・・・・・・か」


 俺自身、魔王を倒して用済みになった途端に廃棄された。


 十二の勇者と近い境遇なだけに複雑な気分だ。


《私達は神の遣いである使徒と呼ばれる存在を派遣した。

 君達が天使などと呼ぶ存在だ。

 彼等は最初に派遣された使徒を問答無用で殺し尽くした》


 自分達の与えたスキルが原因でそこまで拗れるとは・・・・・・。


《それを契機に勇者と神々が殺し合う《神域大戦》が始まったのだが・・・・・・》


 少女が弱々しい声音で口ごもる。


 現在、俺が呼ばれていることから推察するに、大体の見当はつく。 


「結局、使徒では勇者には勝てなかったということか」


《そうだ。彼等に挑んだ使徒はその全てが屠られた。

 だが、このまま彼等を放置すれば、一年後に世界は崩壊する》


「その勇者達を始末することで世界を救えってことか」


 勇者に勇者を殺せと頼むとは、随分と皮肉が効いているらしい。


《それに・・・・・・、このまま転生しなければ、君の存在は消失するだけだ。

 君はこんな終わり方で満足できる訳がなかろう》

 

 少女の声音には嗜虐に満ちた笑みが混じる。


 そうだ。信じていたもの全てに裏切られて死んだのだ。 


 このまま終わっていいはずがない・・・・・・!!


「確かにな、このまま終わるのは気にくわない」


 世界を壊すのか世界を救うのか、そんなことは関係ない。

 

 今はこの結末に抗いたいだけ。


 あのクソッタレな世界に白旗を振りたくないだけだ。


《答えは決したと見える。

 それじゃステータスを確認してみてよ》


 俺は頭に自らのステータスを浮かべると、ステータス欄が視界の端に表示された。


《アレス・カナン レベル一〇五

筋力:一〇〇二

  防御力:一〇〇〇

  敏捷力:一〇〇〇

魔力:一〇〇三

器用さ:九九九


 所持スキル:天壌超越リミッターブレイク


「能力値が上がっているんだが」


『君は勇者だからね。能力値の上限が存在しない』


「勇者というのは役職みたいなものじゃないのか?」


『人の世ではそういう勇者の定義がされる。

 しかし、神の世界では勇者とは限界が存在しない者を指すんだよ』


 どの種族も限界値が存在しているため、勇者の成長についていけなくなる。


 無限に強くなる勇者に対して勇者をぶつけるのは理に敵っている。


《そして一振りの剣を授ける》


 少女の言葉と共に俺の右手には一振りの長剣が出現した。


《剣の名前は《真実へと至るロード・オブ・アルカディアス

 世界を創世する剣だ》

 

「世界を滅ぼすのに世界を創世する剣が必要なのか?」


《相手が神であるだけに、此方も世界を創世できるレベルの神器がなければ話にならないだろう?》


「スケールが違いすぎて、同意しかねるな」


《そろそろ第一の世界について説明を始めよう》


《第一の世界は絶対運命牢獄アカシック・パノプティコン

 運命が全てを管理する世界。

 人は生まれ落ちた瞬間にその終わりまでが定められる。

 奴隷として生まれ落ちた者は終生奴隷で在り続ける世界》


「努力が意味を為さない世界か。ゾッとする話だな」


《彼等の世界は彼等のチートスキルを基にしているからね。

 誰もが満足する世界を目指している訳ではない》

 

「それじゃ――――世界を滅ぼす旅を始めようじゃないか」


 まさかこの俺が勇者から世界を滅ぼす者、さしづめ魔王に変わることになるとは。

 

 一日前の俺に話しても、絶対に信じて貰えないだろう。


《旅の始まりだ。

 世界を存分に壊してきたまえ》


 少女が言葉を発した刹那、俺の意識は唐突に途切れた。

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