深愛
深愛 題章ページ
彼らは各々を深い愛の元生き、模索していく。未来も無いが用意された物はくだらなくなど無い。
失うために愛し合うわけじゃ無い。
1 当目次ページ
2 ZephyrGarlletSowai ~夢を見る者~
3 男ゼファー
4 雪原
5 ~冬のような女~ 詩歌
6 狼の名
7 捕獲
8 МзсаияМусон ~巡る者~
9 紫穂
10 組織ロガスター
11 アメリカ者
12 暗殺請負団体
13 出生の秘密
14 双子の再会
15 早鬼籐の憂鬱
16 紫穂の死
17 マーティー
18 DaronGabrielGald ~奪う者~
19 デイズとディアンの消息
20 リカーの伯父ジル
21 リカーの死
22 ジョスの死
23 水葵の死
24 森長と早鬼籐
25 紫穂の生き返り
26 メサイアとゼファー
27 MM追跡
28 メサイアの死
29 ゼファーの憂鬱
30 白狼
31 出会い
32 再会
33 ジェゼイア
34 ダイランの死刑宣告
35 亜紀羅の策略
36 女殺し屋
37 牢獄
38 死刑取り消し
39 自由になった狼女
40 輪廻転生
41 闇の中の銀色
42 still……
43 闇の転生
44 闇
45 ゼファーの輪廻転生
46 シルバーファントム
47 シルバーファントムの死刑
48 闇夢
49 愛の賛歌
ZephyrGarlletSowai ~夢を見る者~
ゼファー=ガルレ=ソワイ
元来黄金の髪と瞳であるが、後に闇色の髪と深海色の青の瞳になる。
彼は古代人魚大国の王子として生を受けた。
彼は邪念を持ち生まれ、双子の兄を殺したのは齢3歳の事だった。
彼には考えがあった。
父と母を監禁し、自らが国を治め、国民を法律で拘束し、とある研究材料を確保する。
『夢で見た女に出会う為、永遠の命を手に入れる』無謀な人体実験。
夢の女と同じ人間の足を手に入れ、出会えるまで生きる体。
そして彼は多くの犠牲を敷き、それらを手に入れた。
国を滅ぼし、彼は生き続けるが、それは孤独との戦いの始まりだった。
彼の産まれた1億5千年前は、人類などいなかったのだ……。
男ゼファー
1億5千年後の地球。
山脈で男はとある美しい白狼と出会った。
狼は大きな雌で、その月光の元毛並みが美しく凛とした物腰に彼は惚れ込んだ。
男はしばらくその狼と過し、やがて一人山脈を降りた。
いつか、また逢いに来るからと。
狼はその男に思いを寄せた。
雪原
雌狼は夜の雪を見上げた。
白の世界は美しい。
スターダストは銀に煌き、彼女は見回すが、彼はいない。
どこを振り向いても白の世界で、彼女は歩く。
足跡が、花びらの様にてんてんと、ついていく。
いくら人間食べようとも人間にはなれないのよ。
分かっている事なのに、凄く悲しかった。
ハンターは人食い狼を山脈に捨て、去っていった。
その男に恋をしてしまったのは、一目見た時からだ。
人間になりたいって、いけない事とは思わない。
『お前に名前をつけてあげなけりゃあな』
とびきり綺麗な名前を。
狼は白の毛並みのとても美しい大きな狼だった。
だが、その名で呼ぶ前に、狼は人を襲った。
人間の女に馬鹿にされたからだ。
捨てられて……狼は思った。
あたしはあなたが迎えに来るまで待っている。
貴方をあたしは忘れない。
貴方がどんな姿で現れたって、あたしには見破れる。
その自信がある。
お願い。あたしの事を忘れないでいて……運命の人
月光に彼女は吠えて、彼を思う。
目覚めると思う。
あの人が……あの日の様にいてくれる事をよく思う
それでも狼がその命を終えても、彼は現れることは無かった。
";}i:4;a:2:{s:8:"subtitle";s:16:"~冬のような女~";s:4:"body";s:966:"木枯らしが吹きすさび 雪の下へ全てが隠れて行くわ
木々たちは息を潜めている ……ね、聴こえる?
冬の支度をしなくては
銀花たちが花びらを広げゆく
……ねえ貴方にも、聴こえるかしら?
白のヴェールを翻し ラララ 唄う
雪たちの美しい歌声が キラキラと囁いて
耳を澄ませて 耳をそばだてて ホラ、ゆっくり頷いて
全てを包み込む柔らかな言葉が 貴方へと届くように
月光さえあたたかな色をたたえている
見える?そっと目を開けて 静かに見上げて
優しい息吹が 森の中通り過ぎて 行くけれど
立ち尽くしてみると 語り掛けて来るよう
白の野 銀に輝く中 足跡をつけてみようかしら
そっと、そっと花びらが辿るように
はだしで何処までもそっと歩みゆく ね
結晶たちはあたしを包み込み スターダストたちが煌くわ
視線を風に持って行かせて
白の森の中振り向くけれど
いつまでも美しい世界は広がるから
歩み行く その中の一部に あたしもなりゆく
吐息が 煌くように 柔らかく微笑んで 雪の中
木枯らしが吹き荒び 全てを雪の下へ送るわ
聴こえるかしら……貴方にも
狼の名
グローリア。
美しい狼に似合ったその名を思いついたのは、捨てに行った後だった。
彼女の思想をダイヤモンドダストに乗せ、男に伝える。
彼女は銀の長い髪を風に流させて、柔らかな真っ白のドレスに身を纏い、雪原を歩いている。
月を見上げ、柔らかく歩いていく。
『再び出会えることや笑い会える事、貴方と愛し合う事、奇跡だ何て思って無い。ずっと夢見てきた事。何度も、真実の様に……
叶わない事、諦めるしか無い夢……それでも、
全てが全て、一つの軸の上を廻ってるって、思わない?』
美しい女は雪原を行き、夢で見た女は独り歩き、月を見上げて彼を思っていた。
男は瞳を閉じ、顔を覆った。
繁殖の研究
雌狼は人間達に捕獲された。
狼を増やすためだ。繁殖を目的とした研究である。
狼は随分と前から、どこか諦めていた。
彼に再び出会う事だ。
狼は研究所に連れて行かれ、遺伝子を採取されると山に返された。
だがどんなに狼が待っても現れなかった。
狼は待つ内に寿命を向かえ、眠るように目を閉じた。
МзсаияМусон ~巡る者~
メサイア=ムソン
彼女は美しいプラチナの髪と水銀色の瞳を併せ持つ、シベリア狼のような女だ。
「どうしようどうしよう兄貴」
彼女は兄が冷たく鋭凛とした顔を呆れさせ見てくるのを、いじけたように目を伏せた。
そこは富を築いた彼ら双子の城。兄は富豪達を相手にした多角化実業家でもある。彼はシビアな性格だ。
メサイアはインターネット内で富豪達を相手に多くの趣味団体を総括するオーナーだった。彼女は自由奔放でナチュラルな性格だ。
資本金は闇組織での殺しの仕事。
兄水葵は殺し屋でもあり、メサイアは組織での兄の影武者だった。
水葵がMMという名で社交界に進出したきっかけは元パートナーの女、紫穂を探すためだった。
彼女はきっと、どこかに現れる筈だ。網を張っておけば。
水葵は豪華な遊び全てを網羅し、紫穂が帰ってきたら彼女と共に全ての世界を堪能するつもりでいる。
メサイアは兄の全てにおいての影武者だった。MMとしても同様。
社交で現れるMMが、実は双子の兄妹だとは誰一人として知らなかった。
「困ったわ。まさか間違えて送ったなんて」
趣味団体の一つである自殺者映像を、顧客と間違えて他人に転送してしまった。
それが、始末悪いアメリカ者の刑事の自宅のパソコンだった。
MMは目を付けられるだろう。
紫穂
彼女は水葵との間の息子、亜紀羅の髪を優しく撫でた。
彼女はブランドピアノを弾き語り、子守唄を歌う。
「子山羊が3匹おりました
とってもとっても小さくて
真っ白毛皮はあったかね……
いつでもいつでも寄り添って
ママの帰りが遅いねと 身を寄せ合って待っている
香る芝生の上でまた
お花が咲いて咲き乱れ……白い花びら混ざり合い
そんな中を待っている」
彼女の胸元で、保護者ユリアの形見のブラッククリスタルの十字架が輝いた。
陽が屈折し、彼女の体力を放射能で弱らせていく。
徐々に、誰も気づかぬ間に放射能は黒の輝きを持ち、放出される……。
太陽は天を陣取った。
白く輝き、亜紀羅は何時の間にか眠りについた。
銘器、ベーゼンドルファーを静かに閉じ、彼女は穏やかに微笑み亜紀羅を見つめた。
組織ロガスター
全ての社交を打ち消して、水葵は殺しの仕事へ向った。
ある国の王女が手当たり次第に他国の国王と関係を結び子を設けている。
王女はそれらの国の実権を裏から握るため、産まれた子供達をその王室へ送っては、影から国王達を脅迫していた。スキャンダルを国王達は避け、その国の王女の要求をのまずにはいられなかった。
国王達はロガスターに王女と彼女の子供達の暗殺を依頼した。
その依頼を受けたのが水葵だった。
社交界で多くの情報も手にする彼は、徐々に王女亡き後の後釜を決め選別するべく、仕事をこなしていく。
アメリカ者
警部ダイラン=ガルドは上司に依頼され、MMが現れる社交界へおもむいた。
MM、水葵はメサイアの尻拭いをするために現れたわけでは無い。
邪魔者ダイランを挑発するためだ。そして、パーティーに現れるターゲットの王女を自殺映像に加えるべく、その舞台となる会場に現れたのだった。
ダイランは完全にMMに目をつけた。
カーベル
ゼファーのカラス少女カーベルは死肉を食べる習慣を避け山脈を逃れ、ゼファーについて行き花を主食として生きていた。
だがある日、元の性質がゼファーといることで暴発しダイランのいる街で食人事件を引き起こす。
同じくそのころ、男ゼファーと山脈で出会った狼の魂を受け継いだ山脈の狼も何代目かになり、すでにゼファーを待つ間に巨大な白狼になっていた。
その白狼は街にゼファーが現れた気配を知り、山を下山する。
すると食人事件が勃発していて人間の刑事ダイランに少女カーベルが捕まる寸前だった。ゼファーと同じ雰囲気の少女だった。
本能的に白狼は少女の服を口にくわえて疾走し、ダイランから逃れた。
その先でゼファーがカーベルを連れてきた白狼に驚き、ともに山脈へ戻る。
白狼は再び山脈で男ゼファーと過せることをよろこんだが、ゼファーは生きているものとずっと共にいることが出来ない体だ。
再び白狼を山脈に残し、ゼファーは去って行かなければならなかった。
再び白狼は山で待ち続けることとなる。
ゼファーはカーベルと共に再び旅を続ける。
暗殺請負団体
ゼファーはマーティーと名乗り、暗殺請負団体を設立していた。
数年前、仕事が被ったロガスターの幻の殺し屋、WALSSはマーティーに誘われ、早鬼籐の名で組織の最高司令官をする傍ら、時々団体に加勢していた。
ゼファーは様々な顔を持っていて、FBI捜査官としても謎の多い大富豪MMをダイランと共に調査していた。
ゼファーはダイランにMMが殺し屋である事は言っていない。
そして、その彼に会った事はまだ無かった。もちろん、メサイアにも。
出生の秘密
水葵とメサイアはエジプトの国王とフランス系ロシア人の貴婦人との間に生まれた双子だった。
その出生をしられるわけにはいかず、母親は日本で彼らを生んだ。
双子は貴族の間では縁起が悪い。
「片方を殺してちょうだい。こんな未熟児のままでは片方を国へは連れ帰れないわ。どちらかがしっかりした赤子になったら連絡をよこしなさい」
母親はロシアへ帰って行った。
妊娠4ヶ月で出てきてしまった彼らは明らかにカプセル育ちを言い渡された。
栄養の行き届かない髪は黒でもブラウン、金髪でもなく、灰色に違い銀色で、肌の色もありえない白さだ。
残酷な命令を受けた医者は赤子に手をつけられなかった。
そんな折に、一組のカップルが病院に現れた。
12歳の女は死産した。医者はすかさず、双子の兄を父親に見せた。
「森長さん。息子さんが生まれました。母体が母体だったため、未熟児ですが、これからゆっくりカプセル内で育てていきます」
父親は安心した。
一方の妹の方は、検査の為に研究所に寝かされていた。
そこに現れたのが特殊なペット遺伝子の注射を持った博士だった。彼は助手と共にえらく興奮していた。
人食い狼の遺伝子を他との遺伝子に組替え、犬に注入しやすくした物だ。
成功したあかつきには、学会に報告できる。
ペット研究会の博士は興奮しながらも足を滑らせた。
注射針グサッ
「………」
彼の目の前に、とても小さな赤子がいるではないか。
「………」
狼の遺伝子は双子の妹に注入されてしまった。
その事で強靭な体力を身につけて健康になっていく赤子は、ロシアの母親の元に返された。
兄である赤子は数ヵ月後、日本の一般家庭へ向った。
";}i:13;a:2:{s:8:"subtitle";s:10:"双子の再会";s:4:"body";s:808:"水葵は親を組織に殺され、ロガスター入りしたのは14歳の時だった。
彼は彼の中で至上意識と闇のような哲学世界に幼い頃から身を投じていた。
父を殺された怒りは強大だったものの、殺しの仕事はいとわなかった。
破壊的神の存在を彼は追い求めていた。
父親が組織に殺された理由は、水葵が組織の秘蔵っ子、紫穂に出会ってしまったからだった。
一方メサイアはロシアの屋敷を出ていた。奔放主義の彼女は男と共に豪快に暮らしては様々な趣味にいそしんでいた。
そんなメサイアが生き別れの兄水葵と出会ったのは、水葵の殺しの仕事中だった。
水葵は同じ顔の女、銀の髪と瞳、派手な顔つくりを強調させるような長いまつげとその大きな瞳をぐるりと囲う黒い際、ローズクオーツ色の大きな唇の猫顔の彼女に驚いた。
水葵はメサイア=ムソンと名乗ったその女を、自分のいる組織に誘った。
その日からメサイアは水葵の影武者として生き始めた。
早鬼籐の憂鬱
彼は無感情であったが、紫穂と出会い彼女を最高司令官ユリアと共に育てていくうちに、知らぬうちに感情を取り戻し始めていた。
その彼女はユリアの死後、美しく成長を遂げ、その腕も上がっていき、プロへなる為に選りすぐられた人材をパートナーにする。
森長水葵。
彼は並外れた力を持っていた。だが、7歳の頃の紫穂に出会ったために親を殺された青年だ。
それでも組織の決定した人材だ。
2人はパートナーになると、愛し合うようになった。
水葵は紫穂にサディスティックな愛情を植え付け、彼女は彼からいつの日か逃げた。
森長水葵は彼女を今、待ちつづけている。
彼がMMという名で社交界に出ている事は分かっていた。
彼を付けねらうアメリカ者、ダイランの事を早鬼籐も目をつけていた。
彼は鍛え様ではいい戦力になる。だが、絶対に組織には向かない男だ。彼はダイランを様子を窺っていた。
ダイランの種の母親はメイキャップブランド社長の傍ら、先代である彼女の伯父から続くロガスターのスポンサー、委員会メンバーだった。
委員会メンバーは数年前、勝手に水葵の父親を殺させたり、多くの顰蹙を買い、水葵のプロ採用テストの内容で殺されていた。
今一新した委員会からダイランの母親はと遠ざかっていた。
ダイランの母親の伯父は、ロガスターを初代ボスと設立させた人物で、開発事業を世界中で執り行ってきたロガスター先代委員長だ。基地を設計したのも彼だったが、ダイランの母親に権力を奪われ殺されていた。
その伯父との間に生まれたのがダイランだったが、息子はその事実を知らずに母親に打ち捨てられたスラムで育ち、今や警部になっている。
MMに目をつけるダイランにも、ロガスターを追うFBIにも早鬼籐は悩まされていた。
そして、医学長でもある彼は、ユリアの体も襲っていた原因不明の病気の研究を推し進めているが、それが紫穂にも現れた事で焦っていた。
紫穂の死
彼女は裏ボスとして日本の屋敷から現最高幹部長、早鬼籐に命令を下した。
森長を生かし、組織を貴方の手で撲滅し、息子の生存を確保してほしい。
ロガスターの血縁の本家である水天宮財閥団の屋敷で生きつづける幼い亜紀羅は何も知らずに、ある日消えた母親が死んだことを知り、ショックを受けた。
父親の話によると、彼女は交通事故で亡くなったのだそうだ。
当然、パートナーだった愛し合う男水葵も元で自殺したなどとは知らない。
水葵はロガスターを滅ぼし、WALSSの正体、早鬼籐を殺して殺し屋を引退した。
彼はメサイアから見ても憐れなほどショックを受けていた。
どんなにMMとして彼に気を紛らわせようと、彼は自殺行為を止めなかった。
マーティー
水葵は日本で出会った女との間に子供が出来た事で結婚した。
メサイアは水葵に頼まれ、夫としての影武者までやらされていた。
水葵は早鬼籐が死んでいなかった事を知っていた。
組織を滅ぼして1ヵ月後、彼が暗殺請負団体のメンバーとして鉢合わせたからだ。
その時、水葵はマーティーというリーダーと初めて会った。
彼はマーティーに団体に勧誘されたが、断ったのだ。
そして水葵は産まれた息子の幼稚園の入園式で再び早鬼籐と出会う。彼も団体を離れ、何時の間にか父親になっていた。
その頃から水葵は誘われて団体に加わるが、面倒な時や社交の時期はまたメサイアを影武者に団体に加わらせていた。
メサイアはマーティーに一目惚れした。
マーティーは水葵からは紫穂を失った悲しみを相談され続け、双子だとは気づいていないメサイアからは心の不安を相談され続けていた。
メサイアは、何故か何かの闇に冷たく浸蝕された感情が住み着いていたからだ。
まるで氷の椅子に座らされているような悲しい感覚。
まだゼファーもメサイアも、互いが運命の元引き合った関係にある事は気づいていない。
DaronGabrielGald ~奪う者~
ダイラン・ガブリエル・ガルド
彼は獅子の様に勇ましい男だ。太陽の様に。金髪にエメラルドの瞳、健康的な肌を持つ。
ダイランはロガスターが滅んでいた事を知り、MMを追う中、地元でのギャングに手を焼いていた。
ギャングのボス・デイズは彼の幼馴染のユダヤ人だ。その男はダイランから育ての親父を殺し奪って、それを依頼した街の権力者である女は彼に金を与え、それを資本金にファミリーを形成させていた。
ダイランはそのデイズの兄には血の繋がらない妹を狂わされていた。彼女は精神病院で自殺し、ダイランは薬にのめり込み、いつしか金融操作の快楽を見出すとデイズの鼻を明かすためにアングラを仕切る術を手にしては、殺された家族のショックを和らげるために薬に没頭した。
ダイランはギャングの人間からは悪魔になった天使ファッキンルシフェルと馬鹿にされては自身はガブリエルの名も、DAMONを変え付けられたダイランの名も嫌っていた。
彼の第二の育ての親であるバーのマスターは無謀を続ける彼を心配しつづけでいた。
それも、彼はデイズもファミリーを立ち上げる噂を聞き、アングラから影をひそめてデカになった。
デイズと兄、ディアンを死刑台に上げる為だ。
彼は警部にまでのし上ると、MM、謎の崩壊した組織、デイズを追いつづけていた。
そしてMMとしてダイランの前に現れていたメサイアは、ゼファーに出会う前からダイランに惚れていた。
メサイアはマーティーに惚れる傍ら、同僚の刑事、フィスターと結婚したダイランと浮気をしていた。
当然、ダイランは上司にはその事は言っていない。MMを探るためと心に言い聞かせはするものの、ダイランは確実にメサイアに惚れていた。
それをフィスターは見逃してやっていた。ダイランをMMは権力を使っていつでも奪って誘拐して行くのだ。フィスターの目の前で。
あんた、いつも独占してるんだからいいじゃない。と。
デイズとディアンの消息
ダイランがフィスターと結婚をする前に、彼等兄弟は姿を消していた。
ダイランは怒り狂い、ファミリーの誰もが焦っていた。
既にアメリカ全土のルート改正をファミリーは推し進め、巨大化した時だったからだ。
ファミリーも州を移し、管轄外のダイランには手がつけられなくなっていた時でもあった。
デイズとディアンを浚ったのは、映画監督の顔を持っていたゼファーだった。彼はダイランの母親リカーに依頼され、街の実権を奪い脅迫してくるファミリーのボス、デイズを撮影に巻き込み事故に遭わせ姿を消すように依頼していたからだ。
ロケと偽り、撮影団体はアメリカを去っていった。
デイズとディアンがそのロケ地から帰ってくることは一生無かった。
リカーの伯父ジル
リカーに殺されていた筈の元組織委員会会長ジルは、ロガスターの人間に助けられていた。
彼は顔を変え、その時代のボスにリカーを泳がせ、ジョス=マルセスという名で街に戻っていた。彼はスラムにバーを開き、リカーと街の様子を窺いつづけていたが、リカーが幼い赤子をスラムに打ち捨てた。
それが、ダイランだったのだ。
リカーはうらぶれたバーのマスターの正体に気づき、愕然とした。
あたしの子、悪魔のデーモンをもじってダイランと名付けた我が子を、彼が、ジルが育てている。
彼女は現地主としての権力をジルから奪い、様々なスキャンダルを消しつづけてきた。
ジルとは愛し合ってはいたが、欲に目が眩み殺害した彼が生きていた事実は彼女をショックに陥らせた。
リカーの死
ダイランがリカーの死を知らされたのは、職場での妻からの言葉だった。
「リカーおば様が、亡くなられたって……」
ダイランはその事で、彼女の後を継がざるを得なくなっていた。
その為に5つ子達と共に屋敷の本邸である古城に住まなくてはいけなくなった。
ダイランは貴族嫌いで、リカー嫌いで、地主の権力には毛頭興味は無かった。
リカーの秘書だった中国女は警察など止め貴族らしく振舞えと注文をつけてくるし、地主としてしっかりして下さいといつも怒鳴ってくる。
だがダイランは警察を妻と共に辞める気など毛頭無い。
謎の大富豪MMを追いつづけ、FBIに加わり滅んだロガスターの生き残りとされる3人、殺し屋WALSS、殺し屋シルバーウルフ、最高司令官の存在を追いつづけていた。
殺し屋シルバーウルフの正体が、あの食えない金持ち、涼凛とした華のある顔のなんでもビジネスマンMMだと知った彼は大いに激怒した。
MMが自分でばらして来たからだ。
そして、MMはダイランの前からも社交界からも姿を消した。
ジョスの死
ジョスが実は誰もが恐れていた悪魔、ジルであった事や自分がリカーとジルの間の息子であった事が、リカーの手紙から分かっていた。
彼が亡くなったのは寿命による物だった。
ダイランは大きなショックを受けた。
ジョスだけがダイランを小さな赤ん坊の頃からずっと見守りつづけてきた存在だったからだ。
彼がどんなに、苦しむダイランに接しつづけて来た事か。
本当は、俺がお前の本当の父親なんだとどんなに言いたかった事か。
親父と妹を失ったダイランを、息子として彼をどんなに温かく抱きしめてあげたかった事か。
全ての心がダイランには分かっていた。自分の本当の父親だとは知らなかったとしても、ダイランはマスターを自分の第二の父親だと生前から言いつづけてはマスターが嬉しそうに笑う顔を見つづけて来たからだ。
水葵の死
ある日、紫穂の幻を見つづけていた水葵は、双子の城の自室で自殺してしまった。
紫穂のリボルバーが彼の小さな頭をついに撃ちぬいたからだ。
メサイアの止める目の前でだ。
水葵はマーティーに相談し続けていたものの、マーティーはその事にいつしかうんざりし始めていた。
そして言ってしまったのだ。
「それなら勝手に自殺でもすればいいだろう」
弟の様に思っては自殺を思いとどまらせるよう長年接して来ていた水葵だったが、確実に良心という物はゼファーの不死の体を痛めつけていた。
良心を持つと、激痛を走らせる設定は1億年以上も前に殺された多くの国民の呪いによるものだ。
水葵はその言葉にショックを受け、自室に戻り、頭を撃ちぬいた。
森長と早鬼籐
彼等の家族が闇組織に襲われた。WALSSとシルバーウルフ情報が流れ、彼等を率いてるためだ。
メサイアは兄の家族を失い、早鬼籐は家族の下を離れ、マーティーの団体に加わった。
その1ヵ月後、他の暗殺組織が紫穂の息子、亜紀羅の生誕パーティーを襲撃した。それをマーティー率いる団体が阻止し、メサイアは紫穂そっくりの亜紀羅に困惑し、そして怒鳴り叫んだ。
「紫穂を変えたのは誰だ」
紫穂が死ななければ、再会後不可解に自殺などせずに水葵を受け入れてくれれば水葵は自殺しなかったからだ。
財閥団当主としても、若きビジネス貴公子としても成功を収めていた亜紀羅の正体を水葵もメサイアも知らなかった。
それを知っていた早鬼籐はその事実を言った事は無かった。
亜紀羅を真っ当な経歴の元に置きつづける為だったが、水葵を名乗るメサイアが亜紀羅を殺そうとしたために事実を言った。
紫穂は妊娠により体力を奪われ、殺し屋として組織にい続ける事は出来なくなり、そして発覚した病魔を組織に知られないために去らざるを得なかった事と、亜紀羅を真っ当に育てるためには過去の産物の組織を滅ぼす必要があった。
水葵がいかに踊らされていたのかが分かり、メサイアは殺気も失せてショックを受け、銃口を下げた。
そして、彼等は再び闇の世界へ戻って行った。
紫穂の生き返り
MMが社交から姿を消した理由は、家族を奪われた事と、団体に加わった事、そして、紫穂が生き返った為だった。
妙な事が置き、ゼファーと同じ不死の女が彼女を生き返らせたのだ。
一度は失った恋愛ゲームを紫穂、水葵、早鬼籐とフェアに始めさせる為でもあったが、元より水葵は死んでいる。
遅かったのだ。
マーティーも団体を辞め、美人紫穂と恋人メサイア、早鬼籐の隠れ住む街へ向った。
ダイランは姿を消したMMを血眼で流した。
メサイアとゼファー
ダイランを諦める気持ちも無かったものの、隠された街でメサイアはゼファーと愛し合っていた。
互いに運命だとか、宿命だとか、そういう物もかなぐり捨てて平穏に過ごしていた。
そんなある日、ダイランはMMをおびき寄せるために自宅の城で社交パーティーを開く。
それを知って、メサイアは紫穂と話を合わせてダイランに挑発しに行く計画を立てた。
メサイアは、混沌とした物にはもう耐えられなくなっていた。
死によって失う運命の事だ。
永いときを経て輪廻転生しつづけた彼女の体にはその闇が根付いていた。
感覚で分かっていた。
隠された街でゼファーと気兼ね無く愛し合うようになると、その感覚は大きく増していった。
だから、ダイランに助けを求めるためだった。
MM追跡
水葵としてのMM扮するメサイアはパーティーでダイランにけしかけ、パーティーに揃って現れたMM、紫穂、ゼファー、早鬼籐はダイランとFBIに追われる事となった。
一気に世界中に国際指名手配され、4人は世界中を逃げる。
ダイランはCIAに上司命令で加わると、彼等を追い始め、追跡劇が始まった。
パーティーで、メサイアはダイランに不可解な事を言ったのだ。
「ゼファーと共にいたらあたしは死ぬ。だから、助けて欲しいの」
そして、
「あたしは、追われた先、あなたになら殺されても構わない。死刑にされたって構わない」
そう言い残し、会場を去ったからだ。
愛する女を殺せだと?
上司命令だ。
ダイランは世界中を駆け回った。
メサイアはゼファーとは別に逃げつづけ、紫穂はずっと早鬼籐と共に隠れ住んでいた。
逃亡劇を利用し、メサイアはゼファーの運命から逃げたのだ。
そして自分の支柱だった兄貴、水葵を失ってから、影の存在でありつづけた自分がMMとして陽を浴びつづける事にも空虚を見出していた。
メサイアの死
ダイランはMMを追いつづけ、そしてメサイアは自らダイランの前に姿を現した。
ダイランは彼女を銃殺した。
ゼファーの憂鬱
影であったメサイアは光の存在であった水葵を失い、長い時を待たずして双子は死んでしまった。
MMとは、森長水葵のmmであり、メサイア=ムソンのmmであった。
そして、切ることの出来ない固い結束、 Mizuki & Mзсаия として水葵が命名したMMだったのだから。
メサイアの死体と倒れるダイランを発見したゼファーは愕然とした。
ダイランは抱き寄せるメサイアの背から拳銃の全弾を打ち込み、心中を図っていたからだ。
既にメサイアは死んでいた。
ダイランは気絶していたものの、息はあった。
ゼファーはダイランを運び、彼は病院で目覚めた。
ダイランを殺しはしなかった。
自分からメサイアが逃げ始めた事はわかっていたからだ。疲れていた事を。
メサイアの死体を山脈の雪の中に埋めたゼファーは、同じような不死の女、キャルビダに彼女を生き返らせるために向う途中、早鬼籐から連絡を受けた。
「妊娠していた紫穂が、子供を産んで亡くなった」
ゼファーはその事もあり、キャルビダにメサイアを生き返らせる事を悩んだ。
早鬼籐は言った。
「これもつかの間の幸せだったんだ」
白狼
山脈の年老いた雌狼は何かを見つけた。
もうたくさんの狼を生み子育てをして白い狼の子供たちも何匹も巣立たせてきた。
時々子供が孫まで連れている子供狼の群れを見る。
そろそろ自分の意識も朦朧としていた。だから、どこか最後に眠れる場所を探している。
随分生きた。
あれはなんだろうか。
雪の中に何かが埋まっているではないか。
それは、見たことも無い人間だった。体は死んでいる。
最後の餌にしようと引っ張り出し、洞窟へ運んだ時だった。
既に老体には体力も限界でその場にふたつき倒れた。
メサイアに着く時空と運命の魔神が目を覚ました。
狼に乗り移り、メサイアの死体に狼の記憶、内臓を移植した。
その内に、年老いた狼の体は眠るように一つの生命を終えた。
元々狼の遺伝子が組み込まれた妙な体構造のメサイアにはどうやら可能だったようだ。
彼女は城で、よく狼の遺伝子が暴発しない為に主治医から特殊な注射をされていたのだが、それも逃亡劇でおろそかになっていた。
メサイアの記憶は失ったものの、狼はその女の体を乗っ取った。
彼女は山脈を降りることにした。
出会い
人間の革を被った狼は、自分の年老いて寿命を迎えた死体の毛皮を自分の形見としてジャケットにし、野生の馬を捕まえ山脈を降りていた。
そので出会ったのがオーデンという男だった。
彼は妙な女、美人な成りで四足歩行をするし、グルルンしか言わない彼女を連れて街に下りると、驚いた。
その女の顔は、国際指名手配されている元巨大組織の殺し屋だったからだ。しかも、イカレついででその組織を崩壊させた大富豪MMという顔を持つ人間。
それが実は女だった事さえばれてはまずいと思ったオーデンは彼女に言葉を教えながらも顔が分からない程度のメイク方法を教え、サングラスを掛けさせ街を離れた。
とはいえ、狼は「オーデン、オーデン」しか喋らずに、返事を全てそれでまかなっていた。
そうやって2人で隠れ逃げる中だったが、MMの顔を知る男の部下にオーデンは殺され、狼は連れて行かれた。
男はリカーに恨みを持つ男で、その息子のダイランを失脚させるための殺し屋に仕立て上げた。
ゼファーも早鬼籐も姿を消したまま、ダイラン達CIAは焦り、月日が経過した。
再会
ダイランは謎の女殺し屋、night jokerをCIA隊員として追跡していた。
その頃には既にダイランは地主としても落ち着き始め、警察組織での地位も確立しきり、FBIでは捜査官主任を任されていた。
そして、数年前からMM達4人を追う傍ら、ジルの遺産を受け渡しに来た富豪達のみで出来上がる怪しい組織、特殊警察でも上層陣の地位を獲得していた。
ジルはロガスター委員長の傍ら、その特殊警察からモーションを受け、上層陣に加わりロガスターの情報を流していたのだが、それもジルの思惑だった。その時代の先代ボスと照らし合わせ、特殊警察の情報全てをロガスターに流しては組織運営の邪魔にならないように図っていたのだ。
ジルの遺産というのは、特殊警察としての地位だった。
ダイランはそれも嫌がっていたのだが、受けざるを得なかった。
ダイランはあの大富豪MMも特殊警察に加わっていたのでは無いかと踏み、様々な怪しい点のある特殊警察をCIA隊員として張っていたのだ。
だが事実、MMが加わっていた記録は皆無で、死体が消えた事で死刑事実の取り上げられていたMMを、特殊警察の人間が確保している事も無かった。
そんな中で現れたnight jokerは、仮面をつけ、黒のライダースボディースーツに身を包み、肩に白狼の毛皮ジャケットを掛け、大型バイクで現れ、拳銃で自分を追うダイランの前に現れたのだ。
彼女は炎に包まれる工場廃墟の中、ダイランに攻撃され仮面が落ちた。
腰まで長いプラチナ色の緩いウェーブ髪が彼女の妖艶冷美な顔の輪郭をなぞった。
ローズクオーツ色の唇は笑顔を知らない顔で、その肉体は生前のメサイアの物とは明らかに違う、グラマラスな物だった。その体をボディースーツが包んでいる。
違う。メサイアじゃ無い。
ゼファーが彼女の死体を持ち去ったのは確実と思われていた。
奴は自分を殺さなかった。
ゼファーとの事を知らされたダイランはゼファーにずっと嫉妬していた。彼女が死の間際、自分の名で無く、「ゼファー」と言い、息を引き取った事に激しい嫉妬を覚えたのは確かだった。
じゃあ、俺の存在は一体なんだったんだよ。
妻のフィスターは4人の現れた宴の会場で、ダイランに冷静になってと言った。
彼等の危ない恋愛ゲームにはまるつもり?彼女をあなたが奪えば、あのとんでもないゼファーにあなたは目を付けられる事になるのよ?
確かにそうだった。だが、メサイアは逃げることを決めていたのだ。
ゼファーから。
兄の影武者として生きて来たメサイアは、あの美しいプラチナの髪も長くすることも出来ずに、そして痩身を保っていた。男の様に振舞う事で女性ホルモンを押えていた。
それが彼女固体になれば?
目の前の女は女だった。顔はメサイアだ。だが、雰囲気が異なった。
それでも、ダイランが致命傷を受けた筈の彼女の腹に機関銃の銃口を向けると、彼女の反応は大きかった。
どういう事だ。メサイアであって違う女。
まるで、狼のような威厳を称えた女殺し屋。
night jokerはダイラン暗殺を諦め、その場を去って行った。
後の残るのは、闇を打ち消す炎だけとなった。
ジェゼイア
night jokerは教育者の男にJ、ジェゼイアと名づけられていた。
彼女はオーナーの老人を嫌っていた。オーデンを殺させ、陰鬱な湿地帯の石の城に彼女を閉じ込め、殺人をたたきつける。
ダイラン暗殺に失敗し、また彼女の顔に杖が飛んだ。
こんな奴、絶対に今に噛み殺してやる……。
だが、転機が訪れた。
老人がJの教育者に毒殺され、その教育者がオーナーになったのだ。
あとは追跡してくるダイランをJに暗殺させれば邪魔者は消えると新オーナーは思い、彼女をダイラン暗殺に向わせる。
ダイランの死刑宣告
地主としてのNYでのクリスマスパーティー時、特殊警察の人間が発砲された。
その発砲された男の妻ガライアに恨みを持つ人間の仕業だった。
そのガライアから夫や息子を奪う目的だ。
その捜査にあたることになったダイランだったが、そんな夜、何者かの手により、あらぬ過去がネットやテレビ、ニュースで明かされた。
特殊警察が保持していたダイランの生後からの隠しカメラ映像だ。
メンバーの血縁は一方的に生後からの犯罪を全て記録に残す為に監視員が影から付き続け、映像を取られていた。
そんな物は上層になれば記録消去される筈だった。
だが、何者かによって映像は持ち去られていたのだ。
若い頃からのアングラで動きつづけて来た裏のファミリーボスとしての顔や、デイズ率いるギャング達を私怨から暗殺していく映像、青年時代のチームを率いる派手な銀行強盗などの全ての映像がアメリカ全土のテレビ局に回され、放送された。
警察組織のお偉い、大地主としての皮が剥がれ落ちた時だった。
クリスマスの夜、彼は死刑宣告を受けた。
だが彼にはまだ遣り残した事がある。
MMの体と思われる女殺し屋を死体で持ち帰らなければMM追跡は終わらない。
亜紀羅の策略
亜紀羅は秘密裏で特殊警察に加わり、自分の血縁の興していた過去、黒い存在として影を落とすロガスターの記録を全て消す必要があった。
その為に加盟し、それと共に姿を消した生きていた母親を探す目的があった。
だが、特殊警察の手を持ってしてでも母親を見つけ出すことは出来なかった。
富豪仲間としても交友のあったダイランに母を必ず探し出して欲しい旨を伝えつづけてきたが、それも叶わないまま、月日は去っていったのだ。
これは、ロガスターの裏と亜紀羅との関係を知るダイラン、早鬼籐には消えてもらわなければ困る。あの父親、MMは死んだ。後は2人。早鬼籐には長年組織に仕えて来たんだ。最後までこちらの意の内に組織撲滅と共に死んでもらわなければ。
亜紀羅は映像を持って行ったと共に、特殊警察から脱退した。
そして映像をある人物を使って局に送らせたのだ。
特殊警察官の妻に恨みを持つ元特殊警察官の男達を影から操り、混乱と共にダイラン破滅を導かせる映像を送らせ、FBI長官にも影から手を渡し、ダイランの死刑を促した。
女殺し屋
死刑を一時取りやめ、ダイランはnight jokerの暗殺に向った。
リカーに敵対していた老人の葬儀に現れる筈だと踏んだからだ。
その秘書だった男が老人の城を乗っ取り、殺し屋を構えている情報が長年の捜査で判明していたからだ。
葬儀の夜、鬱蒼とした不気味な森で張っていたダイラン達の前に、死体から蘇って闇で生きるnight jokerが現れた。
互いに負傷したが、night jokerが優勢になった。
だが、メサイアの脳にかすかに残った最後の映像の中に存在する彼の事をやはり殺すことなど出来なかった。鮮やかな孔雀色の瞳と、太陽のようなブロンドの勇ましい男。
彼は、この体の人間を殺した時、その鋭利な大きい瞳から涙を流したからだ。
彼女の脳裏には、漆黒の髪と海色の瞳を持つ男、ゼファーの面影も残っていた。
その2つの記憶と、オーデンとの記憶だけが彼女を生かしていた。
night jokerは負傷するダイランの元を去っていき、闇の中消えていった。
ダイランは、もう諦める他無い。メサイアとは別人だと、悟った。
その背を見つめ、彼は気絶した。
牢獄
ダイランは任務を失敗の内に終わらせると新年を刑務所の中で過ごした。
世間はそんな話で持ちきりだった。
亜紀羅もそれを快く見守っていた。
刑務所に現れ、彼に充分皮肉も言って来た。
美しかった紫穂にそっくりの顔だが、年々意地悪そうに微笑むその顔はどこか父親のあの顔がかすめる。人を完全に見下す顔つきだ。
あの男はまるで銀の狼のような男だった。殺し屋としてもそう呼ばれ続けたほど、プライベートも冷め切っていた。
亜紀羅は刑務所を去り、いよいよ死刑判決が裁判で下りるという日を待ち望んでいますよとダイランに言い残し、リムジンに乗り込み刑務所を後にした。
死刑取り消し
ゼファーはそんな裁判所に現れた。
ダイランは無罪方面だ。
亜紀羅は傍観席でかなり激怒した。
ダイランにはどちらにしろ、様々な地位の元消えてもらっては困るポストだし、ダイラン討伐を燃やしているのは彼の1000年続く遺産を狙ったFBI長官の策略でもあった。300年前、彼等の先祖が愛人の貴婦人に美しいサファイアとプラチナのパリュールを送った。そして彼の死後の遺書には、全ての財産を永久的に彼女の子孫まで与えると記されていた。遺族はその遺書を門外不出にし、その彼女の一族の全権力を奪い取り彼女は路頭に迷った。
巡ってジェーン一族として女は子孫を残し、代々受け継がれるパリュールを大切にしていた。そして、子孫のフィスターはダイランと結婚した。
だから、永久的に彼等は血族を深めていた。
第一、プライベートの侵害として逆に弁護団は訴えを起こした。
過去の犯罪は全て時効が来ていたし、青年時代のチーム内での犯罪も毎回彼には刑期をくらってもらっていた。
亜紀羅は憤怒とした。法廷内でダイランは亜紀羅の正体が実はあの凶悪犯罪者、狂った危険人物MMの息子であった事を言い、亜紀羅はそれに返すつもりだった。
あなた方が既に死刑にする筈の早鬼籐を確保し、秘密裏で生かしつづけている事をだ。
彼は高い医療知識が備わっており、多くの巨大研究に携わってきた人物としても、CIAが欲しがった人材だったからだ。
その情報を特殊警察時代に入手してはいても直接手は下せなかった。
だが、それを言う前にその場にゼファーが現れたのだ。
もちろん、ばれないように悪の大王は変装をしている。
亜紀羅の口を止めさせ、彼は強力な暗示でダイランの口からその場の人間達が聞いた事実を忘れさせた。
そして、ダイランに「おめでとう」と言い、会場を去っていった。
自由になった狼女
当初、全ての任務が終わったらオーデンの元に行くつもりだった。
こんな姿ではもう山脈には帰れない事をわかっていたからだ。
彼女は記憶の中にゼファーを残したまま、そのまま自由になった気持ちで行き続ける事を選んだ。
ゼファーは彼女の元に現れる事は無かった。
次の輪廻転生を迎えさせる為だ。
輪廻転生
女はある男と出会った。
彼等は愛し合うようになり、彼等だけの砦を築き上げた。
彼女はある日、強盗に撃たれた。
彼は彼女が目覚めるまでを待ちつづける。昏睡に入って随分の時が経つ。
夢の中、彼女は闇に包まれ、冷たい氷の椅子に腰掛けていた。
真っ白い服を身につけ、彼女は空虚をただただ見つめている。
彼女には分かっている。
探しつづける男がいる事も、待ち焦がれている運命の男、人生の伴侶がいる事だ。
自分は目覚める事も叶わずに、ただただ闇の中を魂が漂流していた。
出口の無い闇。
闇の中の銀色
彼女の長いウェーブ掛かる髪が揺れ、彼女は目を覚ました。
ゼファーは彼女を見下ろし、彼女は彼を見つめた。
「………、誰?」
「………」
ゼファーは愕然とした。彼女は自分を忘れていた。
『絶対にあたしは貴方を忘れない。あたしにはその自信がある。いつかあたしを迎えに来て、そしてその時は貴方の伴侶にしてね。
貴方がどんな姿で現れたって……あたしは貴方が貴方である事を見破って見せるわ。
貴方は、あたしの事を忘れないでね』
グローリアの眼差しが、雪の山脈に消えて行き、ハンターはその狼が消えて行くまでをずっと見つづけていた。
『全てが全て、一つの軸の上を廻っているて……思わない……?』
";}i:41;a:2:{s:8:"subtitle";s:9:"still……";s:4:"body";s:300:"彼女はまだ彼を思い出せないまま。
夢で見た断片のまま、彼女は彼を見下ろし見つめた。
彼の頬にその柔らかく温かい手を触れて、涙を頬に落とし微笑んだ。
闇
深い闇
「それでも、ゼファー、愛してる」
闇
深い
暗黒
それでも彼女は俺を、愛してくれていると、言っている。
失わない、もう
闇の転生
彼女が死を迎えると再び巡り逢えた彼は、彼女を深く愛した。
どこかで似たような事が一つの軸を持って描かれた気がする……。
「!!!」
彼女は強盗に撃たれた。
彼女は昏睡状態に入り永い事経ち、そのまま
そして、……死んだ。
ゼファーは彼女の死体を見下ろし、深く愛し合いつづけた彼女の顔を見下ろし、その真っ青な瞳が揺れた。
彼は立ち上がり、彼女を見下ろしたまま、両手を天に掲げた。
宇宙に掲げた。
彼の真っ青な瞳から涙が零れ床に落ちた。
絶大な破壊力を持って、彼は全宇宙を破壊した。
闇
ゼファーは消滅する瞬間夢を見た。
彼女は目覚めて、俺を見下ろす
彼女はまだ、俺を思い出せずにいる
俺の頬に手を触れて
俺の顔を見下ろして、
彼女の水銀色の瞳から涙が一粒輝き落ち……
それでも
「それでも ゼファー 愛してる」
俺を、愛してくれているんだぜ……
宇宙は激しい音と共に、消滅した。
ゼファーの輪廻転生
ゼファーは目を覚まし、初めて見た夢に目をこすった。
双子の兄貴は悠長に眠っていた。
「ふん。なんだよこいつ!」
そう、兄シラシーの小さな頭を蹴っ飛ばした。
6歳のゼファーはお母様の下へ向った。男爵家に生まれた彼等は可愛がられていたが、弟のゼファーはちょっとサディスト的だった。
漆黒の艶髪と、ダイヤモンドのような真っ黒い瞳の美しい母親は、いつもの様に黒ビロードのシンプルな形のドレスを身につけている。
彼女の所へ行き、ゼファーはにっこりした。
見た夢のことは、既に忘れていた。
";}i:45;a:2:{s:8:"subtitle";s:18:"シルバーファントム";s:4:"body";s:1052:"兄を殺し、父と母を拘束して男爵として思う存分生きた彼は、屋敷を爆破すると崖から転落した。
その落ちたショックで体の機能がストップした。
成長しなくなってしまった。
彼は仕方が無く生きつづけることにした。
一方、とある女がデパートで試着をしていた。美しい女だ。
「お客様、そちらの代金はお済みで?」
「………」
彼女は支配人に目晦ましを食らわせ、全試着済みの黒のブーツ、カシミアロングコート、アンゴラマフラー、革のグローブ、クロコのバッグで一気に走り出した。
厳密にはインナーの黒革の薄手のスカートと灰色の柔らかいセーターも同様だ。
「お客様!」
ゼファーは声に振り向き、咄嗟に女を取り押さえた。
「何するのよこの馬鹿!」
追ってきた支配人を見るや、女はゼファーの手首を持って走り出した。
「え、ええ?!」
引っ張られるまま彼は走って行った。
彼女の部屋に来ると、そこは豪華な代物まみれだった。
「ま、まさか……」
「これ?ああ、全て盗品。あたし、シルバーファントムっていう女怪盗なの」
紙面を賑わす噂の仮面をつけた怪盗だ。女だったなんて。
「ね。これからあたしと暮らさない?面白いわよ?」
女はそうにっこりした。
";}i:46;a:2:{s:8:"subtitle";s:24:"シルバーファントムの死刑";s:4:"body";s:2220:"ゼファーの付き人の少年、ログーが彼の所へ来た。
警察の人間は逃亡した男爵の青年を追っていて、彼は隠れるように巧みに変装を続け生きていたのだが、その姿が確認されてしまった。
「ねえマスターゼファー。替え玉が必要だよ。僕は彼女の事が気になっていたんだ。前からね。妙にあなたと骨格が似通っているし、それに背丈も同じだからね」
ゼファーは雲行きが怪しくなったログーの話を、怪訝そうに聞いていた。
「何が言いたい」
「彼女を貴方の身代わりにするべきだ。これ以上逃げおおせない。彼女の顔を貴方と同じ様に整形して、体も変えるんだ。男爵時代の事は謎に包まれていたし、性別さえ掴んでいた政府はいない。男爵と言え、時代的に女も性別を隠して収まっていた事も多かった時代だからね」
ログーは続けた。
「あなた、本当にシラシーを殺したの?確認したの?双子のお兄さんと一緒にお風呂、入った事あった?何でシラシーはいつも貴方をつっけんどんにしていたの?それって」
ゼファーは瞬きをした。
昔の写真を彼の目の前に掲げた。
忘れていたはずの嫌っていたシラシーの顔が、幼いまま写っていた。
「決まりだね。彼女はシルバーファントムとしても紙面をにぎわせてる。現れた時期も貴方が国を亡命した1年後からだ。彼女の顔を変えて、シルバーファントムとして警察の前に出させて捕らえさせて。それしか、貴方が死刑を免れない方法は無い」
それを聞いてしまった彼女は角で曲がってゼファーの元には行けなかった。
確かに自分には幼い頃の記憶は無かった。目を覚ましたのは病院だった。
ゼファーは崖から海にシラシーを突き落としたのだ。
彼女は走って行き、愛するゼファーを想って、銀色の仮面を手にした。
整形する場所ならわかっている。友人がそこの医者をしている。
彼女は1ヶ月姿を消した。
ゼファーがいくら探しても彼女は見つからなかった。
消える前夜、彼女は彼の頬に手を当てた。彼女は涙をこぼし、彼の頬に涙が落ちた。
『それでも、ゼファー、……愛してる……』
闇の中、彼女は微笑んだ。
シルバーファントムは巨大な三日月を背に、ビルの屋上に現れた。
警官が銃口を向け、誰もがビルを見上げ毅然と立ち背を伸ばしたシルバーファントムを見上げた。
彼女は、月に鈍く光る仮面を取った。
華麗な顔は、ゼファーのものだった。
彼女の髪は漆黒に染め上げられ、風に翻って月光に艶めいた。
死刑で連れて行かれる寸前、ゼファーは黒い巨大な馬で駆けつけた。
一気に騒ぎが起こり、彼女も驚く。その腰を引き寄せ、自分の前に馬に乗せ、一気に駆け抜けた。
馬は彼らを乗せ、去って行った。
闇夢
巡り逢っては失ってきた
それを繰り返し、いつかは来る巡り合いだけの日々
再び同じ女を手に入れる為、男は永遠に生き続ける
それがあの日、あの時、あの運命の日……全てを滅ぼす死に間際彼の垣間見た夢とも気づかずに
彼の魂のみが闇の中夢を見つづけようと漂流し続けた
願いも叶うこと無く死んでしまった彼女との時間。
絶望した彼が自殺した瞬間、唯一叶うことの無かった願いがただ一つの追い求める真実として、夢に現れた瞬間から彼は彼女に出会うまでを生きつづけるが、それこそが死へと向わせる運命の歯車の始まりだった。
彼は死後、夢を巡らせつづける。永遠という海の中。
その願いは魂となって廻旋した。
そんな時から運命は廻りつづけ
夢と気づかぬ方がいいのだと
彼は彼女を探しつづける
夢の時間まで、約束のあの時間まで、巡り続ける夢
夢の後先の、継続を待ち焦がれて
永い時間など
孤独の恐怖など、信じつづければ……
……闇の中、彼女を探して
波にもたれて月光を
海水の音にその耳を
彼等は、待ち焦がれの後の悦びを知っているから
愛の賛歌
木枯らしが吹きすさび 雪の下へ全てが隠れて行くわ
木々たちは息を潜めている ……ね、聴こえる?
冬の支度をしなくては
銀花たちが花びらを広げゆく
……ねえ貴方にも、聴こえるかしら?
視線を風に持って行かせて
白の森の中 振り向くけれど
いつまでも美しい世界は広がるから
歩み行く その中の一部に あたしもなりゆく
吐息が 煌くように 柔らかく微笑んで 雪の中
木枯らしが吹き荒び 全てを雪の下へ送るわ
聴こえるかしら……貴方にも
聴こえいるのでしょう
……貴方にも……
貴方への 愛の賛歌が 聴こえてるかしら あたしの生きている ……証が……