彼の姿をもう一度
(ありゃ良い匂いがするぞ)
目を閉じる、ゆっくりぐぐっといっぱいいっぱい息を鼻から吸い込む。するとどうしたことだろう。どきんと大きく跳ねる心臓。
ミントの香り。
(私、恋したんだわ)
さっきまで彼の歌声に惚れ惚れしていたの。そうしたら彼の歯磨き粉の香りまでわかるぐらい私の鼻は敏感になった。
どきん。
(あっ、また)
もっとこの感覚に浸っていたい。名残惜しい。でも、そっと目を開ける。やっぱり彼の姿が見たい。
「意識戻りました!!!!!!!」
目の前で誰かが叫んだ。