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うっそうと生えた雑草の中、辛うじて道の体裁を取っているその薄暗い空間には、ひとつの長机が置かれていたのだ。学校とか、会議室に置いてあるような、安っぽい折り畳みのやつだ。だが新品であることは遠目にも分かる。そのあまりにミスマッチな光景に現実感が霧散した。不気味でさえある。
そして机の上には、やはり真新しい書類らしきものが置かれていた。俺は思わず早足でその机に近付いた。
机の上に置かれた書類を確認する。二、三枚ほどのコピー用紙をホチキス止めしてある。そこには「説明書」とだけ書かれていた。
俺は書類を押さえる文鎮をどけ、手にとって一枚目をめくる。二枚目にはこう書かれてあった。
『二宮 卓也様。
真に勝手ながら、貴方には私共の用意した二択のゲームに参加していただきます。
人生には時としてそれを大きく左右する二者択一を迫られる、あるいは何気ない選択が、振り返ってみれば大変大きな決断だったということがよくあるものです。私共は今回、そんな人生の選択を再現したゲームをご用意いたしました。きっと楽しんでいただけるものと自負しております。
ルールは簡単。貴方はこの無人島の各所に設置された二択を、好きな方を選んで進むだけ。クリアできれば無事に島から脱出。素敵な景品もゲットできるかも。ただし、二択で正しい選択をした場合ですよ? 間違った選択をした場合は何も手に入らないばかりか、島から出られないかも。まあ、そんなことはありませんけどね。ただ、それでは面白くないので、罰ゲーム的なものがあることを覚悟しておいてくださいね。
それともうひとつ。貴方の持ち物でゲームの障害になると判断されたアイテムはコチラで預からせていただきました。スマホがあればいくらでもズルができるでしょ? それではゲームが成立しませんので。あと、財布も念のために預かっております。両方ともゲーム終了時に返却しますのでご安心を。
では、存分にゲームをお楽しみ下さい』