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二択  作者: 厠 達三
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目が覚めると砂浜に横たわっていた。

 心地良い波音の中、まだ夢の中にいたかったが、現実に引き戻されてしまっては起きないわけにもいかなかった。しばし思考が虚空をさまよう。

「……あれ。なんで俺、こんなところで寝てんだ?」

 見慣れない砂浜。島ひとつ見えない水平線。外洋を思わせる白い波。まあ、外洋なんて見たことないけど。その波の上を旋回する海鳥たち。空は不気味に曇ってる。そういえば、台風が来るってニュースで言ってたっけ。今は、昼頃だろうか。

 俺は砂浜にあぐらをかいたまま、時刻を確認すべくズボンのポケットの上に手をかぶせた。ない。

 どうやら俺のスマホは取り上げられたらしい。誰に? 俺をこんな所に放置した誰かだろう。俺は反対側のポケットも探った。

「やっぱり、ないか」

 財布も取り上げられてる。もっとも、大した金額も、カードもないから被害としてはそう大きくはない。でも、なけなしの三千円、プラス小銭少々と貯めに貯めたポイントの数々は俺にとっては、やはり甚大な被害だよなあ。

 俺は仕方なしに腰を上げ、衣服の砂を払う。

 辺りの景色に目をやる。どことなく、島っぽいけど日本のようだ。海岸ぞいの木々が和風だ。南国とかハワイとかに生えてそうな木ではない。そして気温。夏なので暑いのは当たり前だが、湿度の高さが日本のものだと俺の本能が感じ取っている。なんてね。

 俺はしばらく波打ち際を歩いた。さほど大きな砂浜でもないのですぐ茂みに行き当たった。そこには流れ着いたゴミが溜まっている。日本の洗剤の容器やらペットボトルやらがたくさんある。中には韓国のハングルだっけ? 表記のものもある。ひとつ言えることは、使えそうな物は皆無ってことだ。

 とにかく、この砂浜から脱出すべく周囲を囲む茂みを見渡す。するとやはりあるではないか。人が通れそうな道が。俺はその道に足を向けた。道があるということは人もいるってことだ。民家でも見つけて助けてもらおう。スマホがあれば自力で助けを呼べたのだが。でも、圏外だろうな。たぶん。

 俺はこの状況を訝りつつ、茂みの中にぽっかり空いた空間を覗き込む。と、思わず立ちすくんだ。挿絵(By みてみん)

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