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24話

 春休み最終日。

 ピンクが冒険者の資格を得てからは毎日のように彼らに仕事を受けさせている。

 採取の仕事の合間に魔物と戦わせてみたりもしたが、問題はなさそうだった。

 とは言ってもランクが低く、受けられる仕事も収入もそれ相応だ。

 依頼はなくとも魔物を倒せば少ない報奨金が貰えるので、しばらくはそれがメインとなるだろう。


 装備も俺製で固めているため、街の周辺であればそうそう死ぬ事はない―――筈だ。

 何も問題は無い―――筈だ。

 心配する必要なんて無い―――筈だ。


 そんな俺の胸中を見透かしたように、しゅんとした顔でケイティが俺に謝る。


 「やっぱり、皆のこと心配だよね・・・。ごめんね、旦那さま・・・。」

 「いや、折角のデートなのに、こっちこそごめんね。アイツらなら多分大丈夫だよ。」


 そう、俺とケイティはただ今デート中なのだ。


 発端は今朝の事。

 今日が最終日だと知ったケイティが、涙を流しながら俺について行くと言って聞かなかったのだ。

 見かねたピンクが潤む瞳をハンカチで拭いながら、今日は自分達だけで行ってみますと言い残し、さっさと行ってしまった。

 オネェキャラが随分と板についてきたようだ。


 リーフからは勉強の邪魔になるからと教室を追い出された。

 その際にフラムがケイティに耳打ちしていたが、どうやら本妻様の許可を貰えたらしい。

 あの二人は何か強い絆で結ばれつつあるようだ。

 ・・・まぁ、良い事だと思うようにしよう。


 それならばとヒノカ達の所へ行ってみたが、そちらでも追い返される始末。

 中ボスからはこちらはお任せ下さいと言われ、娼婦達からはケイティをよろしくと言われ。

 気付けばこうして二人で街を歩いていた。


 デートという単語に頬を染めるケイティ。


 「デートだなんて・・・そんな・・・。」


 俯くケイティの手を取る。


 「ずっと歩いてても仕方ないしさ、とりあえずあの店にでも入ろうよ。」


 表の大通りにあるお洒落なオープンカフェ。

 値段は周りの店に比べてほんの少し高いだけの庶民寄りの店だが、内装も外装も映えるため貴族の客も多い。

 元の世界に居た頃の自分なら素通りするような場所である。


 店の扉を開くと、こちらに視線が集まる。

 まぁ、いくら美少女二人とは言え、冒険者ルックで来るような場所ではないしな。


 ケイティと視線が合った貴婦人が顔を赤くして目を背けた。

 今日も”魅了”は絶好調のようだ。


 春の陽気が心地よいので、外の方の席へ案内してもらう。

 二人でメニューを見ていると、まだ頼んでもいないのに紅茶とタルトが並べられた。


 初めてだったよ。「あちらのお客様から」をやられたのは。


*****


 食べ歩きにショッピング、そんな事をして過ごしているとあっという間に太陽が姿を変えていく。

 小さな公園のベンチで最後の締めにと氷菓子を食べ終えた頃には、自分の背丈よりも影が長くなっていた。

 しばしの沈黙。

 それを破ったのは涙声のケイティ。


 「旦那さま・・・ホントに今日で・・・お別れなの?」


 俺はため息をついてケイティにデコピンを喰らわせた。


 「きゃうっ!!」


 ちょっと魔力で強化したので少しは・・・、かなり痛そうだな。


 「うぅ・・・やっぱりアタシのコト―――」

 「今のはお仕置きだからね。」


 「―――お仕置き?」

 「そ。今朝の私の話し全く聞いてなかったでしょ?」


 キョトンとした顔でケイティがこちらを見つめる。


 「旦那さまの・・・お話?」

 「はぁ・・・やっぱり。」


 そう、大変だったのだ。今朝は。

 泣き喚くケイティを宥めてあやして・・・とにかく大変だった。

 彼女の血がそうさせているところもあるので、仕方が無いのかも知れないが。

 今朝に話した内容をもう一度彼女に聞かせる。


 「明日から学校が始まるから、今までみたいに毎日会えなくなるってだけで、お別れじゃないよ。」

 「・・・・・・そうなの?」


 「そうだよ。それに、休みの日にはまた来るから。」

 「ホント!?」


 「ギルドの仕事を受ける日もあるから、毎回ってわけにはいかないけどね。」

 「ううん、それでも嬉しい!・・・・・・よかったよぉ~~。」


 実は、リーフ達からケイティも一緒に寮に住もうと提案があったが、それは却下。

 どうしてダメなのかと凄い剣幕で詰め寄られ、ケイティの特性について聞かせると納得して貰えたようだった。


 そう、問題はあの特性。

 男だけに効くならまだしも、男女の見境なしなのだ。

 そんなケイティと一つ屋根の下ともなれば、よろしくない状況になるのは想像に難くない。

 いずれ何とかするつもりではあるが、皆目見当もついていない状態だ。


 考えを巡らせているとグラリと視界が傾く。


 「あ、ちょっ、ケイっ―――」


 押し倒されたと気付いた時にはもう唇は塞がれていた。


 「んぅっ・・・ちゅ・・・・・・れるっ・・・・・・んふっ・・・。」


 あ~ダメだこれ。

 最初からクライマックスな感じのヤツだわ。

 いやあああ!足の間に膝を入れないでえええ!


 「ちゅぅ・・・んっ・・・ぁ・・・・・・んぅ・・・はっ・・・・・・・・・旦那さま・・・欲しいの・・・。」


 離れた唇と唇の間にツーと糸が垂れる。

 だが、俺とて今まで何も考えていなかったわけではない。

 再び唇が塞がれる前に触手を使ってケイティの頬を抓り上げた。


 「ひ、ひたたたたっ!痛いよぉ、旦那さまぁ・・・。」

 「正気に戻った?」


 俺を押さえていたケイティの力が緩む。


 「ご、ごめんなさい、旦那さま・・・。私、また・・・。」

 「いや、いいんだよ。ケイティが望むなら私の身体くらい好きにしても構わない。けど―――」


 「けど・・・・・・?」

 「―――流石に此処では勘弁してもらっていいっすかね・・・。」


 「・・・・・・へ?」


 陽が沈みかけた小さな公園とはいえ、人通りが全くないわけではないのだ。


 顔を手で覆いながらも隙間からこちらを見る女性。

 目を血走らせて興奮気味に視線を向ける男性。

 無邪気な瞳で見つめる子供。などなど。


 少なくないギャラリーが集まっている。

 それにようやく気付いたケイティ。


 「あ、あわわわわわわ!ご、ごごごごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさいいいい!!」

 「・・・・・・まぁ、とりあえず逃げようか。暴れないでね。」


 触手でケイティの身体をガッチリと固定して持ち上げる。


 「ひゃんっ!」


 強化した脚で大地を蹴り、跳躍。


 「きゃああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!」


 遠くに見える太陽も顔を紅く染めてすっかりと地平線に隠れてしまっていた。

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