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4話

「アリス、起きなさい。」

体を揺すられる感覚に意識が覚醒する。

うっすらと目を開けるとリーフが俺の顔を覗き込んでいた。

(元の世界でもこんな起こされ方したかったなぁ…。)

むにゅっと頬を抓られる。

「ほら、早く。」

「ぅん………ふぁ~。」

起き上がって欠伸をひとつ。

「ぁ、あの…お、ぉはよう…。」

「うん、おはよう、フラム。ふぁ~。」

隣にちょこんと座っていたフラムに声を掛けて二つ目の欠伸。

「もう他の皆は起きてるわよ。あー…ニーナ以外は。」

向こうではフィーがニーナの頬を引っ張っている。

自分も起きるかと寝袋から這い出す。

「うふふ、お寝坊さんですね。どうぞ。」

「ありがとうございまふ。」

レーゼから温かいお茶の入ったカップを受け取り、腰を下ろす。

壁に四角く空いた穴からはまだ薄暗いが朝の光が見えている。

「おふぁよー。」

起きて来たニーナと一緒に携帯食を齧ってお茶で流し込む。

「明日は学校がありますから、早く帰れるよう早目に出発しましょう。」

「えぇ、そうですね。日が落ちる前に戻れると良いのですけど。」

「んー、何も無ければ夕方には戻れると思うよ。ね、テリカちゃん?」

「そうだな、夕飯は帰って食べられるはずだ。」


出発の準備を整え、一晩世話になった隠し部屋を出る。

「このまま奥に進んで山の向こう側へ出ます。

奥の方に外の光が見えるでしょう?」

レーゼの指差す方向を見るとすっかり明るくなった外が見える。

「すぐに出られそうですね。」

「この辺りはちょうど真ん中ぐらいなんだよー、ほら。」

マルネが逆方向を指差すと同じくらいの大きさで外の光が見えた。

奥に向かって進んで行くと、来た時と同様に壁に魔除けが彫られている。

「この魔法陣、沢山彫ってあるねー。」

「きっと昔は交通の要所だったのでしょうね。どれくらい昔かは見当もつかないけれど。」

ニーナとリーフが会話している間に、もう外がはっきりと見えるくらいに近づいた。

「また森の中を行きますから、皆さんはぐれないようにして下さいね。」


森の中には獣道よりもはっきりとした道が出来ている。

「こっち側は道がしっかりしているのね。」

「あの洞窟を使っていた人たちが通ってたのかな。」

「きっとそうなのでしょうね。」

道を進んで行くと、一際大きな木が並んでいる場所に出くわした。

「うわー、でっかーい!」

「ここが採取場所です。あの大きい木の下に生えている草がそうですね。」

さらさらとした草が大きい木の根を覆うように生えている。

見た事のない植物だ。

「櫛解ヶ草と言って、大きい木の下によく生えています。

此処は昔の人が作った櫛解ヶ草の畑なのではないかと、先生が仰っていましたね。」

「先生が、ですか?」

「ええ、植物科の先生なのですが、この辺りに詳しい方です。

私達があの洞窟を見つけた事を話した時に教えて貰ったのです。」

「そうそう、それから何度か来たんだけど…。」

「いっつも魔物に追いかけられちゃうんだよ~。」

「それでこれ以上は危険だから止めておこうって話になったんだよねー。」

「少し残念だったけどね、仕方ないさ。」

「さて、着きましたね。それでは張り切って集めましょうか。」


「最後はリクブの花でしたね。」

「うん、そうだよー。」

マルネが依頼書を確認しながら答えた。

バスケットにはすでに櫛解ヶ草がたっぷりと詰め込まれている。

「ではもう少し奥ですね。よい…しょっと、行きましょうか、皆さん。」

重くなったバスケットを持ち上げ、レーゼが歩き出す。

更に森の中に作られた道を進んで行くと、遠くから喧騒が聞こえてくる。

「あれは…何の音かしら?」

「何かが戦っているようです。」

「ちょっと偵察して来ます、少し待ってて下さい。」

「え、で、でもアリスちゃん一人じゃ…。」

「なら私が付いて行こう。」

「いや、ヒノカはここで皆の事をお願い。私なら一人で大丈夫だから。」

「ふむ…確かに私はこちらに残った方が良いか。」

「…私が一緒に行く。一人はダメ。」

フィーが俺の袖をぎゅっと掴む。

「ボクでもいいよー。」

「でもお姉ちゃん達はパーティの主力だし…。」

「ふぅ、それならフラム。あなたが付いて行ってあげて。」

「ぇ…ぇ…わ、私…!?」

「い、いやリーフ、流石にそれは…。」

「だって、強いのが付いて行ったら逆に危ない事しそうだもの。」

「あはは、それはそうかもー。」

「む、むぅ…確かにそれはあるかもな…。」

「それにね、フラム―――。」

リーフがゴニョゴニョとフラムに耳打ちする。

「――だから、アリスの事をお願い。」

「ぅ…うん…が、頑張る…!」

何だか分からないがフラムもやる気のようだ。

「という事で決まりよ、アリス。」

これ以上は有無を言わさぬというリーフ。

「わ、分かったよ。でも本当に大丈夫、フラム?」

「だ…大丈夫…。」

「うん、それじゃあ行こうか。はい。」

鞄を地面に置き、手を後ろにまわして腰を下ろす。

「ぇ…?」

「お姫様抱っこの方が良かった?」

フラムは顔を赤くしてフルフルと頭を振ってから俺の背中に身を預ける。

「しっかり捕まってね。」

フラムの手がぎゅっと組まれたのを確認して立ち上がる。

「じゃあ行ってくるね。」

「ええ、気を付けて。」

俺は強化魔法と触手を使い、木の枝を跳躍して渡っていく。

もちろん、フラムが落ちないよう触手でしっかりと固定もしている。

「ぁ…ぁの…。」

「ん?」

「ご…ごめん、なさぃ……ぁ…足手まとい…で。」

「そんなのは今だけだよ、きっと。」

「ぃ…今、だけ…?」

「そのために学院で勉強してるんでしょ?」

「で、でも…私だけ…付いていけて、ない…から。」

「そう?ニーナの方が不味いと思うけど…。」

「ニーナは…剣、が使える…し…。ゎ、私だけ…何も無い、の。」

「それこそ今だけだよ、魔法が制御出来るようになればリーフより凄い魔法が使えると思うし。

火の魔法に関してはね。」

「火の…魔法…。」

「この前見せてくれたでしょ?」

「ぁ…あんな、魔法じゃ…。」

「そんな事ないよ、あれは凄い魔法だった。多分リーフの魔力でも難しいと思う。

魔力の消費が凄かったからね。」

「アリスは…出来てた、よ?」

「私は他の人よりずっと魔力が多いから。フラムは多分、火に関する魔力効率が抜群に良いんだよ。」

「こう…りつ?」

「少ない魔力で強力な魔法が撃てるって事。」

「そうな…の?」

「私の見立てだけどね。信じられない?」

「そ、そんな…事は…。」

「それがイストリア家の血が持つ特性なんだろうね。」

「ひっ……!」

俺に掴まっているフラムの腕がぎゅっと強張る。

「だからあれだけの魔法を使えるフラムなら、もっと誇っても良いんじゃないかな。」

「ぇ…?」

「フラムは自分の紅い髪が嫌いだと言っているけれど、

私はその紅くてふわふわな髪、綺麗で好きだよ。」

「ぁ……ぁ………あの………ぁ……ありが、とぅ……。」


耳を澄ませなくても聞こえる程に近づいた喧騒。

はっきりと戦いの音だと分かる。

「ここからは声も小さくね。」

フラムが頷くのを確認し、今までより慎重に音に近づいて行く。

「魔物同士で戦ってるのか…。」

そこではオーク3体とゴブリン8体が戦っていた。

ゆっくりとフラムを横に下ろし、頭を低くして辺りを観察する。

周りにはゴブリンの死体が10体ほど。オークのものは無い。

オークによる虐殺、と言った方が正しいかもしれない。

装備の所為もあるだろうが、俺が戦った事のあるオークより数段上の強さだ。。

ゴブリン側は強い個体だけが残り、何とかオークと均衡を保っているが、時間の問題か。

周辺の魔力を探るとオーク達よりも更に強い魔力の反応が一つ感じられるが、

姿を隠しているようで確認できない。

あのオーク達の親玉だろうか。

森の中に続く道に近い場所であるため、道なりに進めば鉢合わせるかもしれない。

殲滅してから進むか、迂回するかだが…。

(でもまぁ、これぐらいなら処理出来るか。)

「片付けてくるからここで待ってて。」

フラムに耳打ちし、立ち上がって魔物たちの方へ向き直ると、ぎゅっと腕を掴まれる。

「どうしたの、フラム?」

「…だめ。」

「大丈夫、あれくらいの魔物ならすぐに片付けるから、少しだけ我慢してて。」

「だめ…なの。」

「ほ、本当に少しの間だけだから、ね?」

フラムを説得しようと試みたが、今度は胸の辺りに抱きつかれてしまう。

慌てて木から落ちないように体を支える。

「お、落ちちゃうよ…フラム。」

見上げるフラムと視線が合う、フラムの瞳には涙が溜り、ぽろぽろと頬を伝う。

「ひ、一人で…危ない事、したら…だめ、なの。」

「あ、う~…え~と……………ごめん………。」

(こっちの方がよっぽど手強いな…。)

フラムの頭を撫でてやる。

「ごめんね、フラム。皆の所に戻ろうか。」

「ぅっく……うん……。」

俺はフラムを再び背負い、静かにその場を立ち去った。

ある程度離れたのを確認して徐々にスピードを上げる。

背中のフラムの涙はまだ止まっていない。

「…ひ…っく……ぅっ……。」

「ねぇ、フラム。私はこんな事でフラムを嫌いになったりしないよ?」

「ぁ…………うん……うん……。」

フラムの腕にきゅっと力が込もる。

「そういえばさぁ、リーフに何て言われたの?」

「ぇ…?」

「ほら、偵察に出る前。」

「え…と、私が…アリスを止められる確率が、一番高い…って。」

「あー…、なるほど…。確かにそうかも…。」

良く分かってらっしゃる。


「フフッ、ちゃんと役目を果たしたようね、フラムは。」

皆の所へ戻り、リーフが開口一番に言った言葉だ。

「そりゃもうしっかりと…。」

分かっていない顔のフラムを背中から下ろす。

「それで、どうだった?」

「オークとゴブリンが戦闘中でオーク側が圧倒、

残った強めのゴブリンが何とか抗ってる感じだったかな。

ゴブリン達が全滅するのは時間の問題だと思う。」

「数は?」

「オーク側は生存3死亡0、ゴブリン側は生存8死亡10以上って具合だった。

あと、姿は確認できなかったけどオークの親玉っぽいのが1体。」

「オークってそんなに強かったかしら?ゴブリンよりは力がある程度くらいだったと思うのだけれど。」

「私が戦った事のあるオークより断然強そうだったよ。」

話を聞いていたレーゼが参加してくる。

「あの、このまま進んでも大丈夫なのですか?」

「このまま道なりに進めば鉢合わせる可能性大です。」

「迂回するという手もあると思うが?」

「ええ…、ですが迷ってしまう可能性がありますね。

私達もこの辺りに詳しい、とは言えませんから。」

「それなら、戦う方が良さそうですね。」

「戦っても大丈夫なのですか?」

「あれぐらいなら問題ないと思います。」

「分かりました、それではこのまま進む事にしましょう。」

自分の荷物を背負い直し、行軍を再開する。

リーフが隣に並び小声で話しかけてくる。

「ねぇアリス、フラムはどうだったかしら?」

「んー………大丈夫、だと思う。」

「そう、それなら良かったわ。」

「どうしてフラムに行かせたの?」

「だって貴女、フラムには甘いんですもの。」

「………そう?」

「フフッ、そうよ。」


しばらく進むと、魔物達の争う音が間近に感じられる距離まで近づいた。

足音を殺し、身を潜めながら観察できる位置に陣取る。

ゴブリンの数は減り、4体となっていた。

「ゴブリン達はもう持ちそうにないな。」

「そうだね、ゴブリンが全滅したら仕掛ける感じで良いかな?」

「あぁ、それが良いだろう。隠れている一体には気をつけないといかんがな。」

ヒノカが強い気配がする一点を見つめる。

「洞窟の時と同じように私の魔法からで良いかしら?」

「そうだな、一体に集中して確実に数を減らせるようにしてくれ。」

「分かったわ。」

「一応ゴーレムを出して戦わせるよ。」

地面に手を着き、魔力を流し込んでドーベルマン型のゴーレムを造り出す。

「これで一体抑えるから残った一体からお姉ちゃんとニーナで片付けていって。」

「隠れている一体がどう動くか分からん、注意してあの三体を片付けたら一度こちらに退くように。」

「りょーかい。」

「…うん、分かった。」

打ち合わせをしている間にも一体、また一体とゴブリンが倒される。

「では、最後のゴブリンが倒れたら仕掛けるぞ。」


間もなく最後のゴブリンがオーク達の攻撃を受け、断末魔の叫びをあげて倒れた。

「行くわっ、”氷矢(リズロウ)”!」

「行けっ、ゴーレム!」

三本の氷の矢が敵を倒して油断していた一体のオークの頭を貫き、砕く。

声をあげる間もなく倒れた仲間を茫然と見るオークの一体にゴーレムが噛み付く。

「プギャッ!!」

「フゴッフゴフゴッ!!」

噛み付いたゴーレムを懸命に剥がそうと、オーク達の注意がゴーレムに逸れた瞬間。

「フィー、ニーナ!」

「…行く。」

「ボクも!」

ヒノカの合図でフィーとニーナが飛び出す。

オーク達は気付かない。

オークの背後からフィーの剣が襲いかかり、武器を握っていた両腕が斬り飛ばされた。

「プギィーーッ!」

狼狽するオークの喉元にニーナの剣が突き刺さり、絶命する。

ゴーレムに襲われているオークが咄嗟にフィーに武器を向けるが、遅い。

既に間合いに入っていたフィーの一閃で両腕が斬り落とされ、勢いで舞うように更に一閃。

ゴロリ、と地面にオークの首が転がった。

オークが片付いたのを確認した二人がこちらへと後退する。

「来るぞ。」

残りの一体がいる方に目を向ける。

ガサガサと草を掻き分け、影から現れたのは黒いオークだった。

倒したオーク達よりも二周り以上大きく、頭には輝く兜を被っている。

荒い鼻息でこちらを威嚇しているが、すぐに仕掛けてくる気配は無い。

「黒いオーク…あんなのもいるのね。」

「私も初めて見たよ。」

「中々強そうだな、どうする?見逃してくれそうには無いが。」

「とりあえず、ゴーレムにやらせてみるよ。」

命令を受け取ったゴーレムが黒いオークへ飛び掛かり、身体を庇った腕に噛み付いた。

意も介さずに噛み付いたままのゴーレムを持ち上げ、何度も木に打ちつける。

初めは耐えていたゴーレムも次第に罅が入り、とうとう砕かれてしまった。

「凄い膂力だな。」

「あんなのに掴まったら一溜りも無いわね。」

「なんか、怒ってるっぽい?」

黒いオークから放たれる殺気が膨れ上がり、今にも襲い掛かってきそうだ。

「前衛はお姉ちゃんとヒノカでお願い!」

「…分かった。」

「やっと私の出番だな!」

二人が飛び出し、黒いオークへ向かう。

「ニーナは中衛で、リーフは後衛で援護を!」

「りょーかい。」

「分かったわ。けれど、あれだけの魔物だと少し時間が掛かりそうよ?」

「私に良い考えがある。」

「…………本当かしら?」

俺は地面から剣を作り出した。

刃の部分に反しが付いており、ギザギザになっている。

同じものをもう2本作り、身に着けていた武器等を外して代わりに背負う。

「趣味の悪い形ね。そんなものをどうするの?」

「まぁ、見ててよ。」

作りたての剣を持ち、黒いオークに近づく。

フィーとヒノカは上手く連携を取り、着実にダメージを与えていた。

二人に隙が出来る時には間髪入れずにニーナの攻撃が黒いオークを襲う。

黒いオークが三人に気を取られている間に強化魔法で強化した身体で跳躍。

その勢いを使って深々と黒いオークの背中に剣を突き刺す。

「グギャアアァァァッ!!」

悲鳴を上げつつ、俺を掴もうと手を伸ばしてくる。

俺は剣から手を離し、そこに剣を残したまま後退。

反しが付いているので少々の事では抜けないだろう。

同じ手法で残りの剣を黒いオークに突き立てていく。

剣が三本も突き刺さっているというのに、まだまだ元気そうだ。

かなり頑丈な奴らしい。

だが。

「皆、離れて!……暴れろ!」

「グオォアァァァッッ!!!!」

命令を出すと黒いオークは地団太を踏み、転げまわって形振り構わず暴れ出す。

もちろん俺が黒いオークを操っている訳ではない。

俺が命令を出したのは奴に突き刺さった剣のゴーレムだ。

動かす事が出来る分、普通に作った剣よりも耐久は落てしまうが。

奴の身体の中でアスファルトに出たミミズのように暴れてくれている事だろう。

流石にあれだけ暴れられては近づけないのか、フィーたち三人は距離を取っている。

しかし、ただ暴れているだけでは魔法の恰好の的である。

リーフも含めた四人による魔法の一斉射が始まった。


「ふぅ…、よくもまぁこれだけ暴れたものね。」

ピクリとも動かなくなった黒いオークの周りの木はなぎ倒されてしまっている。

「アリス、奴に一体何をしたのだ?」

「あいつに突き刺したのは剣のゴーレムでね、全部刺した後一斉に暴れさせたんだよ。」

「うわー、痛そう。」

カランと金属音が響く。

黒いオークの被っていた兜が外れて落ちた音だった。

拾ってみると黒いオークの頭に比べて随分と小さい。

「あら、それはミスリル製ですね。

ミスリル製の防具は使用者の身体に合わせてある程度までは伸縮するんですよ。

この黒いオークにやられた人が持っていたのでしょうね。」

「ミゼル知ってるよ~。ミスリルってたっかいんだから~。」

「でも傷が大きく付いてるから大分値段が下がるね、これじゃ。」

「そうですねぇ…加工費が高いですから。」

「持って帰るにしても、少し邪魔だねー。」

「被って帰れば良いんじゃないの?」

「ニーナ…これ、被る?」

「あー…、いいや……。」

流石にオークが被っていたものはちょっとキツイものがある。あと臭う。

「…”洗浄(クリン)”。」

フィーが魔法を掛けると薄汚れていた兜が輝きを取り戻し、悪臭が取り除かれる。

これなら問題ないだろう。

試しに被ってみる。

吸いつくように兜が縮み、ピタッと頭が収まる大きさになる。

「おお、ホントに縮んだー!」

「ふむ、中々似合うではないか。」

「これ、実験に使いたいのでこちらで買い取っていいですか?」

レーゼ達に確認する。

「とんでもないわ、貴方達が戦ったのですから貴方達の物ですよ。」

「ミゼル達は何にもしてないしね~。あはは~。」

「だ、だってあんなの無理だよぅ。」

「そういう事だ、それの扱いはそちらで決めてくれ。」

「…分かりました、ありがとうございます。という訳でこれは私が買い取けど、良いかな?」

「いや、別に買い取る必要は無いだろう。アリスの好きにすると良い。」

「そうね、私には無用の長物だし。」

「私も良いよ、アリスには学費も出して貰ったしねー。」

「…うん。」

「ぁ、アリスが…欲しいなら、それで…良い、よ。」

「皆…ありがとう。」


魔物達の死体の処理を終え、再び森の道を歩き出す。

オーク達が倒していたゴブリン達の耳も集め、とりあえず魔物駆除の仕事は完了出来る。

残るはレーゼ達の採取依頼だ。

レーゼに案内されるままに進むと湖に出たところで足を止めた。

「この辺りです。水辺に所々花が咲いているでしょう?あれがリクブの花です。」

水辺を見渡すと、白くて小さな花がぽつぽつと見受けられる。

「よし、じゃあ張り切って採りますか!」

「ミゼルもがんばる~!」

「あんまりはしゃいで湖に落ちるなよ。」

レーゼ達が別れて採取を始めた。この分だとすぐ終わりそうだ。


「よい…しょっと。」

レーゼ達の持ってきたバスケットは全て採取物で一杯になっている。

「随分沢山になりましたね。」

「ええ、どれも依頼より少し多めに採りましたしね。」

「さぁ、あとは帰るだけだよー!」

「でも今まで来た道を戻らなきゃいけないのかー…。」

「それは言わない約束だよ、ニーナちゃん…。」

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