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16話

(でかいな、この扉…。)

重厚な扉には『学長室』と書かれている。

とりあえず扉をノックしてみる。

「どちら様かな?」

中からの声に返事を返す。

「アリューシャと申します。こちらに呼び出されたので窺いました。」

重そうな扉が音を立てて開いていく。

「入りなさい。」

「失礼します。」

中で出迎えていたのは入学式で見た学院長だ。

「少し待ってもらえるかの。」

「はい。」

そう言って学院長は部屋の更に奥にある扉にノックする。

「来られましたぞ。」

「通せ。」

部屋の奥の扉がゆっくりと開く。

「さあ、どうぞ。」

学院長に促されるまま奥へと足を進める。

(畳にちゃぶ台に…テレビか?)

おおよそファンタジーとはかけ離れた光景がそこにはあった。

ガチャリ、と扉が閉められる。

中には幼女が一人いた。自分を除いて。

『さて、えーっと、ようこそ異世界へ。ってところかな?』

その幼女から発せられたのはもう戻る事の出来ない故郷の言葉だった。


『に、日本語…?』

『うん、そう、日本語。まぁ分かってると思うけど、オレも転生者の一人ってわけです。』

『なるほど…。てかその姿で日本語喋ってると凄い違和感が…。』

『ははは、それはお互い様でしょ。』

『まぁ…確かにそうですね。それで、どうしてここに?』

『ああ、アンケートに書いてくれたよね?だから挨拶しておこうかと。』

『あの入学式の日に書いたやつですね。』

『そうそう、それで情報交換とかも必要でしょう?』

『そう…、ですね。まだ分かっていない事も多いですし。』

『じゃあ改めて自己紹介からいきましょう。オレはレンシアです。一応五百歳…くらい?

元の名は…ま、これはいいですかね。』

『ご、ごひゃく…!?』

『まぁ、それは後に置いといて。』

『わ、分かりました。俺はアリューシャです。年齢は六歳ですね。』

『もしかして、この剣作ったのはアリューシャさん?』

レンシアが手に持っているのは確かに俺が土で作った剣だ。

『そうですけど…、どこでそれを?』

『ルーネリアさんが売りに来たんだよ。』

『ああ…、なるほど。お陰でこの学院に入学できました。』

『これ一本で金貨二枚取られたんだけど。』

『高ぇ。』

『よし、堅苦しいのは無しでいいよな。』

『だな、よく考えたらお仲間だもんな、魔法使い同士で。』

『それは言うなし。』

『おk。』


『じゃあとりあえず状況の整理からするか。アリスがこっちに来たのは向こうの時間でいつごろ?』

『俺が覚えてるのは…。』

自分が死んだと思われる年月を告げる。

『そうか、じゃあオレがこっちに来たのはその三年後くらいだな。』

『…それって計算合わないんじゃね?』

『ああ、この世界って結構無茶苦茶だからな。』

『どういう意味だ?』

『んー、そうだな…。神魔大戦は分かる?』

『うん、こっちに来る前に聞いた。』

『その神魔大戦でオレ達みたいなのが駆り出されたのも聞いた?』

『それも聞いた。』

『OK、で、その中で超活躍した日本人が神に昇格して創ったのがこの世界なんだよ。』

『…それで?』

『俺らより中二病拗らせた奴が創った世界なんか無茶苦茶になるに決まってんだろ。』

『ああー……、確かにそうだな。』

『それにまだ未完成なんだよ、この世界。』

『未完成?』

『ああ、世界の端がまだ広がってるんだ。気付けば新しい大陸が出来てたりする。』

『それはひどい…、この世界の人間はそれが普通ってことか。』

『いや、多分この世界の人間で気付いている奴はいないんじゃないかな。』

『なんでだ?』

『ある地域から魔力濃度が上がって、普通の人間だと生きられる環境じゃなくなるんだわ。

で、そこからずーーーーっと外に向かって進むと世界の端に辿り着く。

魔力濃度が高すぎて普通の人間が暮らせない地域は便宜上「未実装エリア」と呼んでるな。』

『うわぁ…、風呂敷広げて畳めないパターンだなそれ。』

『神様は時間なんてそれこそ無限だろうから、畳む必要もないんだろうな。』


『とまぁこんな感じで今も天地創造が続いていて、莫大な魔力が動いてるんだ。

そんな中で転生なんてしたらそりゃ時空も歪むよねって説が濃厚だわ。』

『なんかもうどうでもよくなるな。』

『あぁ、今じゃそんな事調べてる奴おらんわ。』

『なるほど。』

『で、他になんかある?』

『五百歳ってどういう事よ。』

『そりゃお前…オレが合法ロリBBAって事だよ。』

『自分で言うなや。』

『まぁあれだ、不老の魔法ってやつだな。』

『おぉ、人類の夢だな。』

『魔力の消費が凄まじいから普通の人間には出来ないけどな。』

『俺でも出来るか?』

『転生者の魔力なら問題ないと思うぞ、オレの他にもいっぱいいるからな。』

『マジか…。』

『でもまぁ不老不死ではないからな?歳を取らなくなるだけで、殺されれば死ぬぞ。』

『それでも十分だと思うが。』

『まぁ…、そうだな。』


『とりあえず今日はその話もしようと思ってな。』

『不老の魔法か?』

『ああ、アリスにはまだ早いと思うけど、話だけでも聞いとくといい。』

『了解。』

『まぁ、まずは失敗したら死ぬ。』

『う…賭けになるのか?』

『いや、今はちゃんと用法を守れば問題ない。』

『用法?』

『ああ、年齢が九歳ぐらいなら大丈夫だ。』

『…どういう意味だ?』

『不老の魔法は肉体改造の魔法だからな、ある程度身体が育っていないと負荷に耐えられない。』

『耐えられないって…?』

『まぁ…なんか…グチャってなるんだわ。』

『ぉぉぅ…。それならもっと育ってからでもいいんじゃ…?』

『それはそれで問題があってな…。生理が始まるとダメなんだ。』

『…せいり?』

『ほら、女特有の月のモノってやつだ。』

『あれか。何がだめなんだ?』

『まぁ術式自体は成功するんだがな、その後に生理がくると…その…グチャってなる。』

『ぉぉぅ…。それに対応した術式は作れないのか…?』

『一応研究してるやつもいるが…、試したいか?』

『それはちょっとお断りしたいな…。』

『ま、そういうわけである程度身体が育って生理が来ない年齢っていうと九歳から十歳あたりがボーダーってとこだ。

昔は九歳でも成長が遅かったりすると失敗してたが、術式も改良されて負荷も少なくなってるから失敗はまず無いと言っていい。

その時の体調も大事だから体調管理はしっかりしないといけないけどな。

今の術式なら九歳以下でも大丈夫だとは思うが…あまりお勧めはできんな。試したいなら止めないが。』

『生理の無い男なら十歳以上とかでも大丈夫ってことか?』

『いや、そもそもオレ達みたいな転生者は女しか産まれてこないからな。例が無いから分からん。』

『それも理由があんのか?』

『神魔大戦での話なんだが。』

『うん。』

『まぁ、活躍したらモテるよな?』

『そりゃ…そうだろうな。』

『それで、モテにモテた奴がついに…アレを捨てたんだ。』

『アレを…か。』

『ああ、それで、どうなったと思う?』

『………どうなったんだ?』

『魔力が消失したんだ。欠片も残さず。』

『なん…だと…?』

『考えてみれば当たり前だよな…、オレらはDTだから魔法使いなんだしな。

ま、そんな理由で俺らみたいな転生者は問答無用で全員女にされてるって話だ。

女なら捨てられねえからな。付いてねえし。』

『それはマジなのか?』

『お前も転生する前に神族と話しただろ?』

『うん。』

『その時に聞いた奴がいたんだよ。そいつが嘘ついてなければ本当だろう。

現にオレの知る転生者の中に男はいねえ。』

『そうか…呪縛からは逃れられないんだな…。』

『まぁいいんじゃねえの。どうせこっちの世界でも無理だろ。』

『それを言っちゃあお終いよ。』


『さて、他になんかあったっけ。』

『そういえばさー…この学校って学科多くね?』

『ああ、それな。でも最初は魔術科だけだったんだぜ?』

『マジかよ。』

『だから魔術学院なんだが…。ただ、この世界って魔物もいるからさ、

魔法使いっつっても結構肉体派じゃないと生き残れんのよ。特に冒険者なんかはな。

研究一筋とかなら別だけど。で、剣術科が出来たり戦術科が出来たりしてな。

その中から騎士になる卒業生も出てきて、その話を聞いて騎士科を要望されたり、大変だったわ。

後はもう好きにしてくれって感じで乱立しまくってる。潰れるのも多いけどな。』

『それもう大学のサークルとか同好会のノリじゃねえか…。』

『いやもうそんな感じよ。アリスはどこ行くか決めたのか?』

『魔法道具科にしようと思ってるわ。』

『流石にお目が高いな、まぁ人気ねえけど。』

『そういやアンナ先生が見学会サボって露店回ってたぞ。』

『アンナちゃんは可愛いから許す。』

『確かに可愛いけども。』


『こっちも聞きたい事があるんだが。』

『ん、何だ?』

『この剣、どうやって作った?』

レンシアの手には俺が作った剣が握られている。

『どうやってと言われても説明が難しいな…。魔力で土を剣の形に固める…みたいな?』

『…そんな魔法聞いたことないな。』

『まぁ、自分で魔力を操ってやってるだけだからな。』

『魔力を操る…だと?』

『魔法使う時に皆やってるだろ?こんな風に魔力をひりだして…ほら。』

掌に魔力を集め火に変えて見せる。

『…”(フォム)”。』

同じようにレンシアが掌に炎を生み出す。

『そうそう、それと同じだよ。』

『…いや、根本的に違うな。』

『どういうことだ?』

『まず俺は魔力を操るなんてことはしてない。

この世界の魔法は呪文を唱えれば勝手に魔力が消費されて発動する。

威力の調節とかは可能だがな。』

『…そうなのか?』

『ああ、魔道具だって何かのキーワードやアクションが必要になる。』

『そういえば皆呪文唱えてたな…。』

『てか…どうやって魔法を覚えたんだ?』

『…転生する前に教えてもらった通りに練習しただけなんだが。』

『神族…そうか、その魔法の使い方は確かに神族や魔族に近いな。』

『なるほど…、さっきのも神族のお姉さんに見せてもらったやつだわ。』

『よくもまぁそんな練習できたな。他の誰かに教わったりしなかったのか?』

『赤ん坊の頃は暇だったからな。赤ん坊に魔法を教えようなんて奴もいねえだろ。

あとあの綺麗にする魔法を使おうと必死だったんだ…。』

『みんな通った道だな…。』

『やっぱりそうなんか…。』

一通り自分の行った訓練の説明を行う。

『ふむ、やっぱり最初に神族に教わったのがでかいようだな。』

『ただ、皆が使ってるような魔法は使えないんだけど。』

『オレもよく分からんけど。

魔力を操れるから自動発動を無意識に抑制してるとかじゃね?』

『確かにそれはありそうだ。…”(フォム)”。』

自動発動を意識させながら呪文を唱えてみるが何も起こらない。

『…ダメか。』

『でも魔力を直接操れるなら呪文を唱える必要もないだろ。』

『それもそうか。』


『ああ、そうだ。転生者ってどれくらいいるんだ?』

『今現在で百は越えてるんじゃねーかな。細かい人数は分からん。』

『結構いるんだな。』

『死んだ奴も結構いるけどな。オレは五百年くらいまえに来たけど、

その頃には不老の術式がすでに存在してたわ。成功率は低かったが。』

『成功率はどんなもんだったんだ?』

『オレが受けたときで七割ほどだな。』

『七割か…微妙な数字だな。』

『失敗したら死亡だぜ?九割でも低いと思うわ。』

『それは…、確かにそうだな…。』

『まぁ、ここ二百年で二十人くらいやってたけど、失敗は無いから安全にはなってるんじゃね。』

『それなら安心…なのか?』

『結局は神のみぞ知るってやつだから何も言えんな。術を受けないって選択肢もあるし。』

『受けない奴もいるのか?』

『受けないというか、受けられなかった奴だな。』

『何か問題があったのか?』

『問題というか、見つけた時にはすでに成人してたりだな。

こっちでも転生者を探してはいるんだが、流石に手が回らん。』

『その辺は仕方ないな。』

『ま、術は受けられなくても転生者は誰でも魔女の塔に行けるようにしてあるから、

ある程度の不満は解消されてる。』

『魔女の塔?』

『この学院よりも辺鄙な場所にある転生者の居住区兼研究所だな。

こっちの世界の人でも能力のある人なら迎え入れてたりするが。

魔女ってのは不老の術を受けた転生者の事な。』

『ここより辺鄙って…。』

『めちゃくちゃ遠いぜ。その内案内するよ。』

『どのくらいかかるんだ?』

『普通にサクサク進めば一カ月半くらいかな。』

『遠い過ぎんだろ。』

『転移魔法があるから実際は一瞬だけどな。』

『やっぱ魔法すげぇ。』

『これも研究の賜物よ。』


ボーンボーンと部屋の時計が定刻を告げる。

『おっと、もうこんな時間か。』

レンシアの言葉に時計を見上げ、時刻を確認する。

『見学会も終わりか、願書出さないと…。』

『スマンな、時間とらせて。』

『いや、学科は決めてあったからな。問題ない。』

『魔法道具科なら漏れることはないか。むしろ一人にならない事を祈った方がいいかもな。』

『マンツーマンは流石にキツイな。』


レンシアに部屋を送り出され、皆との集合場所へ到着する。

「お、やっとアリスが来た。」

「遅かったな、今まで学院長のところに居たのか?」

「うん。遅れてごめんね。」

「呼び出されたのだから仕方ないわ。それより、そろそろ行きましょう。」

「うむ、そうだな。皆、願書は持っているな?」

それぞれ願書を手に掲げ、全員持っていることを確認する。

「全員問題ないわ。」

「よし、じゃあさっさと行こう!」

元気の余っているニーナが駆け出し、皆がそれに続く。

全員が願書の提出を終え、あとは結果を待つのみとなった。


翌日、結果を受けて全員が部屋に集合している。

「皆、どうだった?」

俺が問いかける。

顔色で分かるのもいるが。

「私は合格よ。」

「私も合格だ。」

「…合格。」

「合格。というか私しか居なかったよ…。」

そして明らかに落ち込んでいる二人。

「ぅ~、あんなに人が多いなんて…。」

「………ダメ…でし、た。」

何と声をかければいいものやら…。

「ふぅ、落ちてしまったものは仕方ないわ。二次はどうするか決めてあるの?締め切りは今日中よ。」

「剣術科も戦術科も一杯なんだよー…。」

「…ぅ、考えて…なぃ…。」

「ふむ…、ならアリスの所へ行くのはどうだ?」

「…ぁ、そ、そうす、る!」

言うや否や願書に記入を始めるフラム。

「え、ちょ…そんなので決めていいの?」

「……ダ、メ…?」

泣きそうな顔でこちらを見つめてくる。反則だそれは。

「いや、ダメじゃないけど…本当に他に行きたい所無いの?」

フラムがフルフルと首を振る。

「フラムの場合は知らない人間がいる所よりはよっぽど良いと思うぞ。何かあればアリスが助けてやれるだろう?」

「うーん、それもそうだね。私も一人で授業受けるよりはそっちの方がいいかな。よろしくね、フラム。」

「…ぅ、うん!」

「ニーナ。貴女はどうするの?」

「魔法道具科かぁ…。目をつけてたところは全部一杯だし、私もそうしようかな。」

「決まりだね。」

「よっし、じゃあフラムと願書出してくるよ!」

「…ぇ…わっ。」

ニーナはフラムの手を掴むと、引きずってそのまま部屋を飛び出していった。

「あの切り替えの早さが羨ましいわね。」

「全くだ。」


その後、無事に二人の願書は通り、魔法道具科の生徒数は三人となったのだった。

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