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15話

見学会二日目。

魔法騎士科の見学会は屋内訓練所で行われる。

ここでも料理科が屋台を出しているようだ。

見学者は意外と女子が多い。

まぁ見学というよりは魔法騎士科の生徒に黄色い声援を送っているだけだが。

定刻の鐘が鳴り響く。

先程までゆったりと談笑していた魔法騎士科の生徒たちは

訓練場に一糸乱れぬ姿で整列した。

その先頭に一人の騎士が現れる。

どこの王子かと思うほどの金髪ロン毛のイケメンだ。

女子達がざわめき出す。

「よくぞ参られた、未来の騎士達よ。」

怒鳴っているわけではないのによく通り、響く声にざわめきが静まる。

「私はクレードル。魔法騎士科の講師だ。

今日のこの見学会が君達が選ぶ未来の指標になればと思う。では、早速始めていこう。」

「君達は魔法騎士というものについてどれだけ知っているかな?」

一人の見学者が手を挙げて答える。

「鍛錬を積んだ騎士が魔鉱石の武具を使いこなせるようになる事で魔法騎士と認められる、と聞いた事があります。」

「うむ、概ね正解だ。彼の言ったとおり、まず騎士足らねばならぬ。

よって、この学科での講義内容の大半は騎士となるためのものだ。そのため座学も多い。

元々この学科は騎士科であったため、騎士として認められることが出来れば単位は保障される。

そして、騎士として認められれば魔法騎士としての講義が受けられる。」

「魔法騎士としての講義とはどのようなものでしょう?」

別の見学者が質問する。

「内容は至極簡単だ。魔鉱石の武具を装着して講義を受けるだけとなっている。」

「それだけ…ですか?」

「それだけだ。だが、使いこなせぬ者が魔鉱石の武具を持つと鉄より重く、脆い装備となる。

ちょうど良い、今質問してくれた君。前に出てきてこの台の上の二つの塊を持ち比べてみてくれ。」

拳大の金属の塊を二つ並べ、前に出てきた見学者に指示を出す。

「まずこちらが鉄だ。持ってみてくれ。」

大きさ事態はそこまででもないので、問題なく持ち上げた。

「では、こちらの魔鉱石を。」

鉄の塊を台に戻し、もう一方の塊へ手を伸ばす。

「…ふっ…ぐっ!お、重い…です。」

クレードル先生が手を添え、台の上に塊を戻す。

「ご覧の通り、魔鉱石は鉄の二倍から三倍の重さがあると言われている。

ちなみに今私が身に着けている武具もすべて魔鉱製だ。

最初はもっと軽装だが、最終的にはこれぐらいのものを扱えるようにならねばならない。」

先生の後ろに並ぶ生徒達の鎧が統一されていないのはその所為か。

「興味があれば後ほど機会を与えるので、彼のように持ち比べてみると良いぞ。」

おお、魔鉱石とやらを触れるのか、是非とも参加しよう。

「さて、話を戻そうか。魔鉱製の武具は確かに重く脆いが、それは使いこなせぬ者が持った場合だ。

使いこなす事が出来れば鉄の半分の重さになり、強度が増す。」

「まぁ、実際に扱えるようにならぬと分からぬ事だからな。

そういうものだと覚えていてくれればいい。何か質問はあるかね?」

一人の見学者が手を挙げて質問する。

「あの、単位を取っても魔鉱製の武具を扱えなかった場合は魔法騎士にはなれないのでしょうか?」

「いや、そんなことは無い。ここで魔鉱製の武具を扱う事が出来ても、最初は騎士として仕官することになる。

そして仕官後に魔法騎士を目指すものは本格的な訓練を受ける事になるだろう。

仕える国によって差はあると思うが、基本的にはそうなっている。

言ってしまえば魔鉱製の武具に触れるのはオマケ要素だ。

だがそれは魔法騎士を目指すのであれば貴重な機会でもある。その事を覚えておいて欲しい。」

「さて、他に質問がある者は?」

もう手を挙げるものはいない。

「いないようだな、それでは普段の訓練風景を見てもらおうか。」

先生は整列している生徒達の方へ向き直る。

「散開陣形!」

先生の掛け声に反応し、まるで一つの生物のように陣形を組み替えていく。

最後は二つのグループに分けられ、模擬戦が行われる事となり、

その間、希望者は魔鉱石ふれあい体験が出来る事になった。

場所が少し離れており、模擬戦が見辛くなってしまうためか、

ふれあい体験の方は人気が無いようだ。

「私はあっちの方行くけど、皆は?」

「模擬戦は人が多そうだし、私もそっちにするわ。」

「ゎ、私…も。」

「…私も。」

「確かに人かこれだけ多いとな…私もそうしよう。」

「じゃあボクもそっちにしよっかな。」

「本当にいいの、ニーナ?」

「うん、そっちの方も興味あったし、それに…。」

ニーナが少し声のトーンを落とす。

「普段見てるアンタらの訓練の方が凄いしね…。」


少し出遅れてしまった所為か、私たちが最後尾だ。

と言っても人が少ないので待ち時間はそんなに無いだろう。

前の方からは「うっ……お、重…い。」などといったうめき声が聞こえてくる。

補助人として魔鉱石の傍に立っているのは先程先生に指名された冴えない少年だ。

女子がこちらに来なかったのはその所為もあるだろう。

じりじりと列が進み、私たちの番が近づいてくる。

模擬戦の方からは歓声が引っ切り無しにあがっていて、大盛り上がりだ。

こちらの方は終わった者はほとんど屋台へ行っている。

ここでも他と違う食べ物を用意しているようだ。

「つ、次はキミ達の番だよ。重いから気をつけてね。」

屋台の方へ集中していると私達の順番になった。

「こ、これは確かに重いな。この大きさでこれとは…。」

「…っそうね。よくこんなの持って戦えるわね。」

「あまり無理はしないでね。あ、預かりますよ。」

「ありが…とう。」

リーフが補助人の少年に魔鉱石を手渡す。

少年はそれを片手で受け取り、台の上に戻す。

ヒノカの分も同様に台の上に戻した。

(あの人はある程度使いこなせる人みたいだな。)

「お兄さんの装備も全部魔鉱製ですか?」

「ああ、うん、そうだよ。まだまだ重いけれどね。」

結構な重装備だ。他の生徒にもこれほどの重装備の人はいなかったので、

落ちこぼれているからではなく、優秀だから補助人に選ばれたようだ。

「うおっ…、重いね…フィー。」

「…?」

次はニーナとフィーがそれぞれ魔鉱石を持ち上げているが、

ニーナの反応とは対照的に、フィーは平然としている。

強化魔法を使っているからだろうかと、魔力を視てみる。

確かに強化魔法は全開だが、妙な魔力の流れがある。

制御しきれずに溢れた魔力が魔鉱石へと流れ込んでいるのだ。

(もしかして、魔力を流し込めば軽くなるのか…?)

補助人の少年の魔力も確認すると、微弱ではあるが確かに武具に魔力が流れている。

「キ、キミ…もしかして…。」

「…ありがとうございました。」

「あ、ああ、預かります。」

「ボ、ボクのも…、お願いします。」

「はい、預かりますよ。」

受け取った魔鉱石を台へ戻す。

ようやく俺の番だ。

まずは普通に持ち上げてみる。

(……重っ!!)

とてもじゃないが六歳児の力では持ち上がりそうにない。

今度は魔力を流し込みつつ持ち上げる。

(おお、軽くなった。)

どうやら魔力を込めれば込めるほど軽くなるようだ。

ただ、効果は魔力を増やすごとに小さくなっていく。

反対に魔力供給量を徐々に減らしていくと段々と重くなってくる。

(どうやら魔力を込めている間だけ軽く、丈夫になる感じか。)

微弱な魔力でも結構な効果があるため、魔力量の少ない人でも扱う事は出来そうだ。

魔力量が少なければその分活動時間は短くなるが。

「キ、キミも…もしかして…。」

「あ、ありがとうございました!」

ポカンとこちらを見る少年に慌てて魔鉱石を返し、皆のところへ戻る。

(ちょっと実験しすぎたか…。バレないといいけど…。

もう少し触ってみたかったけど、どっかで手に入らないかなー…。)

「よし、皆終わったね、あそこのお店行ってみようよ!」

幸い、見学会の終わりまではまだ時間がある。

そしてそこでもまたアンナ先生と鉢合わせるのだった。


場所は変わり、第二グラウンド。

剣術科の見学会場だ。

魔法騎士科程ではないが、ここも賑わっている。

「よう来たな、お主ら。ワシは剣術科の講師、レーゲルじゃ。」

「この学科では古来より伝えられている騎士剣術を教えておる。

魔法騎士科でも同様の講義はあるが、ここではより実戦に則った戦い方を学んでもらう事になる。

騎士を目指す者も受けておいて損はないはずじゃ。

あちらはどうしても座学が多くなってしまうからのう。」

「先生は魔法騎士だったのですか?」

一人の見学者が質問する。

「いや、ワシはただの元騎士じゃよ。魔法の力が足りんでの。

ずーーっと剣を振っておった。

おかげでこうして剣術の講師になれたワケじゃが。」

「まぁワシの話などええかの。生徒たちに型を披露してもらおうか。

一から十の型まで通しじゃ!始め!」

整列していた生徒達は隣の者とペアになり、剣を交える。

全員が息を合わせて動く様はダンスでも見ているようだ。


生徒達が剣を納め、実演が終わる。

「どうじゃったかの。まだ時間がある事じゃし、希望者には型の一つでも教えてやるぞい。

剣を持っとらん者には練習用の剣を貸し出すでの。」

見学者達はそれぞれに別れていく。

「だってさ、どうする?」

「ふむ、異国の剣術も面白そうだな、誰か参加しないか?」

「じゃーボクが付き合うよ、一応知ってるしね。アリスとフィーも参加しなよ。」

「…うん、分かった。」

「なら、お姉ちゃんのペアは私だね。リーフとフラムはどうする?」

「私達はパス。向こうのお店であなた達の分も買ってきておくわ。」

「が、頑張って…。」

俺たちもそれぞれに別れた。

各々にペアを組み、十分な広さをとって整列する。

「結構集まったの。それじゃあ前で生徒達にゆっくり実演させるから

お主らはそれを見て動いてみるといい。始め!」

先生の掛け声に合わせて身体を動かしていく。

村の近くの河原での稽古を思い出し、少し懐かしくなる。

「お姉ちゃん。」

「…ん?」

「なんだか懐かしいね。」

「……うん、そうだね。」

ゆっくりとフィーと剣を交える。

「そうそう、やっぱりヒノカは凄いね。」

「そちらが合わせて動いてくれているからな、ニーナ先生。」

あちらも問題はないようだ。

「ほう、ここのちびっ子達はええ動きをしとるの。」

先生が俺達の前で足を止めた。

「ありがとうございます。」

俺たちも一旦手を止める。

「誰かに習った事があるようじゃな。」

「えーと、村に居た頃にボクのお婆様から習いました。」

ニーナが答える。

「ほほ、なら少しワシと手合わせしてもらえるかの。」

「え、…あ、はい!」

ニーナと先生が向き合い、剣を構える。

「お、お願いします!」

「いつでも打ち込んで来て構わんぞい。」

ニーナが剣を走らせ、先生がそれを迎え撃つ。

「”水弾(アクバル)”!」

間合いが離れた瞬間にニーナが水の弾を放つ。

「なんの、”(シルド)”!」

先生は自ら向かい来る水の弾へと突進し、魔力の盾で相殺させた。

その勢いに任せ、一気に間合いを詰めて斬りかかる。

「なっ!?」

態勢を立て直せずに追撃を受けたニーナは堪らず剣を飛ばされてしまった。

「ま、参りました…。」

「そう落ち込むでない、その歳で見事な腕じゃ。」

「い、いえ、ありがとうございました。」

「ところで…。」

「…何でしょう?」

「お主らの師はルーネリアではないかの?」

「は、はい、そうです!でもどうして…?」

「いやなに、騎士だった頃に縁があっただけじゃよ。闘い方もそっくりじゃったしの。」


「おっと、そろそろ時間じゃの。みな撤収の準備をしてくれるか。」

生徒達が貸し出されていた剣を回収していく。

「見学会はこれでお終いじゃ。残り時間は好きにするとええぞ。」

俺達はリーフ達を見つけ、合流する。

「お疲れ様。美味しそうなのは一通り買ってきてあるわよ。」

「す、凄かった…。」

「うんうん、凄いねぇキミ達。レーゲル先生に見込まれるなんて。」

「アンナ先生……。」

「いやぁ、向こうで偶然この子達と会ってね。キミ達が参加していると聞いて応援に来たんだよ。」

「中々いいものを見られて良かった、とりあえずバレる前にそろそろ戻るね。それじゃ!」

去っていく先生を見送り、リーフから自分の分を受け取った。

「ふむ、これも美味いな。」

「何で魚の形してるの、これ?」

「…はむはむ。」

食事を楽しんでいると定刻の鐘が響き渡る。

「とりあえず人気所は終わったわね。」

「そうだな、次はどうする?」

「今日はこれで終了して、明日はバラバラでいいんじゃないかな。」

「そうね…、願書だけ受け取っておきましょう。」

「あー、そっか。明日だと混んでそうだもんね。」

「じゃあ皆で貰いに行こう。」


(うーん、やっぱり魔法道具科かな。)

寮の部屋に戻り、受け取った願書用紙を眺めている。

他の者も同様に願書と見学会案内との睨めっこを行っている。

そんな中、コンコンとノックの音が響いた。

「私が出るわ。」

リーフが扉を開いて応対に出る。

話し声は聞こえるが、何を話しているかまでは聞き取れない。

少ししてリーフが戻ってきた。

「アリス。寮長さんがあなたによ。」

「うん、ありがとう。」

(俺にか…何だろう?)

考えても始まらないので応対に出る。

「えっと…こんにちは。」

「あなたがアリューシャさん?」

「はい、そうです。」

「学院長があなたをお呼びだそうよ。明日の朝学長室に来るように、との事よ。」

「学院長が…ですか?」

「ええ、校舎内に入ればすぐに校内図があるから、場所はそれで確認して頂戴。」

「分かりました。ありがとうございます。」

「用件は以上よ。忘れないようにね。」

「はい。」

寮長さんはそのまま仕事は終えたと去っていた。

(うーん、一体なんだろう?)

首を捻りつつ部屋へと戻る。

「どうかしたのか?」

「学院長に呼び出されたみたい。」

「えっ…アリス何やったの?」

「…さぁ?」

「厄介事にはならないで欲しいわね…。」

「まぁ、アリスなら問題ないだろう。最年少だからと興味でも持たれたんじゃないか?」

「そんなのならいいけどね。とりあえず明日行って来るよ。」

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