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14話

「おおっ!よく来てくれたね!六人も来てくれるなんて嬉しいよ!」

見学に来た俺たちを出迎えてくれたのはアンナ先生だ。

「元々魔道具に興味がありましたので。」

「うんうん、素晴らしいねぇ。他の皆は付き添いと言ったところかな?」

「ええ、それぞれの見たい所へパーティで順番に回って行くつもりです。」

「仲の良いことは良い事だよ、うん。

まぁ退屈はさせないからさ、キミ達も楽しんでいってくれたまえよ。」


「さて、じゃあ始めようか。キミ達は魔道具ってどういうものか分かるかな?」

「えーっと、魔力で動く道具、ですかね。」

「うん、大まかに言えばそうだね。

例えば身近にあるものといえば、キミ達の学生証がそうだ。」

言われて俺達は自らの学生証を取り出す。

「ほう、その色は冒険者の…凄いじゃないか、キミ達。

で、その学生証に”情報(インフォ)”と唱えると自分の情報が見られるのは知っているね?」

「はい。」

「これは”情報(インフォ)”というキーワードに反応して、

その学生証が魔法を発動させているんだよ。だからその学生証が無ければ使えない。」

「ふむ、普通の魔法とはどう違うのです?」

「魔道具の説明に例えるなら”(ウィード)”の魔法は

風の精霊が魔道具としての役割を担っている、と考えられているね。

だから”(ウィード)”という言葉は便宜上『精霊語』と言われている。

魔道具を発動させる言葉は『魔道語』と言われている。『起動語』なんて呼ぶ人もいるね。」

「まぁ、基本的にはただの造語だよ。魔道具の作成者が自由に設定できるし。

精霊語と被ると動作が変になっちゃうから精霊語とは分けられているだけなんだ。

昔々にはそれで新しい精霊語が見つかったりしたこともあるらしいけど、今はさっぱりだね。」

「魔道具ってそんなに昔からあるんですか?」

「五百年くらい前からかな。元々は魔法陣からの流れだから、それを含めると分からないね。

で、ちなみに初めて作られたと言われている魔道具がこれ。

まぁこれは私が作ったレプリカだけどね。」

見せられたのは手のひらサイズの直方体で

小さい面に一つ穴が空いており、その横に小さなボタンがある。

「ライターっていうんだけど、この出っ張りを押し込みながら”テスト”って唱えると…」

ポッ、と穴の上に小さな火が灯る。

「こんな風に火が出るんだ。」

「それぐらいの火なら”(フォム)”の魔法で良いと思うのだが…。」

「ま、そうなんだけど。これの凄いところは魔法陣から魔道具への変遷の切っ掛けになった事だね。」

「例えばこの魔法陣。『大火炎』っていうんだけど、物凄く複雑でしょ?」

魔法陣とやらが書かれた紙を手渡される。

(…日本語に英語に記号?ゴチャゴチャしてるな。

しかも火の魔法なのになんで水が出てきてるんだ?意味分からん。)

他の皆にも見せてみるが、反応は皆「よく分からない。」だ。

俺でも分からないのだからそりゃそうだろう。

「で、その魔法陣は無駄が多いと声を上げた人がいてね。

だが当時は勿論反発する人が大多数だった。

そこで大勢の前で小さな火を出す魔法陣を作って勝負することで自論の正しさを証明したんだ。

残念ながらその人の名は残されていないがね。」

「で、その人がその魔法陣を掘り込んで最初に作ったのがこのライターというわけだ。

それでも初めは全く広がらなかったんだよ。まぁ、それは今でもそうかな。」


「中々興味深い話だったな。」

あっというまに魔道具科の見学が終わり、今は昼食をとっている。

「そうね、魔術科の単位が無事に取れたら魔道具科に行ってもいいかも。」

「ボクはよく分かんなかったよー。」

「…さっぱり。」

「ぅぅ……。」

「次は魔術科だったっけ?」

「ええ、お昼を食べ終わってから少し余裕があるけど、どうする?」

「早めに行った方がいいんじゃない?人多そうだし。」

「そうだな、先程のように私たちだけ、ということはあるまい。」

「は、はぃ…そうです、ね。」

「…分かった。」


魔術科見学会場。

ここは魔術戦用の競技場のようだ。

やはり人気の学科らしく人が多い。

「皆さん、よく来てくれました。私は魔術科講師のアイヴィです。」

競技場の舞台の上に現れたのは青いローブを着たお爺さんだ。

「私の担当する魔術科では魔法での戦闘に重きを置いての授業を行っております。

座学半分、模擬戦半分といったところでしょうか。

模擬戦は今皆さんが集まっているこの場所を使います。

勘の良い方はお分かりかも知れませんが、

今日此処に集まって貰ったのは実際に模擬戦を体験して貰おうと思っての事です。

少々人数が多いので参加出来ない方もおられるかもしれませんが、雰囲気だけでも掴んで頂ければ幸いです。

安全には十分に配慮されていますので、存分に力を振るってください。

では、参加希望の方はこちらに、見学希望の方は観覧席で自由に見学してください。」

「だってさ、フラムとリーフはどうするの?」

「ゎ、私は…見学…で。」

「そうね、私も見学にしておくわ。この後に闘術科も見るんだしね。」

「他の皆も見学かな?」

「…見学にする。」

「私も見学だ。」

「ボクもー。アリスは?」

「私も見学かな。じゃああっちの観覧席行ってみようか。」

大会にも使われるであろうこの競技場には立派な観覧席が設けられている。

「おおー、いい眺めだね。」

「うむ、ここなら良く見えるな。」

「…風もいい気持ち。」

「た…、高ぃぃ…。」

「もう始まってるみたいよ。」

リーフの指差した舞台ではすでに魔法が飛び交っている。

円形の舞台の端と端に設置された魔法陣から魔法を撃ち合っているようだ。

「当たり前だけど、やっているのは魔術戦ね。」

「だが、私の知っているのはもっと舞台の全体を使っていたが。」

「安全のために魔法陣から出ないようにしているんじゃないかしら。

あの魔法陣は相手の魔法に反応して防御壁を張るようになっているはずだから。」

「ああ、確かそうだったな。だがあれだと魔力量の勝負になるな。」

「実力が拮抗していればそうなるわね。」

「お、あそこの人、五人も抜いたよ。ありゃ、今度はあっさり負けちゃった。」

「魔力が切れたんだろう。流石に連戦ではな。」

「うーん、思ったよりつまらないね。」

キャッチボールの風景をずっと眺めているみたいだ。投げるのはボールじゃないが。

「…うん。(むぐむぐ)」

「って、フィー何食べてんの!?」

「…あっちで売ってたの。」

見るといくつか出店がならんでいる。

店員は制服を着ているので学院生のようだが…、結構繁盛している。

「ふむ、面白そうだな。私も何か買ってこよう。」

「そうね、行ってみましょう。」

「あ、ボクもー!」

席を離れ、すたすたと三人で行ってしまう。

「フランも行く?」

「ぁ…う、ぅん。」

差し出した手をおずおずと握り返してくる。

「…ふぃほう(行こう)。」

おかわりですか、姉さん。


出店は料理科の生徒が出しているものだった。

料理科では食事による能力向上の研究を行っており、

出店ではお試しで効果が薄く、お手軽なものを扱っているという。

私が買ったのは『素早いアップルパイ』だ。

食べてみると味も良好で、確かに効果がある…ような気がする。

「味は悪くないな、何だか力が湧いてきた気もする。(もぐもぐ)」

「食事一つで変わるものなのね。(はむっ)」

「…料理科、おひょるべし。(ずるずる)」

「うん、頭が良くなった気がする!(むしゃむしゃ)」

評価は上々のようだ。

「…………………ぁ、ぁっぃ…。」

たこ焼きを一気に頬張ればそうなると思うよ。


出店の食べ比べに夢中になっていると、

いつのまにか魔術科の見学会の終了時間になってしまった。

次の見学会にはまだ余裕があるので、

模擬戦に参加していた者たちも出店に群がっている。

魔術科の説明を行っていたアイヴィ先生まで買い食いしている始末だ。

そして先生がもう一人。

「…アンナ先生?」

「ぎくっ!あ、あははー。さっきぶりだねぇ。」

手は出店で売られている食料で塞がっている。

「いやいやー、料理科がもう出店出してるっていうからつい、ね。

キミ達もそうなんでしょ?」

「いえ、私達は魔術科の見学に来てて…まぁ後半はこっちにいましたが…。」

「そうだよね、出店があったらこっち来ちゃうよね!?」

「…そうですね、見学会も気付けば終わってしまいましたし。

でもこんなところでお店なんて出して大丈夫なんですか?」

「アイヴィ先生の許可も下りてますからね。

というより自分が行くのが面倒だから此処を使ってまでやらせてるんですよ?

っと、そろそろ戻らなきゃ。それじゃあね。」

「ここにまともな先生いるのかしら…?」

いると信じたい。


闘術科の見学会場はグラウンドだ。

集まっている人達はほとんどが男性で女性は僅か。

なんとも男臭い学科である。

以外にも冒険者のような人は少ない。

(冒険者は魔物を相手に戦ってるし、今更か…。)

やはり魔法騎士科に殺到しているのであろう。

「おう、よく集まったな。俺はジロー・アズマ。この闘術科の講師だ。」

どうやらヒノカと同じ東の国出身のようだ。

短髪の黒髪、黒眼で若干細身ではあるが筋肉はしっかりと付いている。

「闘術科は戦いの中で生き残る術を教える学科だ。

剣術科と違って型なんてもんはねえ。ま、要は勝てばいいんだ。」

「その昔、魔物がもっと蔓延っていたころにこの学科は作られた。

戦い方は人それぞれだが、互いに切磋琢磨し情報共有することで生存率を上げるためだ。」

「だから講義は対魔物のものが中心となる。

って、お前らにはこんな話退屈だろうから今からウチの生徒と手合わせしてもらうぜ。

まぁあいつらからは攻撃させねえから、なんとか一本とれるように頑張りな。

見学者はあそこに料理科の屋台があるから賭けでもしながら試合を見てるといいぜ。」

「それからお前。」

ヒノカを指差し、ニィ、と笑う。

「その刀、お前東の国のヤツだな?」

「はい。ヒノカ・アズマです。」

「よし、お前は俺と手合わせだ。いいな?」

「分かりました。」

突然の指名に平然と答えるヒノカ。

「ちょっと、大丈夫なの?」

「ああ、よくある事だ。」

そう言ってヒノカはジロー先生の前へと進む。

「よろしくお願いします。」

互いに礼をし、構える。

「ああっと、忘れてた。希望者は適当にウチの生徒捕まえて勝手にやりな!じゃあいくぜ!」

その言葉を皮切りにあちこちで試合が始まる。

といっても新入生側が一方的に攻撃し、

それをジロー先生の生徒達が受けるだけのスパーリングのようなものだが。

俺達はヒノカを応援することにし、ギャラリーに混ざる。

互いにジリジリと間合いを計るジロー先生とヒノカ。

そして、とん、と一歩踏み出したかと思うとヒノカが鋭い一撃とともに一気に間合いを詰めた。

金属のぶつかり合う音が三度響く。

「おっと、へへ、中々良い太刀筋だな。しかしおとなしいな、お前。

いつもならもっと鼻っ柱の高い奴が来るんだがな。っと。」

「すでに欠片も残っておりませんよ。」

「はは、面白い奴だな、お前。名は?」

「…先程名乗りましたが。」

「あー……、悪ぃ。忘れたわ。」

「ヒノカ・アズマです。」

「ヒノカね、覚えたぜ!っと。」

何やら喋りながら剣を打ち合わせているようだが、随分と余裕のようだ。

何度か剣を交え、距離を取るヒノカ。

「どうする、まだやるかい?」

「…いえ、ありがとうございました。」

刀を納めてヒノカが礼をし、こちらへと戻ってくる。

「待たせたな。」

「…おかえり。」

「お疲れ様、飲み物を買ってきてあるわ、どうぞ。」

「やっぱヒノカはすごいねー。」

「か…、格好、良かった…です。」

「あれ、お姉ちゃん?」

ヒノカと入れ替わりにすたすたとジロー先生の前と立ち、ぺこりと頭を下げる。

「…よろしくおねがいします。」

「はははっ、俺の所に来るとは中々良い根性してるな、嬢ちゃん。あいつの友達か?」

「…はい、同じパーティです。」

「そうか、あいつは俺の同郷なんだ、仲良くしてやってくれや。じゃあ来な!」

フィーが剣を抜いて構える。

「ふふ、フィーもやるのか。これは応援せねばな。」

「あの子っておとなしそうなのに案外武闘派なのね。」

「フィーは昔はもっとおとなしくて運動も出来なかったんだよ。

本ばっかり読んでたし。今でもそうだけど。」

「それは初耳だが…、想像がつかないな。」

「実際フィーって強いのかしら?」

「ああ、そっか。リーフはまだフィーが戦ってるところは見た事ないんだっけ。」

「ゎ、私も…なぃ。」

「ふむ、そうだな…。フィーが本気を出せば私より強いぞ。」

「ええっ!?嘘でしょ!?…じゃあアリスが戦ったら?」

「私が?…うーん、剣だけだと勝てないと思う。魔法使っても厳しいかも。」

「そ、そん…なに…?」

「冒険者の試験を受けた時なんか凄かったんだから。

一瞬消えたと思ったら試験官の剣が飛んでいってさ。」

「まぁ見ていれば分かるだろう。そろそろ始まるようだぞ。」

フィーがジロー先生に剣で斬りかかる。

強化魔法を全開にしていないため、まだ追える速さだ。

だが、徐々に強化を強めており、速さも一撃の重さも増していっている。

「…ぐっ!すげえなっ!嬢ちゃん!はははっ!」

それでもなんとか捌くジロー先生。

だが次第に追いつかなくなってくる。

「くっ!こっちも使うぜ!」

ジロー先生はもう一本刀を抜き、二刀流で出迎える。

気が付けばグラウンドには三本の剣が奏でる金属音のみが響いていた。

他の者たちも手を止めて魅入ってしまっているようだ。

「あ、ありえないわ…あんなの…。」

「…す、すご、ぃ…。」

「しかし、あれを捌ける先生も凄いな。」

「さすが闘術科の先生だねー。」

キィンと一際大きな音が響き、フィーとジロー先生の間合いが開いた。

もう一度間合いを詰めるためにフィーが身体を沈ませて力を溜める。

「あー、ストップだストップ!」

先生がフィーを制止し、刀を納める。

「…?」

フィーも同様に剣を納める。

「へへっ、これ以上やると本気でやり合いたくなっちまうからな、

今日のところはこれで勘弁してくれや。」

「…分かりました。ありがとうございました。」

礼をし、フィーがこちらへ戻ってくる。

「お疲れ様、貴方も凄いのね。どうぞ。」

リーフが飲み物をフィーに手渡す。

「…ありがとう。」

「やはり凄まじいな、フィーは。いつか私の師匠にも会わせてみたいものだ。勿論、アリスもな。」

「くそー、ボクとの差が開く一方だよ。」

「いや、ニーナだって素晴らしい実力を持っているぞ。少なくとも三年前の私では勝てない。あの二人が規格外なだけだ。」

「ぁ…あの…、向こぅ…行かな、ぃ?」

フラムが俺の裾を引く。

周りを見れば多くの注目を集めてしまっている。

「…そうだね。皆でお店の方に行ってみよう。さっきの所とは別の物が売ってるみたいだよ。」

「確かに落ち着かないし、そうしましょう。」


「…アンナ先生?」

「あ、あれー。奇遇だねぇ。」

「まだ見学会の時間なのでは…?」

「あー、私はね、時間は有意義に使うものだと思うのだよ、うん。君たちは闘術科の見学かな?」

「ええ、そうです。明日は魔法騎士科と剣術科に行く予定です。」

「ふふ、人気どころは全て網羅というわけかな。良いと思うよ。…っと急いで戻らないと見回りが来てしまいますね。それじゃっ!」

そう言って両手いっぱいの荷物を抱えたままスタコラと走って行った。

その後、終わりまで屋台の味を堪能し、初日の見学会は幕を閉じた。

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