0.プロローグ
こちらでは初めての投稿になります。
お見苦しいところもあるかと思いますが、よろしくお願い致します。
「では、僕のお嫁さんになりますか」
そう言って、わたしの上司サマはいつも通りの穏やかな笑顔を見せた。
そんな彼の一言によって、当然のようにわたしの日常が変わっていくことになったわけだが、この時のわたしはと言えば、また当然のように混乱することしか出来なかった。
末木綺羅子、25歳。
今までの人生で初めて、驚きとパニックで声が出なくなるという貴重な体験をしました。
何事も経験だとは言うけれど、なにもこんなタイミングでこんな経験をしなくても良かったのではないかと思ってしまう。
ただでさえ、ここ最近の悩みにいっぱいいっぱいになっていたというのに、また違った悩みがそこに加わり……いや、むしろ他のものを押しのけて、脳の大半を占拠したことを感じ、辟易せずにはいられない。
今まで会社で弱音を吐いたことなどなかったが、今日ばかりは許してほしい。
もう、わけが分からない!
そうしてわたしが涙目になるのと、上司サマがハンカチを差し出してくださったのが、ほぼ同時のことだった。